さよなら、サザンオールスターズ。
秋葉原のヨドバシカメラの上のほうにあるタワーレコード。最近はダウンロードで音楽を購入することが多くなっていたので、久しぶりにCDが棚いっぱいに並んでいる様子に圧倒されてしまう。
いま流行っている曲はどんなだろう、と試聴をしたり、棚と棚の間を歩き回ったり。そうしているうちにサザンオールスターズの新譜のコーナーに行き着いてしまう。アジア大会で使用されている『東京VICTORY』が平積みされている。サザンはいまだにiTunesでダウロード販売されていないので、CDで購入するしかない。
1978年、僕が高校一年生の時にデビューして以来、ずっとレコードかCDでサザンのアルバムを購入してきた。しかも、ちゃんと予約しておいて、発売日に喜び勇んで買いに行くというファンだった。
ファンだったというと、ファンでなくなったかのような言い方だが、僕はいまでもサザンのファンだ。ただ、10代20代30代の頃のようにライブ会場に足を運ぶことはなくなったし、CDを発売日に手に入れなくても平気になった。まあ、それはもうすでにファンじゃないよ、といわれるなら仕方がないのだけれど。
でも、僕としては自分はサザンのファンだし、桑田佳祐のファンだと思っている。ただ、ここしばらくのサザン、桑田の画曲は明らかに面白くはない。好きか嫌いかと言われると好きな曲ばかりだし、いまだに新しい曲をさっさとiPhoneに取り込んで聞いている。
シングルが発表されて、アルバムが発売されるたびに、何度も何度も繰り返し聞いて、カラオケに行って歌い、車の中で歌っていた、あの頃のようなワクワクした気持ちはもうない。桑田佳祐の書く曲が、瞬間の恋愛を歌わなくなって、恋愛全体を歌うようになって、さらには人生を歌うようになって、僕のサザン熱は少し冷めた。そのことを痛烈に感じたのは『TSUNAMI』のヒットだった。サザン最大のヒットとなった『TSUNAMI』に僕はなんの面白さも感じなかった。
『TSUNAMI』の直前に発売された『イエローマン』がヒットしなかったけれどあれほどスリリングでワクワクしたのに、大ヒットしている『TSUNAMI』にはなにも感じない。むしろ、サザンの曲としてはつまらない曲としか思えなかった。
でも、「サザンはいい」「桑田の作る曲は最高」と僕は思ってきたし、そう思おうとしていたような気がする。いや、でもなあ、本当に好きな曲もあるんだよなあ。ただ、シングルカットされる曲が、まったくワクワクさせてくれないのだ。
やがて、桑田の病気が発覚し、そこから帰還したと思ったら、今度は東北の大震災が起きた。明らかに桑田佳祐がつくる曲は世界を憂うような内容だったり、人を元気づけるような歌へと変化した気がする。そんなサザンの曲が嫌いなのではないし、良い曲もあるし、実際に良く聞いているのだけれど、それでもやっぱり「瞬間の恋愛」を歌う桑田佳祐の声を聞きたい、という思いはいかんともしがたいのだ。
『東京VICTORY』のカップリング『天国オン・ザ・ビーチ』は馬鹿馬鹿しくていいけれど、笑えるほど面白くもない。
そんな話を友人としていたところ、「サザンが大御所になったってことじゃないですかね」と言われたのだけれど、どうなんだろう。もしかしたら、心のどこかで「ポップソングが人生語り出したらおしまいじゃないか」という思いが僕の中にあるのかなあ、とも思う。
いや、だからって、サザンが嫌いじゃないんです。いや、ファンなんです。だけど、だけど、♩女呼んでもんで抱いて、いい気持ち〜♩と歌っていたころのサザンがどうしても愛おしい。
でもね、それでもね、今までだったらサザンの新しいCDを買っていたはず。発売当日にね、『東京VICTORY』のCDをね。だけど、これからは本当に「これだ!」と思える曲が出てくるまで買わないでおこうという気持ちになっている。ファンじゃなくなったからじゃなくて、ファンだからこそ、そうしようと思うんだけども。
いやあの、なんというか、この50過ぎたおっさんのややこしいサザン愛というか、桑田愛はわかりにくいですか。う〜ん、わかりにくいでしょうね。すみません。いま何時っ!そうねだいたいね!
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
きゃらめる
私もそうです(^^;)
10代のころ好きだったアーティスト達はもう50~60代となり、明らかに楽曲の傾向が変わっています。
けして嫌いになったわけじゃないんです。
でもいまの楽曲からは、あのころの興奮は得られない。あのころの味わいがいちばん好きだからです。
アーティストを愛するあまりのわがままなのかな…
uematsu Post author
きゃらめるさん
だけども、「サザンはやっぱり最初の頃が良かったよねえ」とか言われると、
「いまも、充分いいよ!年とっても同じような歌をうたってるほうがおかしいんだよ!」
と心の中で叫んでいる自分がいます(笑)。
しづか
はじめまして。私も似たような(ユーミンにも感じていますが…)感覚でした。今でも好きなのだけれど、「そういうことだったのか!」とuematsuさんの記事を読んで思いました!
その瞬間がリアルタイムでないにせよ、遠くに想いをはせようとも、あのドキドキを感じたいです。
uematsu Post author
しづかさん
変化しても、なんか違うと思うし、変化しなきゃしないで、ずっと一緒かよ、と思ってしまう。
ファンというのは本当に身勝手な者だなあ、と我ながら思います。
だからって、若手を聞いても「うむうむ。わかるけれども、それはもう知ってるのさ」という気持ちになって、
思う存分楽しめないということが多かったりもします(泣)。
おつ
芸人さんが大御所と呼ばれ文化人枠になって、それまでのファンががっかりするのと似てるかも。
少しの狂気(ハラハラ)があってこそなんでも面白いんだから。
恥ずかしながら私はクロマニヨンズのファンです。
sairi
あぁ、わかります。
ソロの『本当は怖い愛とロマンス』は久々にドキッとしましたが、それにしても4年前ですね。
uematsu Post author
おつさん
クロマニヨンズ、いいですよね。
僕も好きです。
ブルーハーツのころから好きですが、
「ブルーハーツの頃はよかったのに」とか言われると、
なんだか、かちんとくるし。
でも、あの若さゆえのはじけかたは確かにすごい、と思うし。
そう考えると、「若気の至り」っていうのは、
本当のすごい力なんだなあと、最近思います。
uematsu Post author
sairiさん
『本当に怖い会いとロマンス』はよかったですね。
さっき、wikiのサザンのディスコグラフィーを見てたんですが、
なんか、よく付き合ってきたなあ、十代の真ん中から、と我ながら面白くなってきました(笑)。
もしかしたら、ドキドキしなくなったのは倦怠期かもしれませんね(笑)。