誤算だらけの婚礼衣裳、そしてわたしはキャシーに命乞いをした。
ブライダル業界が、こんなに油断ならない世界だとは知りませんでした。
誠実にお仕事されている方には申し訳ないんですが、いやはやすごいですね。どこに行ってもあの手この手で誘導され、ありとあらゆる美辞麗句を並べられ、ねっとり説得されて気づけばすさまじい金額の見積もりが目の前に。はじめこそ好奇心丸出しでブライダルフェアやら無料試食会やらに出かけてみましたが、最後はザビ男などウェディング恐怖症みたいになっちゃってましたね。
とはいえ、ない袖は触れませんし、「一生に一度ですから!」と説得されても「一生って言われても、あと20年くらいだしねえ」とシラっとするばかりのアラフィフカップル。とりあえずフェアに行くたび
「あっ、違います違います、父兄じゃなくて新郎新婦です」
といちいち断るのが面倒くさかった、じじょうくみこMK5(マジで結婚する5秒前)です。
さて、諸般の事情で予定していなかった結婚披露パーティをすることになったザビ男とわたくしですが、何が誤算って一番の誤算は衣裳でありました。そもそもパーティ会場を決めたのは、条件に見合っていたということもありますが、提携の神社で格安で式が挙げられる点も大きかったのであります。パーティには乗り気でないザビ男でしたが、「和装で神前式」はまんざらでもない様子。そこにきて婚礼衣裳一式レンタル料コミで、パーティまで通しで着用OKというプランは願ってもない話だったのであります。
当初の目標は「華やか系の振袖、または落ち着いた色打掛を1着で通す。会場を動き回る前提。中座はしない」というものでありました。でもよくよく考えたらわたくし、着物のことも婚礼衣装のことも、まったくわかってなかったんですよね。ですので最初のつまずきは、あっという間にやってきました。
契約した挙式プランの衣裳に、普通の振袖がない。
プランで選べるのは白無垢、色打掛、黒引振袖のうち1着だったのです。どれも長い裾をひきずるタイプですから、こじんまりしたレストランのパーティには厳しいかなという気がしたのですが、着物素人のわたしには実際どうなのか見当もつきません。もし色打掛でなんとかなりそうなら自分ががんばればいいし、ということでひとまず試着してみたのですが…
おもっ!!
これは服じゃないですね、布団です布団。それも昔ながらの重たい綿のやつ。はおった瞬間に「ずしっ」って音が聞こえましたよ。
「婚礼衣装は刺繍がたくさん入るので、どうしても重くなってしまうんですよ。特に色打掛は刺繍が一番多いので…」
「服が重くて動けない」という概念がなかったので、相当面食らいました。世の花嫁はこんな拷問のような衣裳を着て嫁にいかれたのたかと思うと泣けてきます。実際、結婚式で和装した友人に改めて話を聞いたところ
「あれは本当に重いよ! ロボットみたいになったもん」
「色打掛にカツラだったから、途中で気分が悪くなった」
「トイレも大変だよ。お腹をかなりきつく締められるからごはんも食べられないよ」
「着崩れすると自力でなおせないから、着付けの人をつけないと困るかも」
「お色直しならいいけど、通しで着物は相当くたびれると思う」
と、さんざんな反応。アラフィフの体力じゃ、なおさらムリです…。それでもあきらめきれなかったので、他のドレスショップをネットで調べてみたのですが、ここにも新たなつまずきが。
ドレスより和装のほうが高い!
