【エピソード37】最終回記念、私たちのクリスマス!
さてさて、聞いた話を形に残すことを仕事にしている
「有限会社シリトリア」(→★)。
普通の人の、普通だけど、みんなに知ってほしい
エピソードをご紹介していきます。
今回はこの連載を担ってきた有限会社シリトリアのメンバーフル参戦です! と言っても3人だけど。12月だし、それぞれのクリスマスの思い出を語ります。
ほぼ3年間、『あの頃、アーカイブ』を連載できて、とても楽しかったです。読んでいただき、コメントをいただき、ありがとうございました。エピソードが貯まったら、また出戻らせてくださいねー。
● いとこたちと一緒のホームクリスマス
幼い頃、母親の兄弟がみんな近くに住んでいたのでクリスマスはいつもいとこたちと過ごしていました。祖母の家に集まり、親たちはハンカチなどささやかなプレゼントを交換。
私たち子どもには、お約束の〝お菓子の長靴〟です。お店で見かける同じお菓子でも、銀色の厚紙で作られたブーツの中に入っているだけでワクワク。中身のお菓子でとりわけ私が好きだったのは、歯磨きのようなアルミのチューブに入ったチョコレートペースト。今はもう駄菓子屋さんでも見かけないようなお菓子でしょうか。
プレゼント交換が終わったら、ケーキを食べながら大人たちはおしゃべり。子どもたちはゲームをしたりトランプをしたり。やがてその家に住む一番年上の従姉が、戸棚からレコードプレーヤーをうやうやしく出してきます。レコードプレーヤーと言っても、今ならトイザらスに売っているおもちゃの方がよほど精巧、といった簡単な造りのものでした。
そこに当時のEP盤のレコードを置いて、従姉がそうっと針を落とします。プレーヤーの脇のスピーカーから聴こえてくるクリスマスソング。レコードのラベルもクリスマスらしく、「ジングルベル」はサンタの顔、「もろびとこぞりて」ならピンクのドレスを着た女の子の絵だったことを覚えています。
そうそう、「もろびとこぞりて」と言えば、この言葉、私はずいぶん大きくなるまで、何かの呪文だと思っていましたっけ。他の従姉たちはどうだったのでしょう。とにかく意味はわからないけれど、クリスマスになったら歌う楽しい呪文。「もーろびとーこぞーりーてー」――プレーヤーの上でグルグル回るピンクの女の子を見つめながら、従姉たちと一緒に大声で歌ったものでした。(れこりん)
●サンタはいると確信した日
今から、うん十年前のクリスマスイブ、サンタさんからプレゼントが届く日。その日の夜、母と兄と夕食を食べ、子ども部屋に戻ると、夕食前にはなかったプレゼントがありました!
母はずっと台所にいたし、仕事で毎日遅い父はもちろん帰宅していません。サンタさんの存在をなんとなく疑い出していた10歳の私は、この時「サンタさんはやはりいた!」と確信しました。父は、それから1時間後にいつも通り帰宅、私が興奮して「サンタさんが来てくれたよ! 誰も部屋に入ってないのにプレゼントが置いてあったよ!!」と話すと、「えー」と驚いていました。
私は翌日学校でもそのことを話しまくり、友達と「やっぱりサンタさんいるんだね」と大盛り上がり。10歳なのに、みんな幼かった。現代ではありえない展開ですね。(今の子どもたちは何歳までサンタさんを信じているのでしょうか?)
あの時…。父がこっそり帰宅してプレゼントを置き、また家を出て、小芝居して1時間後に帰宅したのでした。まじめな父が、小芝居。今も昔も、親は子どもにサンタさんを信じてほしいのは変わらない気がします。
ところで、わが家のクリスマスケーキは、いつもアイスケーキでした。なぜだろう?(あきりん)
●猫たちがやって来た!
グッと時間を前に進めて、2000年、ミレニアムのクリスマスイブのこと。わが家にサンタクロースならぬ友人のお知り合い父子がやって来て、子猫を2匹プレゼントしてくれました。
Sさん父子は、数週間前にゴミ捨て場でみーみー鳴いている5匹の子猫を見つけました。自分たちで飼えるのは1匹。そこで友人ネットワークを活用して「子猫のもらい手大募集」をかけたところ、友人のC子がそれを聞きつけ、9月に猫を亡くしたわたしのことを思い出したのです。
C子「2匹はもらい手が決まり、オスの黒猫2匹とメスのキジ猫1匹が残ってるんだって。どうする?」
わたし「2匹引き受ける! どれでもいい!」
C子「Sさんもおうちが見たいって言うし、まゆぽも見て決めたいだろうから、連れて来てもらってお見合いしよう」
見てしまったら、どんな子でもいらないなんて言えるわけありません。Sさんがあげてもいいと思ってくれたら喜んでいただきます、と思いつつ、はいはい連れて来てと返事をして、クリスマスイブのお見合いが決定。
2匹はわが家でケージから出されるやいなや、ドドドドーッと全力疾走してどこかへ行ってしまい、しばらくするとどこからかまたドドドドーッと聞こえて、目の前を弾丸のように走り抜けていく猫らしき影が見えました。元気!
