淀んだ水の中で跳ねる鯉。
魚はあまりに水がきれい過ぎると生きていけない、と何かで読んだことがある。なるほど、と思った。それはたぶん、人間だって遊びのない社会の中ではギスギスとして生きてはいけないだろう、という結論を導き出すために比喩として用いれられていたように記憶している。
なるほどとは思ったけれど、それ以降、この話を思い出すのは自分自身に甘くなり「もう、許してくれよ」と心の中で泣きが入ったときだけなので、正しいかどうかは定かではない。人は誰だって自分には甘い。いやまあ、人は多くの場合自分には甘い、くらいかな。えっと、僕は自分にはとても甘い。その通りです。
映画「悪人」を見ていたときに、あまりにすべての場面の緊張が高く、それぞれの演技の完成度が高くて、ほとほと疲れたことがある。見終わった直後、手に汗をかくほどのテンションだったのだけれど、後から思い出すのは深津絵里が紳士服量販店で制服姿で佇む場面ばかりだ。
逆に70年代ATG映画などを思い返すと、胃がきりきりするほど緊張する場面があるかと思うと、驚くほどだらしのない、しまりのない場面が連続していたりする。もしかすると、その緩急こそが映画の醍醐味だったのかもしれない。
ただ、いまの若い人たちと一緒に映画を見ていると、少しでも緊張のとぎれた画面が続くと、驚くほど集中力が途切れていることがわかる。普段の生活が緩いんだから、映画の中くらい緊張させてくれ、ということなのか。それとも、スマホなどで刺激を日々与えられていることで、嘘でもいいから刺激がないと死んでしいまいます、ということなのか。
どちらにしても、自分をゆるく泳がす術は見つけたいと思うのだけれど、ゆるいのと甘いのとの境目をきちんと見極めねばと思ったりするのである。
うーん、むずかしいけれども。この歳でむずかしいなら、ずっと無理なのか。いや、それこそが自分に甘いの真骨頂なのか。いやはやなんとも…。僕は自分に甘い上に、若干ずるい。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
http://www.isana-ad.com/maron/pc/
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
はしーば
「若干ずるい」に、ちょっときゅんとしてしまいました。
ちょっとした含羞のカミングアウト、中年男性の特権的チャーミングさ、とでもいいましょうか。
uematsu Post author
はしーばさん
なんか、「すごくズルいわけじゃない」とは思うんです。
でも、「ズルくないです」と胸張るわけにもいかない。
ほんと、正直に「若干ズルい」のです(笑)。
キュンとしていただいて、恐縮です(笑)