世の花嫁はドレスに命をかけているからウン十万、ウン百万とかするに違いない、と思い込んでいたのです。ところがドレス代、思いのほかリーズナブル。逆に和装は全体的にお高めで、おまけにドレスに比べると数も少ない。ドレスなら種類もたくさんあるし、着付けもいらないし、軽いから動き回れるし、ごはんもおいしく食べられる。なるほど、みんながドレスを着るのはそういうニーズもあったのかと初めて知りました。
でもなあ、ドレスなんて着たくないよう。着こなせる気がしないよう! だったらもうワンピースとか普通の服にしちゃうようーとつぶやくと
「ちょっと! 新郎新婦がゲストより地味でどうすんの! せめて白ドレスぐらい着なさいよ、白を着られるのは花嫁の特権なんだから!」
と参列者から怒られました。なにしろ結婚式より葬式に出るほうが多いアラフィフ世代でございます。久しぶりのめでたい席を内心楽しみにしてくれていることを、このとき初めて知ったのでした。
これは困ったことになりました。既に式まで1ヶ月半。熟女のわがままボディは腐海を広げるばかりで、ドレスにおさまる心づもりなどあるはずもございません。ましてや中年ですから、短期ダイエットは痩せるというよりやつれるだけで、肌も荒れるしいいことなし。
さて、どうするか。
着物を着て、ロボットのように座り続けるか。
ドレスを着て、食事と歓談を楽しむか。
……。
………。
………………。
じじょうくみこは、酒とメシを取るっ!!!
きっとアレだよ、ドレスならバリエ豊富だから体型カバーできるドレスが1着ぐらいは見つかるよ、ドレスドレスしてないものもあるかもしれないよウンウンなんか手はあるよ(自己暗示)。でもドレスショップもたくさんありすぎて途方にくれるし、パンプスとか小物もいろいろいりそうだし…と悩んでいるとパーティ会場のプランナーさんが
「ドレスとタキシード、小物もコミコミで58,000円の衣裳プランございますよヽ(・∀・)ノ」
「それくださいヽ(・∀・)ノ」
はい、ドレス着用決定~。
ところが本当のつまずきは、ここからだったのでした…。
嫌な予感ビンビンきてます
というわけで、ドキドキの試着日でございます。
まずはプランナーさんに「とにかく徹底的にシンプル、地味―に地味―に、ワンピースでもいいぐらい裾は短めで動きやすいやつ」とこちらの希望を伝え、サイズをチェック。その上でプランナーさんがおすすめのドレスを3着用意し、自分で試着してみたいドレスを3着選んで、試着ルームでフィッティングするというシステムだったのですが、この時点でわたしは愕然といたしました。
肩と二の腕丸出しのドレスしかない!!
いいですか皆様、よーく思い出してください。アラフィフの皆様が結婚した頃はこんな具合でした。
こう!
こう!
こう!!
ドレスだって!
メガ盛っ!!!
誰も二の腕出してません。
それが今はこうですよ。
こう!
こう!
こうーーーーーー!!!《゚Д゚》
こんなの着るって考えただけで悲しくてふるえる(西野カナ)
「今はビスチェタイプの、上半身をばっちり出すようなドレスが主流なんですよ。せっかくなので着てみませんか? 案外気にならないかもしれませんよ」
と説得されて着てみたのですが、試しにアラフィフが今のドレスを着るとですね、
こうなります
あわてて手袋をしたらボンレスハム感UP
背中は見事にミートがオン
号泣する準備はできている…ヽ(;▽;)ノ
いやあ、とてもじゃないけどこれを着て人前に出る気がしません。「これはどうですか。こちらは?」とプランナーさんは次々持ってきてくれるのですが、熟女のわがままボディは自己主張をやめてくれません。また、どうにか目隠しできそうなものは刺繍やレースがばっちり入っていて、わたしがイメージしていたものとはかけ離れておりました。
「肩が出ないドレスってないんですか(;▽;)」
「あるにはあるのですが、お客様のプランではお貸出ができないんですよ…」
「上のプランはムリです…せめてどうにか隠せませんかね、二の腕……(;▽;)」
「オーガンジーのようなストールを巻く方法はありますが、そうしますとよけいに上半身がふくらんで見えてしまうので、逆に出してしまったほうがスッキリすると思いますよ」
「そ、そうですか…(;▽;)」
「あとは他のドレスショップさんを探されるか、ですねえ。2~3軒回られる方もいらっしゃいますよ」
「いやあ、そこまでの体力もこだわりも時間もないです……(;▽;)」
「じゃあこちらのドレスはいかがでしょうか。プラス1万なんですけどヽ(・∀・)ノ」
「それくださいヽ(・∀・)ノ」
もう完全にやられてますが、とにかく一番最後に出てきたノースリーブのドレスをリボンやトレーンも全部とって最大シンプルに着る、ということにしたのでありました。これなら肩も背中も隠れるし、二の腕は…二の腕は………プリ子さんの記事で知った「脇を体から離しておく」方式で、あとはひたすら見えないように後ろに立つ!
