公園に行くとぐったり疲れる。
昔から公園が苦手だ。もちろん、静かな公園でぼんやりしているのは好きだし。公園で近所の子どもたちが遊んでいるのを見るのも好きだ。でも、僕は公園が怖いのだ。
何が怖いのか。例えば、幼稚園に行く前のような小さな子どもたちが遊んでいるそのすぐ横でスケボーで走り回る中学生がいたりすると、もうドキドキしてしまう。ケガをさせるんじゃないか、させられるんじゃないか、と気が気ではない。幼稚園くらいの女の子がのるブランコを近所の小学校高学年の女の子が押してやっている。最初はいいのだが、だんだん調子に乗ってものすごい勢いで押している。本人はキャッキャいいながら喜んでいるが、一瞬でも油断すると取り返しの付かない事故につながってしまう。とか、考えてしまうのだ。
普通は子供ができてからそう思うようになった、という人が多いのだが、僕の場合は自分が子供の頃からなのだ。子供のくせして、「ああ、そんなことをして小さい子に怪我をさせたらどうするのだ」とか、「どうして、大人のくせにそんなこともわからないのだ」などとえらそうに思っていたのだ。それが、自分の子供ができるとさらに加速してしまい、公園嫌いに拍車がかかってしまった。
最近、見かけたのは「野球、キャッチボールなどの球技は禁止します」と大きく書かれた看板の前でキャッチボールをしている親子連れ。こないだ、公園の前を通ったら、そんな親子連れが2組ほどいて、そこに通りがかったおじいさんが「禁止って書いてあるやろがいっ!」と注意して口論になっていた。
そもそも、キャッチボールをしている親子が悪いのだが、その親子の気持ちも分からなくもない。例えば、公園に誰もいないとする。息子がまだ小学校2年生くらい。キャッチボールと言っても必死で投げ合うんじゃなく、軽くボールをやり取りするくらい。それなら、まあいいんじゃない、と彼らが思ったとしても不思議じゃない。
と、そこへ、同じように考えた親子が公園を訪れる。先に来ていた親子は「あ、まずい。キャッチボール禁止だから、やめて帰ろう」と思っていたのだが、次に来た親子の手元を見ると、なんとグローブをつけている。「ああ、なるほど、この人たちも軽いキャッチボールか」ということになり、そのままキャッチボールを続ける。ただ、後から来た親子の息子はもうちょっと大きくて小学校5年生くらい。キャッチボールも、ちょっとばかり「バシッ!」という音がするくらいには威力がある。先に来ていた父親の方は「あれはちょっと本格的な音がしてるなあ」と恐れをなすのだが、自分たちも軽いキャッチボールをしていたので注意することもできない。
そこにルールに厳しいおじいさんがやってきたわけだ。いや、真相は知らんけど。で、おじいさんとしては普段、3歳くらいの孫とよく散歩にくる公園なので、普段から球技をする奴らを苦々しく思っていたのである。しかしまあ普段は、小さな子どうしでゴムまりで遊んでいるのを注意するわけにもいかず、小学生同士のキャッチボールもまあまあと容認してきたのだ。「うちの孫に当たったらどうするんだ!」と思いつつも。
かくして、おじいさんがキャッチボール親子を注意するための機は熟していたのだ。親子連れは親子連れでそれなりに気を遣いながら遊んでいたのだ。しかし、おじいさん、今日は孫を連れていない。先に来ていた親子連れから見ると、孫思いのおじいさんと言うよりもただの口うるさいおじいさんにしか見えない。普段は優しいおじいさんなのに。知らんけど。
ということで、おじいさんはこれまでの我慢もあるので、思いのほかちょっときつめに注意してしまう。親子連れのほうは、確かにルール違反をしていたという後ろめたさもあるからこそ、なんとなく「危険なことはしてないでしょ。小さな子もいないし」と反論してしまう。するとおじいさんは「小さい子がいないんじゃなくて、お前たちみたいなのがいるから、小さい子が来れないんだ」と激高してしまう。
僕はこういうのを見るのもいやだし、それぞれの立場をこうやって勝手に想像してしまうのもいやなのだ。疲れて疲れてしかたがない。子どもたちが小さなころ、公園に連れて行くといつも僕一人だけがぐったりと疲れていたのだがそれはこういう理由があったからなのです。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。
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爽子
どちらにも、それぞれの言い分があるんですよね。
成り行きをどうしても見守ってしまいますよね。
家にばかりいると、どこか広いところに空っぽになりに行きたいです。
まったくひとけのない公園がいいのかというと、それも落ち着きません。
uematsu Post author
爽子さん
そうなんですよね。
誰もいないのも落ち着かないんですよね。
困ったもんです。