風(人間とは・・・)
高校の倫理社会の授業で、「人間とは・・・」という課題に取り組んだことがあります。
全員の出した答えは、プリントになって後日配られました。
様々な定義のなかでひときわ目を引いたのが、同じクラスのTくんの「風」
2~3行にわたって書いているひともいる中、「はっ!」とさせられました。
わたしもその他大勢の17歳と同様、理屈っぽい青臭いことを書き連ねていたのではないかと思います。
忘れてしまったけど…。
あのほぼ予備校のような学校で、授業中わたしは倉橋由美子に没頭し、彼はこそこそナイフで木片を
削り続けていました。
「なにしてるの?」と尋ねたら「リードを削ってるんだ。」と答えてくれました。
オーボエに魅せられて、どうしても音楽の道に進みたいこと。
開業医の父に反対され根競べ中だけど、絶対諦めないこと。
寡黙な彼がうれしそうに教えてくれました。
情熱の注ぎ先を早くに見つけてうらやましいな・・・と思った記憶があります。
多少は尖った少女だった私も平凡な母になり、
一番の懸案事項は晩御飯の献立というような暮らしを送っていた頃
Tくんがオーボエ奏者になったことを風の便りに聞きました。
心の中で、思わずガッツポーズをとり「いつか絶対聴きにいこう!」と決めました。
数年たち、はじめての学年同窓会がどうやらあるらしい・・・と情報がはいり、
オーボエは聴きに行けなかったけれど、また話す機会が来る(^^♪と楽しみにしていた
その数日後、高校の同窓会報が届きました。
先生方の動向のうしろに、訃報掲載欄があり、そこに彼の名前が載っていました。
「すごいね。がんばったね。」と伝えることも永遠にできなくなってしまいました。
人間とは、、、「風」
本の話題で「倉橋」を語るとき、オーボエのリードを削るTくんの姿を思い出します。
わたしに「倉橋」を「あなた、絶対ハマるわよ。」と不敵な笑みを浮かべながら
半ば押し付けるように勧めたのはほかでもない、
倫理社会のうら若き女教師Y先生。(この二人はセットメニュー)
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三枚の「風」は篆書体の「風」を辞書首っ引きで書いてみました。
「Tくん、わたしにいつかオーボエを聞かせてね。」
ゆみるか
せつないけれど、胸に染み入る思い出ですね。こんな積み重ねが今の爽子さんを作っているんですね。
私も時々、高校生の頃のワンシーンを思い出しては噛みしめています。
爽子 Post author
ゆみるかさん🎶
コメントありがとうございます😊
そうなんです。
高校のころの記憶が立ち登るように甦り、反芻することがあります。
洗い物をしてる時、バスに揺られている時、洗濯物を干す手を止めて、空を眺める時。
誰もが、「あの頃」を経て今を生きているんですよね。
もう45年も前のことです。