これで衣裳も決まってひと安心。あとは粛々とやるべきことをこなすだけ、と思っていたのですが…
1週間ぐらいたった頃から、悪夢にうなされるようになりました。いままで人前にさらしたことのないブヨブヨの二の腕をさらけ出して人前に出る、と考えるだけで息がハアハアしてきます。考えすぎだ、意外と目立たないかも、きっと誰も見てないし大丈夫大丈夫、と必死に言い聞かせても
「え? 二の腕出すの? その二の腕を? 勇気あるねえ」
と女友達の容赦ないツッコミを受けてはまた凹むというくり返しで、心は揺れっぱなしだったのです。精も魂も尽き果てついにプランナーさんに
「このままだと式までに生き残れません、どうかお慈悲を……(;▽;)」
「でしたらボレロを着てみますか? キャサリン妃がレースの長袖ドレスを着ていらっしゃったでしょう」
うつくしい~
「上品でクラシカルなのに、ゴージャスに見えるということで、レースのボレロが人気出始めているんです。1万円になりますヽ(・∀・)ノ」
「それくださいヽ(・∀・)ノ」
ああもう何も言わないでください、とにかく当日は七分袖のボレロをオンします。ありがとうキャサリン、あなたは遠い島国にいるひとりのオバちゃんの命を救ったよ…。
それにしても人前に出るのが死ぬほど苦手なわたしが、なんでこんなことになっているんでしょうか。思えば遠くへきたもんだってわけでね、
予定外の生理が始まりました。
昨日財布落としました。
逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……
ででででは皆様、ヨメに行ってきます……(目泳)
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
6月12日、19日は更新をお休みさせていただきます。
okosama
本日も早々にお邪魔いたします。
ミートオンの写真!(◎_◎;)
これは蛮勇?それとも、結婚前に身を清めておこう的な何か?(笑)
もう何も怖いものはありませんね(笑)。
いってらっしゃいませ!おヨメに!
そして、お幸せに!
きゃらめる
アラサーアラフォーまでならともかく、
アラフィフのミートオンは許されますっ!
幸せ花嫁姿を見せるというだけでOK!
All you need is lovely smile♪
正々堂々ヨメに行ってらっしゃい!!!!!
あすは世界中が
じじょくみさんを祝福する日だ♡
マーキョン
いよいよお嫁入りの日なのですね!
ありったけの祝福の言葉をお送りしたいです!!
仰るとおりアラフィフ世代、結婚式に出席すること滅多にないので、昨今のブライダル事情知りませんでした。参考になりました。
花嫁は肌を見せるべからずと母に言われ作った修道女のようなウェディングドレス、捨てるに捨てられず未だ手元にあります。くみこさんにお召し頂きたかった、、、なんて失礼なことを思ってしまいました。あまりにブライダル業界、がめついので。
お財布なくされたのですか??厄落としかと。お幸せに!!
アメちゃん
こんにちわ!
ちょっとぐらいミートがオンしてても
ボンのレスがハムしてても
ドレス姿とっても素敵ですよー!
私もウエディングドレス着るとか、金屏風の前で笑うとか
ああ、勘弁してくださいの人なので
もう、じじょくみさんが他人とは思えません。。。
そんなもろもろの、いろんなことを乗り越えたじじょくみさんに
大阪から愛のビームを送りますね〜〜〜♡♡♡
お幸せに〜。
ことぶきつかさ
厄落とし済ませたんですよ。大変でしたね。
いえ、今もまだ大変かもしれませんが、お式と披露宴、頑張ってください!
お幸せに。
瀬戸は~日暮れて~♪
あなた~の島へ~お嫁~にゆ~く~の~
長月
じじょうさん、大丈夫すか?
明日?明日ですか?
おめでとうございます\(^o^)/
きっと大丈夫ですよ~。大丈夫なハズ。大丈夫に決まってますから。
当日はとっても楽しいですよ。
思い切りやっちゃってください (^-^)v
ドレスって、胸と肋骨の所で着るって私もこの時初めて知りました。
いもちゃん
じしょうさん
おめでとうございます!
