魔法の杖ではありません
以前に時計のお話を書いたことがありましたが、今回はもっと身近な白杖のお話にしてみようかと思い立ちました。それというのも最近立て続けに「おっ」という驚きの声を聞いたからにほかなりません。
道路交通法でも決められている通り、視覚障害者にとって白杖は重要なアイテムの一つです。その役割は主に2つ。一つ目は自分が進む先を確認することで安全な歩行を助けること。二つ目は周囲の人々に見えない(見えにくい)存在を知らせること。
少々話がそれ気味になりますが、この二つ目の役割があるゆえに白杖を持つことに抵抗感を持つ人も多くいます。周囲に知らせて注意してもらうということは自ら進んで視覚障害者であることを表面に出すということでもあります。専門的には「障害の受容」と言われる段階への過程での葛藤の一つです。
かくいう私も実は、今とほとんど変わらない頼りない視力だったにも関わらず大学生くらいまではあまり白杖を堂々とは使っておらず、折りたたんだまま持っていざどうしてもというときに伸ばしてみようかという構えだったのですが…。若かりしころのお話ということですね。
さて、その白杖ですが、一本の真っ直ぐな直杖というものと、折りたたみができるものの2種類があります。それぞれに太さや材質、日本製や外国製といろいろな種類があります。直杖は一本の棒なので丈夫で路面情報のキャッチにも優れてはいますが、椅子に座る場面などでは床にころがしておかなければならないこともあってやや邪魔という側面もあります。
そういうわけで多くの視覚障害者は折り畳みのできる白杖を使っているのではないかと思います。折り畳みの杖には4段折や7段折などの種類があります。私が愛用しているのは最も短くたためる7段折のもので、細くて軽いのも特徴です。折れたときのためにスペアを持ち歩く人もいるくらい、あまり丈夫ではないことから、全盲で一人歩きをアクティブにするような人からは好かれていないようです。
私はわりと長持ちさせている方だとは思いますが、横断歩道を渡っているときに横道から飛び出してきた自転車のスポークに挟まってぱっきり折れてしまったことや、急停車した電車の中で自分の体重がかかり過ぎて折れてしまったこともありました。どちらのときも通りすがりのとっても親切な人が応急処置のできそうなところまで連れて行ってくれてありがたかったものです。
で、冒頭の「おっ」の話に戻ります。なぜそんな声があがるかと言えば、折りたたみ式の杖の中にはゴムが通してあり、伸ばしたときにはそのゴムのお陰で杖がピヨンと一本に繋がるようになっているからでしょう。ゴムが伸びてジョイント部分がうまくはまって行く様はなかなかインパクトがあるので、その瞬間を初めて見た人はちょっと驚きの声をあげてしまうのでしょうね。私は最近、美容師さんと映画館の方に驚かれる場面に出会ったのでした。
先月のこのコーナーでディズニー35周年と書いていましたが、私の杖には25周年のときに買ったネームタグの片割れ(肝心のお名前プレイトは2年ほど前に壊れてしまいました)がついていて目印になっています。この片割れも壊れる日がきたら今度はどんなものをつけて歩こうかしら。
きょん
こんにちは!
仕事帰りに時々会う、白い杖を持った方がおられます。
冬場だと真っ暗で、歩行者、自転車、車から認識がしにくく危険だなあと思いながら、少し安全なところに行かれるまで、見守っています。
例えば夜になると、自動で光る杖があればいいのかな?
と思ったりするのですが、どうでしょうか?
KEIKO
きょん様
「自動で光る杖」ではないのですが、白杖に巻きつけて使う夜光テープというようなものがあります。車などのライトに反応して少し光るものです。それでもやはり分かりにくいかなあという気もするので、光るキーホルダーなどを鞄などにつけている人もいますね。私の杖にはその光るテープが巻いてありますが、それでどれくらい光っているのかしら?