どこまで塗るか。
子どもの頃から、色を塗るのが苦手だった。美術の時間にデッサンや構図を褒められても、結局色を塗るときにグダグダになってしまう。そして、先生に「塗りすぎだよ」と言われる。しかも、自分でも塗りすぎてしまったと思う。けれど、どこで止めればいいのかがわからないのだ。
同じようなことは学生の映画を見ていてもある。僕たちが学生の映画を批評するのだけれど、その時に「うますぎるなあ」と思ってしまうことがあるのだ。でも、学生に「うますぎる」と言っても「うますぎて、悪いんですか」ということになる。悪くはないんだよなあ。悪くはないんだけど、とちょっと口ごもる。
ようするに、現実からどこまで引き算するのか。どこまで省略するのか、ということなんだろうと思う。色を塗るにしても、ある程度塗って、あとは想像させたり、別の色で何かを喚起したり。そういうことが出来るようになると、作り手としての成長があるのだろうと思う。
翻って、じゃあ自分はどうだ、という話になると、僕はいまだに色塗りをやめるタイミングを会得していない。いや、もしかしたら、前よりもわからなくなっている。本業のコピーを書くときにも、ひとひねりしすぎて、わかりにくいものを出してしまったりもする。成長してないなあ、とも思うし、いやもうこんな人間なんだよ、とも思う。
そこまで考えて、「あ、そうか。どこまで色を塗るのか」と考えることが人間なんだな、と突然、山下清画伯のようにぼんやりと思ったりもする。ぼ、ぼくらは、どこまで塗っていいかわからないから、お、お、面白いんだな。そう言われて(言われたような気がして)、今日もまあいいか、と色塗りを途中で投げ出す日々なのです。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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