「腕を身体から離す案」を採用いただけて、JKファンとして最高に嬉しいです。
素敵な1日になりますように…
力一杯祈っております!
七蓮しずく
じじょうさん、遅ればせながら、おめでとうございます!!!
も、もしかして、式&披露宴は今日ですか?
かなり大変な思いで想定外の事が続いた「衣装選び」も、
きっと「ボレロ大作戦」で、心身ともにクリアしている事でしょう…
最近のウェディング事情に疎い為、
和装&ドレス衣装の傾向に、私もビックリですわ(笑)
何はともあれ、この日が、
人生の素晴らしい門出になる事を祈ってますね☆
後々に、《あの時は大変だったなぁ~》って、
お二人で笑って話される日が来ると思います。
では、どんなピンチも、チャンスに変えて、人生乗り切ってくださいませ…♪
花蓮
ひとつミッションが終わって、少しはご負担が減った頃か、はたまた次なるミッションに心身疲労困憊されているのか。
当分お忙しいですね。コメントの返信は無理されませんように。
いやしかし、昨今のドレスがこんなに恐ろしいことになっているとは!大笑いののちに恐怖がきましたw
そして自分のまだドレスを着たい願望に気づいて愕然としましたよ。きゃあやだ!私は実はドレス着たいんだ!?と恥ずかしさに身悶えしております(笑)
じじょくみさんのボレロ効果、是非とも拝見したいです!
Naomi
最初にこのページのデザインをさせていただいたとき、タイトル画像のじじょくみさんは、
諦めの笑みに見えたんですが(すみません!!!!ww)
ご結婚が決まったと聞いたときには、幸せをゲットしたドヤ顔(これまたすみません!笑)に見えました。
同じ画像なのにね。不思議です。
そして今は、穏やかに幸せを噛みしめる微笑みに見えますよ。
おめでとう。末長くお幸せにねー!
じじょうくみこ Post author
みなさま、バタバタしておりましてお返事遅くなってしまいましたが
コメントありがとうございました!
>>okosamaさま
ありがとうございましたー!
今見ても酷い写真ですね、お目汚し失礼しました(⌒-⌒; )
>>きゃらめるさま
ありがとうございました〜♩
当日は「ミートは?ミートはどうした?」と言われましたw
>>マーキョンさま
ありがとうございましたー!
なるほど、昔は肌を見せちゃいけないってことだったんですね。
だからあんな甲冑みたいなドレスなのかw
今は正反対の流れですので、みんなブライダルエステでひきしめるようですよ。
何をどうしても金を使うシステム・・・ブライダル業界おそるべし!
>>アメちゃんさま
ありがとうございます〜♩
大阪からラブビームいただきましたっ\(//∇//)\
もうね、当日はひたすら笑ってましたよ。
そしたら後で「楽しいけど泣きポイントがなかった」とクレームされましたw
>>ことぶきつかささま
ありがとうございます!
どうにか大イベントをこなすことができました・・・
面白かったけど廃人になりましたw
>>長月さま
ありがとうございますー♩
「当日は楽しいですよ!」の言葉に励まされてがんばってきましたー。
大変でしたが、本当に楽しかったですう( ´ ▽ ` )ノ
>>いもちゃんさま
ありがとうございましたー!
当日は何がなんでも腕を体につけませんでした(爆)
おかげさまで写真には細っぽく写りましたです。情報感謝です!
>>七蓮しずくさま
ありがとうございましたー♩
当日はなんだかしらないけどキャシーなボレロを
いろんな人からバンバンさすさすされました。
お相撲さんの気持ちがちょっとわかりました。
>>花蓮さま
ありがとうございましたー♩
ドレスねえ、すんごいことになってますよ。
見るぶんには楽しいんですよ、これかわいいな、これも素敵ー
と迷いに迷って試着してあまりの似合わなさに吐きそうになる、というねw
でもぜひ一度お試しくださいませ!試着はタダですから( ̄▽ ̄)
>>Naomiさま
ご参列ありがとうございましたー!
Naomiさんのお手製ワンピ、お似合いでしたわん♩
ぜひ今後も着てお出かけくださいよー。もったいないですわ。
そのうちじじょくみ画像が「島民に翻弄されて悟りを得た顔」になるかもしれませんw