谷中の花見
桜の満開の頃を過ぎるとなんだか寂しい気分になるのはなぜだろう。
と言っても、別に詩的なムードが周辺に漂うわけではなく、ただなんとなく「ぽつねん」とした気分になってしまう。
そう言えば、僕ら世代のナニワのヒーロー、『じゃりン子チエ』のテッチャンは、満開の桜の下の大混雑の人混みの中で、周りに悪友たちがいるにも関わらず「さみしい、ワシはさみしい」と言い続けていた。
人がいるとかいないとかじゃないんだなあと思う。桜という一つ一つの花だけ見てれば、とても地味な存在なのに、春の一時期にだけ咲き誇り、そこに人々たちが集い呑み歌い語らうという習慣には、やはり人を寂しくするだけの切羽詰まった匂いがある。
結局、花を楽しむ、ということは季節を認識して、時間を楽しむということに尽きるのだろう。だからこそ、ふとそのことを意識すると、その流れのなかにきちんと自分は立っているのだろうか。流れから外れてはいないだろうかという怖さが頭をもたげてくる。その怖さが、寂寥感を生み、こんなにたくさんの人の中でたった一人、という寂しさを生むのだろう。
千駄木に住んで初めての今年の花見は谷中霊園の桜通りだった。両脇に古くからの墓を眺めながら、飲み食いしている人のいない、桜並木をゆっくりと歩く。時折、墓参りの家族がいて、花を愛でる人たちとすれ違ったりする。死と隣り合わせの風景の中での花見は、不思議と僕に「さみしさ」を感じさせないのだった。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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つまみ
>死と隣り合わせの風景の中での花見は、不思議と僕に「さみしさ」を感じさせないのだった。
それ、わかる。わかります。
uematsu Post author
つまみさん
なんかね、自分でも不思議だったんです。
なんだろう、初めて来たのにこの感覚。
そんな気分で花を愛でておりました。