ああ、メガネ。見ることと見切ることのあいだ。
日曜。生まれてはじめて自分のメガネを買った。
わたしはこれまでメガネというものにご縁がなかった。小学校、中学校……年齢があがるたび 周囲の友人たちが「メガネ」とお付き合いをし始めるのを横目で見てきた。
とある友人の結婚式の2次会。「あなたのお眼がねにかなう男子はいませんでしたかね」。少し皮肉っぽいものの言い方をする友人のパートナーはそう言った。
お眼がねも何も。わたしには、メガネが無いのだもの。
わたしにはメガネが無かった。「あのひとはこういうひとだ」とか「今という時代はこういう時代だ」とか、「この作品はこうだ」とか、ものごとを客観的に見てその是非を判断するというメガネがいつまでたってももてなかった。わたしには見えていないものがある、ありすぎる。わたしが「見た」と思っているものは、どんなに目を凝らしたところで、その対象の一部にすぎないはずだ。。。
子どもが幼稚園に入った頃、驚いたことがある。周囲のお母さんが「うちの子はこういう子です!」とか、「あのお子さんはこういうお子さんよね!」などと言われるのを聞いて。
あの頃、自分の子どもとは四六時中一緒にいた。一緒にいたけれどわたしにはとんとわからなかった。この子がどういう子なのか。。。
45を過ぎた頃にやっと、「ああ、このひとはこういうひと…かも知れない…」とか「今という時代はこういう時代…なのかも知れない…」とか、対象とその周辺との違いを思い描くことができるようになった気がする。それでもまだ、確信は持てない。これからも、持てる気はしない。
45を過ぎた頃にやっと、それまで当たり前に見えていたものが見づらくなった。例えばそれは、口紅のうしろの品番。例えば、夕方蛍光灯の下で目にする岩波文庫。夕飯のお鍋をかけながら、書こうとするボールペン文字の見づらさと書きにくさ。
わたしにはそれまで「見えにくい」という世界が見えなかった。。。そうか、「見えにくい」って、こういうことか。。。
「見える」、「見えにくい」、「見えていない」、「見えない」、「見ない」。「見る」ことの周辺には思った以上のスペクトラムが存在するのだ。。。
少し前、「男のメガネ」の植松さんが「退屈な音楽」というエッセイを書いてくださった。そのときわたしはこんなメールをお送りした。
「わたしはこのトシまで『退屈な音楽』とも『退屈な映画』とも『退屈な作品』とも口にできないままできました」。
このとき植松さんがくださったお返事にわたしはとても感じ入った。
「なんとなくですが、大人だなあと思わせられる発言には、『見切り』があるんでしょうね。目の前にあるものを『見切る』感じ」。
「見切り」かあ。「見切り」。。。そうだなあ、わたしには「見切り」というものも無いのだなあ。。。
わたしはずっとメガネに憧れてきた。メガネの女性の知的な横顔や、メガネを少し直すときの繊細な指使いや、メガネの奥でほんのわずかに目を閉じる何かの瞬間や。そういう「メガネ」の空気をずっと以前からまといたいと思ってきた。
女性の多くは、ある年代になってメガネをかけることに抵抗があるというけれど。「見ようとする意志」は、わたしには素敵に映る。「見ようとする意志」のONとOFFに、もしかしたら「見切り」のスイッチを感じているのかも知れない。
漫然と「見る」ことと、きちんと注視することとのあいだ。。。
メガネ。メガネ。メガネの知人や街をゆくひとのメガネを観察した。
メガネ。メガネ。メガネの素敵なあの方この方を思い描いては、ほー、ふーむ、と自分の顔とのシュミレーションもしてみた。
「新しいメガネがいる」。ド近眼メガネ属のシュジンがそう言い出したので、わたしはシュジンと自分の二つのメガネをネットで下調べした。今は安くて楽しいメガネがたくさんあるらしい。せっかく作るなら、少し楽しいメガネにしなくちゃ。
年々地味でしょぼくれる顔に、ここらでガン!と色を盛るのだ。
今日の午後なら時間がある。シュジンがそう言った日曜の朝、わたしは襟を正してこの記事を読み直した。
http://proage.blog66.fc2.com/blog-entry-562.html
「無難」から脱却!「好き」に執着するべし!
お昼過ぎ。わたしたち夫婦は山口から下関の高速にのった。老眼鏡を買いに。いざ。
月曜日。メガネをかけた自分の顔を家の鏡でちらちらと見る。
その度「ぷっ」と笑いがこみあげる。
47歳。老眼鏡デビュー。
見にくくなったことで見えるものもあるのかも知れない。
見にくくなったことで「見切る」覚悟も持てるのかも知れない。
「メガネ」は、かなり「楽しい」。かも知れない。
七蓮しずく
こんばんは!お久しぶりです、サラヴァンさん。
何だか、メガネって、ずっと使う必要のなかったヒトには、ドキドキしますよね。
四十路入る頃から、だんだん文字や手元が見えにくくなって、
当時は目薬さしまくって誤魔化してましたが(笑)。
で…ここ1年くらい前から、もっぱら自宅で老眼鏡デビューしてます!
ちゃんとしたメガネ屋さんで購入した訳ではないけど、
あると便利だし、安価のもの2種類を使い分けてます。
(スタンダードなもの&ちょっと色付のもの)
鼻筋にあたる…そのメガネ感触は、
こそばくて慣れませんが、いざって時には頼もしい存在ですね♪
先は長いんだもの、老眼鏡生活を楽しみましょ~っ☆
サヴァラン Post author
七蓮しずく さま
こんにちは!お久しぶりです!
そうなんです。メガネ
ドキドキ&モゾモゾします。
長年メガネに憧れて
サングラスで試した時期もありましたが
あれってとても違和感。
サングラス越しの世界も
サングラス付の自分の顔も。
今回「老眼鏡!」のために
満を持して行ったのはJINSのショップですが
あの手のメガネ屋さんは敷居が低くて気が楽でした。
メガネ
目の下の涙ぶくろのシワも隠せて便利です♪
老眼の度合いはまだまだたいしたことないのですが、
あら~、メガネファッションって楽しいかも?と
老い先の楽しみ
しずくさまもご一緒くださ~い♡