歳をとるとどうなる?
実は連載100回目で書こうと思っていたテーマなのだけれど、なんとなく100回だからと書くのは恥ずかしい気がして書かないでいた。
で、なぜか110回ならふさわしいという気持ちになって、いま書き始めたのだけれど、そう思っている理由は謎である。ほんに不思議な生き物よのう、と八百万の神様のうちの何人かがいま僕を見て言っているかも知れない。いやまあ、神様が作り出したわけだけども。神話によれば。
人は意外にあっけなく死ぬし、人はそう簡単には死なない。ただ、死ぬかも知れない、と一度でも客観的に他人から言われる、という経験をすると人間は変節する。
自分が目指すべき道があり、その過程に望まない作業があったとしても、平気で乗り越えられていた日々が嘘のようだ。
いまだって、仕事上で多少の嘘はつく。美しくない人に美しいと言ってみたり、面白くもない企画を眺めながら「さすがですね」くらいのことは言ってみる。ただ、歳をとってくると嘘が続かない。ときどき正直なことを言ってみたくなる。若い頃のように、気を遣って嘘をつき続けるなんて器用な真似ができなくなってくる。
そう言えば、80代90代で映画を撮っている映画監督は世界中にいるが、彼らの映画も歳をとってくるにしたがって、身勝手な展開を内包していたりする。ただ、それがとても我が侭で面白いという側面もあるので、一概にそれがいけないとは言い難い。
何回も打ち合わせをしているのに、突然何度目かの打ち合わせで「もう、いいや」なんて言い出すのは、いまなら団塊の世代あたりからだ。どうにも、じっくりと積み上げていくということが出来なくなってくるらしい。
そこまでひどくなくても、多少身に覚えがあって、たとえば貧困にあえぐ人たちをTVで見て、「助けてあげたい」ということはちゃんと思うわけだが、その直後に、TVの前でメシ食いながらそういうことを思うのはいかにも偽善だろう、と思ったりもする。
だからといって、偽善が悪いわけでもない、なんてことも思い立ったりするのでたちが悪い。つまり、歳を重ねるということは、どちらか一方の側に立って、そこで思う存分暴れるってことが出来なくなることなんじゃないかと、最近思っているのである。
あっちも本当だし、こっちも本当だ。正義も悪もあるものか。でも、そんなことを思っていると、仕事も進まないし、ましてやまともな会話が成立しなくなって、ものごとをお金に換えることができない。自分の経済状態をよくすることがまだまだ優先で、貧困にあえぐ人のために、自分の持っているわずかな預金を取り崩すなんてことはできない。
さあ、どっちに行けばいいのか。どっちに行けばみんなのためになって、自分のためにもなるのか。
そんなことを考えていると、大きな声を張り上げて叫びそうになる。まるで子どもだ。となると、歳をとると子どもに返っていく、というのはあながち単なるたとえ話ではなく、本当のことなのかも、と思えてくる。
ただ、なにごともなく子どもに返っていくわけじゃなく、そこには戸惑いや諦めや憎悪や愛着が所狭しとちりばめられていて、歳をとるとどうなる?という疑問の答えは、グルグルとあちらこちらを回っていって、帰っちゃこないけれども、歳をとることがそれほど単純なことじゃないって気がしてくる。
だからこそ、人は逆にシンプルなものを望むんだろうな。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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nao
こんばんは。
それなりに経験を積んできたはずなのに
物覚えが悪くなり、集中力がとぎれていまいがちです。
どこか成長したかな-?成長よりも衰退が激しいのでしょうか。
歳とってみないとわからなかったことって沢山ありますが
丁度今現在思うことは
歳をとるって痛いことなんだなー(T_T)
そして痛いのは嫌だけど
それなりに頑張ってる自分も悪くないと思ってます。
持って生まれた自意識過剰、自己陶酔は健在です。
uematsu Post author
naoさん
ほんと、歳とると、集中力がねえ(泣)。
個人的にはそこが一番痛いです。
でも、その分、適当に流すということも覚えたし、力の入れどころを固めるなんて技も覚えたかな、と。
自己陶酔、いいです。
ぼくも、それでいきます(笑)