新幹線で見かける主従関係。
新幹線に乗ると、たまに見かけるのが明らかに主従がはっきりとしている関係である。これは、自由席ではあまり見ないのだが、指定席になると増え、グリーン席になるとさらにもう少し増えるような気がする。
いろんなパターンがあるのだけれど、いちばん多いのが仕事上の上司と部下である。上司と部下が一緒に新幹線に乗り、上司が少し偉そうで、部下が少しへりくだっている。
新幹線の発車前に部下がお弁当や飲み物を買ってきて、時には上司が好みそうな雑誌まで用意していたりする。まあ、これはこれで「新幹線の中では、雑誌でも読んでいてください。オレに話しかけないでください」という意思表示なのかもしれないが、上司はそんなことは一切理解しない。
しかし、上司と部下よりも激しく主従をうかがわせるのは、仕事上の発注元と発注先の代表同士という関係かもしれない。
いわば、元請けと下請けの関係だから、上司と部下よりも明らかにお金の流れがわかりやすい。上司と部下は主従でありながら、その上の経営者から見れば、同じ立場に立つ人間同士、どこか互いに憐憫のようなものもある。ところが、元請けと下請けになると力の差があればあるほど、その力関係が人前に露骨に現れることもあったりする。
だいたい、僕の観察するところによると、元請けよりも下請けの方が声が大きい。ハキハキと元気に、元請けのご機嫌をうかがう。うかがわれた元請けは下請けに、それなりに気をつかいながらも、声を張らずに「まあ、ぼちぼちです」みたいな返事を返す。
このあたりは、別段、そうしようと思ってそうなっているわけではない。ただただ力関係として、なんとなくそうなっているようなのだが、どちらもネクタイをして、いかにもビジネスの現場という雰囲気だからこそ、そこに悲哀を感じてしまう。
もちろん、その悲哀もこちらの勝手なイメージかもしれないのだけれど。
主従があっても、第三者として見ていて楽しいのは夫婦関係だ。特に奥さんが強く旦那さんが弱いという場合、その可笑し味は倍増する。
いつものように、上から目線で、旦那に「お弁当、これじゃないって言ったじゃない」と突っ込む奥さん。そんなこと言ったって、と思いつつも「そうだっけ」ととぼける旦那さん。「お弁当もちゃんと買えないんだから。私は松花堂弁当みたいなのが好きなの」と大げさに嘆いてみせる奥さん。松花堂ってツラかよ、と思いつつも「ごめんごめん」とかわしてみせる旦那さん。この「絡みたい」側と「スルーしたい」側の攻防がとても楽しい。
最近、思うのだけれど、このちょっとした主従関係は誤解を恐れずに言うと、意外に便利なものかもしれない、という気がする。
友達のような親子関係が増えたと言われるけれど、それと同じように友達のような先生と生徒とか、友達のような上司と部下が増えた。
そうなると、いざというときに、ピリッと緊張感のあるやりとりがとてもしにくくなる。友達だからこそ本当は厳しい一言も言ってやらなければならない、と思うのだが、現実にはナアナアですませてしまうことになる。
人間、建前であっても、目上の人間を敬うという気持ちや、親しき仲にも礼儀ありで接するという気持ちが大切なんだなと思う。
振り返っては自分はどうかというと、その都度その都度、自分の都合で友達のように接したり、いかにもな建前で接したりするので、周囲は、特に年下の若い仲間は、時に戸惑ったりするようである。
まあ、それについては、慣れていただければと、ちょいと視線を落としてお願いするほかないのであります。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
http://www.isana-ad.com/maron/pc/
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。