なら国際映画祭2020を振り返って。
この四連休は奈良にいた。2年に一度開かれる『なら国際映画祭』に参加するためだ。この映画祭は2010年に第1回が開催され、すでに10年続いている。映画作家の河瀬直美が企画しスタートさせた映画祭は、県庁所在地に唯一映画館がない奈良と世界とつなぐために開かれている。
僕は河瀬監督が出た映画学校の出身という縁で、学生映画部門である『NARAーwave』の作品の選考をお手伝いさせていただいている。また、学生たちもボランティアとして参加しているので、どちらかというと、気持ちとしては映画祭側の人間という感覚でいる。ただ、実際に実行委員などには入っていないので、映画祭の現場では普通に観客として映画を見ることができる。ということである意味、少し無責任に映画祭を楽しむことができる。
そんなわけで、2年ぶりのなら国際映画祭を楽しんできたのである。が、これがなかなかに楽しめない。時に、知っているスタッフを見ては、「このスケジュールなら、こうなっても仕方がないね」と安易に許容し、ある会場では「なんで、上映中に調整室で大声で電話してるんだよ」と一人の観客として怒ったりする。
つまり、他人事じゃないのだ。他人事じゃないからいいところも悪いところも気になって仕方がない。この映画祭のいいところは、やはり手作り感に溢れているところだ。そして、それは河瀬直美という一人の映像作家の想いを核にした映画祭である、ということなのだと思う。では悪いところはどこか。おそらく、それは商売を意識していないところだろう。この映画祭で、絶対に赤字を出さない。この映画祭をビジネスとして成功させたい。という姿勢がほとんど感じられない。
しかし、映画祭にビジネス臭がプンプンしたら、どうなるのか。おそらく、多くの映画ファンが嫌悪感を示してしまうのだろう。ただ、映画祭は続けていくことが大切なのだと思う。だとしたら、大もうけしなくとも、必ず黒字を出して、次の年に繋げていかなければ終わってしまう。そのために、やらなければならないことの整理がついていない。そんな印象を持ってしまうのである。
お金の計算のことは、おそらくちゃんと事務局がやっているのだろう。だとしたら、あとは一度来た観客を来年に繋げられるかどうか。一度参加した映画作家にこの映画祭は素晴らしいと思わせられるかどうか。勝手にそう思ってくれる人はいるだろうが、ボランティアとして参加しているスタッフたちに、そんな心意気があるのかというと、それは正直感じられない。ミスなく対応する、ということで精いっぱいなのだ。正直、ミスなんていくらしてもいい。ただ、映画祭を一緒に作っていきましょう、という姿勢を感じたことがあまりないのだ。
そこが、他の著名な映画祭とは少し印象が違う。僕はここ数回しか参加できていないのだけれど、その印象が年々濃くなってくる。これは年々ボランティアの質が下がっているということではない。どちらかというと質は上がっている。ただ、ボランティアの質が上がり、運営がこなれてきたからこそ、一番大事な部分が浮き彫りになってきたのだと思う。 成熟まであと少し。今年のなら国際映画祭は終わってしまったけれど、2年後、おそらく開かれる2022年の映画祭はもっと大きく優しく強い映画祭になっているという予感がする。そうならなければ嘘だし、そうなるだけの積み重ねはできている。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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