ゴダールの『男性・女性』を見る。
さて、ゴダールである。
どんな映画が好きですか、と質問されたら、ゴダールを思い浮かべつつ、ゴダールとは答えない、というゴダールである。
だって、「ゴダールが好きだ」と答えた瞬間に、「ややこしい映画が好きな人」的なくくりにされてしまうのも嫌だし、「じゃ、ハリウッド映画とかは嫌いですか」と言われても困ってしまう。だって、ハリウッド映画も大好きだし、チャイニーズシアターでアカデミー俳優の手形に手を合わせたこともあるくらいだから。
ということで、ややこしいことになるので、ゴダールが好きだとは言いにくい。しかも僕の場合は、ゴリゴリにゴダールの全作品を語れるほどでもないし、すべてのゴダール作品が好きなわけでもない。
僕が好きなゴダールはいわゆる「アンナ・カリーナ時代」の作品群だ。その中でも特に好きなのが『男性・女性』である。
もう、とにかくみずみずしい。登場人物一人一人がイキイキとしているだけじゃなく、何気ないパリの街角を撮ったインサートカットまで、こちらの気持ちをつかんで離さない。
1965年。僕が生まれて三年目のパリの風景がこの映画には納められているのだけれど、そこにたゆたう若者たちの焦りや苦悩は現代となんら変わらない。なのに、政治の季節になんらかの関与をしなければと思いながらも、結局目の前の彼女の一挙手一投足に振り回されているジャン・ピエール・レオの可愛さ。あのキラキラと瞳を見るだけで、あのシャンタル・ゴヤの小生意気な「ハハ」と笑う顔を見るだけで『男性・女性』は僕のゴダール・ベスト1映画となってしまうのである。
ゴダールが登場人物たちにインタビューしながら、作り上げたセリフは、ゴダールによる当時の若者の世論調査であり、時代を見つめるノンフィクションの作業である。
そこで、自分の質問に対する相手の答えに期待しているゴーダルの有り様は、80年代映画大陸に帰還してからのゴダールにはないものだと思う。『パッション』以降のゴダールは、観客に期待することを辞めてしまっているように思える。もちろん、切ないほどに内に向かっていくゴダールも好きなのだけれど。
そう考えるとゴダールの『男性・女性』が好きだという理由は、小津安二郎の『お早よう』が好きだという理由と同じなのかもしれない。
もちろん、最高傑作はと聞かれたら、ゴダールなら『気狂いピエロ』だし、小津安二郎なら『東京物語』と答えるかもしれない。
でも、映画として隙が多い。けれど、予測できない魅力も大きい。そんな『男性・女性』を繰り返し繰り返し見たくなってしまうのだ。
「男性・女性」予告編
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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