映画『半世界』に降る雨の美しさ。
阪本順治監督の新作映画『半世界』が公開されている。
有楽町をふらふら歩いていると、今年の秋に閉館することが決まった有楽町スバル座のポスターが目に入った。阪本順治、稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦という名前が並んでるのを見て、そのままチケットを買って劇場へと流れた。
東京国際映画祭のコンペ部門で観客賞を受賞したということは知っていたのだが、それ以外はまったく予備知識なしで見た。見て良かった。面白かった。
決して新しくはない。奇をてらった演出もないし、驚くほどの展開もない。けれど、淡々と進んでいくストーリーは、昨今の日本映画がなんとなく忘れてしまった、「物語をきちんと物語る」という映画本来の面白さを十二分に伝えてくれる。思い出させてくれる。
若い頃、友だちの家に行き、成り行きでそのまま泊まることになって、うだうだとくだらない話をしていると「ほら、お前は知らないかもしれないけどさ、文化祭の時にこんなことがあったんだよ」なんて聞かされて、笑ったりしみじみしたりしている、あんな感じがこの作品にはあった。
三重県の伊勢を舞台に幼馴染みの男三人を主人公として映画は展開していくのだが、そこここに人生の痛みと悲しみが見え隠れしていて、こちらの胸元を掴んでは離さない。
生きづらい世の中を、みんなが自分の世界に精一杯になっているという現実をこの映画は説教がましくなく見せてくれる。
ストーリーの混乱を防ぎたかったのか、セリフでの説明が若干多い気はするのだが、そこは心配性な監督の手癖とでも言うべき部分かもしれない。
しかし、それにしても、この作品に雨の美しさは何だろう。晴天の日の土砂降りの雨。その雨の中を歩く人々のたどたどしい足取り。傘をかわして、男たちの肩を濡らす雨。この場面と出会えただけで、この作品を見て良かったと思わせてくれる。
鬱陶しい人と人とのやりとりも、煩わしい気遣いも、理不尽な暴力もすべてを洗い流しながら、雨がいつまでも降り続くのだ。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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Jane
そうですね、いつもではないけれど「癒されるような雨」って感じることが、人生で時々あります。今日も雨だったけど今日のは違ってた。どういう状況でそう感じるのだろう。私の心次第というだけでもない気がします。やっぱり、映像的に、明るい光の中での雨かな?
uematsu Post author
Janeさん
映画の中では見事な狐の嫁入りでした。
悲しみの中で、神々しい光が差し、
そこに土砂降りの雨が降りしきる。
そんな雨に癒されたり、
悲しみを新たにしたり、
不思議な力がありますね。
Jane
高校の時合唱で、「降りしきれ雨よ 降りしきれ すべて立ちすくむものの上に」と歌ったのを思い出しました(水のいのちより)。
uematsu Post author
Janeさん
降りしきれ雨よ
降りしきれ
すべて立ちすくむものの上に
いい詩ですね。
心に染み入るようです。
矢野顕子さんの
「ごはんができたよ」
のなかの歌詞を思い出しました。
義なるものの上にも
不義なる者の上にも
静かに夜は来る みんなの上に来る
いい人の上にも 悪い人の上にも
静かに夜は来る みんなの上に来る
すべての立ちすくむものは、
実は立ちすくまないものなどいないのだ、
というメッセージかもしれませんね。
そして、すべての人なの上に雨は降り、
すべての人の上に朝がやってきて、
腹が減り、食べ、話し、泣いて、また笑う。
そんなことを考えさせてくれる映画を観ると、
とても嬉しくなります。
Jane
人それぞれに自分の事情に精いっぱいで日常のあれやこれやを忙しく繰り返しているんだけど、みな大いなる自然と時間の流れの中にいるんですよね。
uematsu Post author
Janeさん
ですね。
だからといって「日々に感謝」という
殊勝な気持ちにはなかなかなれませんが、
丁寧に生きたいですね