「しっぽの長いのからもらい手が決まり、1番短いのと2番目に短いのなんですが、いいですか?」とSさん。しっぽなんて長くても短くても渦巻いてても構いません!
「走れるくらい広いおうちでよかったです。安心しました」とSさんは決して広くないわが家でも喜んでくれ、2匹は無事にうちの子になりました。
それから19年。クリスマスイブにちなんで「てん(天)」と「くう(空)」と名付けた2匹のうちの1匹が今年、星になって天に帰りましたが、2匹はわが家の最高のクリスマスプレゼントです。(まゆぽ)
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★月亭つまみとまゆぽのブログ→「チチカカ湖でひと泳ぎ
★ついでにまゆぽの参加している読書会のブログ→「おもしろ本棚」よりみち編
いまねえ
まゆぽさん
最終回なのですね。楽しく読ませていただいていましたので
さみしい思いがします。
クリスマス、サンタクロース、懐かしい響きとなりました。
お菓子の長靴は手に持った感触まで思い出されます。
あれ?そういえば最近この長靴を見かけない。。
(見かけないといえば七五三の千歳あめも店頭で見ないような。。)
近所のスーパーはハロウィン後即、正月飾りを並べてたし。。
子供たちを喜ばせようとしていたのはいつごろまでだったでしょうか。
今ではクリスマスはお店でケーキやチキンを横目に、
ジングルベルやワム!、山下達郎などがBGMに流れるのを聴いて
ちょっとだけその余韻に浸る程度のものになりました。
私の子供時代はケーキはバタークリームが主体だった記憶。
最初に生クリームのものを食べたとき、その美味しさに驚きました。
一度だけお付き合いで親がアイスケーキを買ってきましたが
あれ、食べきらないとだめですよね?
当時、我が家の冷凍庫なんて小さいものだったと思うので
家族6人で必死に食べきったのかしら。。
ぜひともまた、エピソードを紹介しに戻ってこられるのを
心待ちにしています。
初めて知ることもあるし、ああそうだよねと自らの記憶が
結びつくこともあるし、いつまでも口の中で
転がしながら味を楽しんでいたい飴玉のようなコーナーでした。
ありがとうございました。
まゆぽ Post author
いまねえさん、あまりにうれしいお言葉をいただき、
まじ、泣きそうになっているまゆぽです。
ああ、バタークリームのケーキ、食べていました、私も。
「クリスマスケーキ」というだけでも、
次々に普段は意識の水面下に沈んでいる記憶が
炭酸水の泡のようにシュワシュワっと浮かび上がってきます。
何しろ、過ごしてきた時間が半端なく長いもんで。
そういう泡をカタチにして残しておきたくて
始めた「あの頃アーカイブ」でした。
すくい取れずに消えてしまう記憶の方がもちろん多いのですが、
残したい気持ちと、残そうとするトライアルは継続していきます。
また帰って来る気十分なので、その時はよろしくお願いします。
いまねえさんに素敵なクリスマスが来ますように!
アメちゃん
メリークリスマス!
そうそう、クリスマスケーキはバタークリームでしたねぇ。
うちは母がバタークリームは美味しくないからと
ホールのじゃなくて、普通のショートケーキでした。
夕食後に、そのショートケーキを食べて
私はてっきり小学校のクリスマス会みたいに、家族で歌を歌ったり
余興をするのかと思ってたんですよ。ゲームとか。
ところが、母は(共働きで忙しかったので)さっさと台所で洗い物を始めたんで
私は母の後ろ姿にむかって
「歌とか歌わんの?」って聞いたら
「歌?歌わんよ」
って返されて。
なので私は寂しく台所の柱にもたれて、一人で「トロイカ」を歌いましたよ。
選曲がまた寂しいですね(笑)。マイナー調。
クリスマスっていうと、この柱にもたれてトロイカを歌う姿が
いっつも心に浮かびます。
あ、そうそう。
チューブに入ったチョコレートペースト!なつかしいです。食べてました。
でも、食べるときに唇や歯に当たる金属の感じがちょっと苦手でした。
つまみ
粋に、クリスマスにコメントを書こうと思っていたのですが、きっと、たぶん、ほぼ、ゼッタイ、忘れるので、覚えているうちに書くことにしました。
クリスマスに洒落たイベントをするような家庭の子ではありませんでしたが、ケーキはなぜか隔年でアイスケーキで、その年はワクワクしながら食べたことは鮮明に覚えています。
ツリーも、小ぶりのがあったような気がする…程度の記憶ですが、ある年、その飾り付けのシャリシャリした長いモール?みたいなのを、次兄がふざけて首にかけていたら、ケーキのロウソクの火がそこに移って、あわや大惨事(実際はすぐに消えた)で子供心にはトラウマで、あのシャリシャリが嫌いになりました。
てんとくうのエピソード、なんだか泣いてしまう。
私はかろうじて、その前のまゆぽさんのネコのことを知っているので、付き合いも長くなったものよ、と勝手に感慨に耽っています。
私も、この連載が大好きだったので、お休みになるのは淋しいですが、この連載のおかげで「普通の人の、普通のエピソード」がいかに面白く貴重か、あらためて思い知ったので、復活を楽しみにしながら、培った視点で世の中を見ていきたいと思います。
ありがとう。
これからも、チチカカ湖、他でよろしく!
れこりん
「あの頃アーカイブ」メンバーのれこりんです。つたない文章に、いつも温かいコメント、ありがとうございます。身近な人たちの何てことのないエピソードも、集まってみれば、それなりに「昭和」(ざっくり言うと)ならではの懐かしい風景ばかりでした。昭和のクリスマスも、「彼氏と過ごす」なんて感じより、圧倒的に家族で集うイベントでしたよね。(あ、それは自分がまだ子どもだったから!?)アイスケーキやチューブのチョコ、お菓子の長靴――甘く楽しく、ときに切ない思い出を、読んでくださった人たちと共有できたこと、嬉しく思います。またエピソードが出そろったら、この3人で再登場させていただきますね。
まゆぽ Post author
つまみちゃん、コメントありがとう!
確かに子どものいる家庭のクリスマスって、
ドタバタが起きてわけわからなくなるイメージがあるなあ。
喧嘩してツリーひっくり返したり、
あっちのプレゼントの方がいいと泣き出したり。
火がつくっていうのはかなりすごいけど。
「あの頃アーカイブ」が始められて、ここまで続けられたのも、
19%くらいつまみちゃんのアドバイスやフォローや励ましのおかげです。
懲りずにまた始めたら、よろしくね。
あ、その前にチチカカ湖リニューアル頑張ろうねー!
あきりん
アメちゃんさん、コメントありがとうございます。
『台所の柱にもたれて、一人で「トロイカ」を歌う~』、まさに「あの頃アーカイブ」です!。もうもうその情景が目に浮かび、普通の人の昭和の記憶だけれど、一人一人が温かく切ない大切な物語を持っていて、その物語を読む幸せを味あわせていただきました。
皆さまの温かいお言葉やフォローのお陰で続けられた「あの頃アーカイブ」、感謝しかありません。長い間ありがとうございました。
普通の人の普通のエピソードの貴重なこと&面白さをますます実感しているわたくしたち、また始めさせていただくことになったら、どうぞよろしくお願いします。
プリ子
今更のコメントですみません、最終回が来るとは思っていませんでした~~ううう。
普通の人の普通の話がどんなに大事か、どんな人にも大事な一生があるんだな、と、毎回毎回、想いを深くしながら読んでいました。
正直、この会社に就職して、私も聞き取る仕事がしたい! と思ったぐらいです。
そしてそして、最後に、てんちゃんとくうちゃんのお話。そういう由来のお名前だったんですね。
じつは我が家にも、11月に子猫が二匹やってきました。その日のことを、こんなふうに思い出すときが来るのかな。
またお会いできるのを楽しみにしてます!
まゆぽ Post author
プリ子さん、忘れた頃のコメント(失礼!)めちゃくちゃうれしくて、
思いがけないお年玉をいただいた気分です。
本当に、おっしゃる通り、普通の人の普通の人生の中に
なんて多くの宝物が埋まっていることかと、
それを掘り出す喜びに赤字が山になってもやめられないねえ、
と思っております。
そして、プリ子家に子猫がやって来たんですね!!!!!!
ああ、会いたい、見たい、触りたいです!!!!!!!
よもじ猫に登場するのを心待ちしています。
いつも素晴らしい古着愛に圧倒される
大好きな『日々是LOVE古着』、今年も楽しみにしていますねー。