バルーン棟梁、ふくらみ中。
みなさま、暑中お見舞い申し上げます。梅雨明けして抜けるような夏空が目の前に広がる今日このごろ、心の空模様はいかがでしょうか。わたしのハートはストップモーション、通り過ぎるなんでできないじじょうくみこでございます。

そうはいっても世界はノンストップモーション、ここシマ島も夏の観光トップシーズンを迎えております。とはいえ、コロナがいっこうに収まらない状況ですから、浜辺でちらほらお客さんを見かける程度。いつもなら忙しくて忙しくて毎日ぐったりしている季節に、夏にバイトはまったくなし。不気味なくらいの静けさに、背中ヒンヤリな心持ちでございます。
夏の間に1年分の稼ぎを得る人も多い島の経済が、この先どうなっていくのか。想像するのもおそろしいので、そんなコロナな話でも書こうと思っていたのですが、前回更新してから「大丈夫ですか? 棟梁は帰ってきたんですか??」と、なんだかとっても心配されているようなので、今回はハイパー棟梁の続編をお送りします。

さて、すったもんだあってようやくザビ家のリフォームをお願いできることになった、ハイパー棟梁こと万能工のミナカタさん。突如として姿を消してから2週間後、今度は内地から仲間を引き連れて戻ってまいりました。
依頼は増える一方なのに島の業者がなかなか作業を進めないことに業を煮やして、腕ききの仲間をひっぱってきてスピードアップをはかった、というのが不在の理由だったようです。
だったらひとこと言ってくれれば、と思うのですが、文句をいうヒマもなくワゴン車からイキのいい兄さんがたがドッと下りてきて、
「大人数ですいません!よろしくお願いしますっ!(キラキラ)」

と爽やかな笑顔で言われたら「よろしくなんだわ」と返すしかないのでありました。
敏腕職人コミで「万能工」というならみんな万能じゃね?と思ったりもしたのですが、チーム万能工は風のようにやってきて、またたくまに作業をこなし、ついでに頼んでいない母屋の電気工事までやってくれ、ザビママの「きゅうり持ってけゴーヤ持ってけ」攻撃にも「わあっ、いただきます!(キラキラ)」とそつなく対応したあと、また風のように去っていったのでありました。

翌週からは、いつものようにミナカタ兄弟が通ってくるようになりました。いつものように朝8時すぎにやってきて黙々と作業を進め、夕方になると静かに去っていきます。それでいて「柱の色、ずいぶんきれいになりましたね!」などと声をかけると
「木のアクを抜くんですよ。この技術、日本で2人しかできないんです」
「え、じゃあ棟梁は2人のうちの1人なんですか?」
「いえ、ぼくは2人のうちの1人の弟子です」
「……」
すごいのかすごくないのか全然わかりません。
別の日にはあまりの暑さで全身汗びっしょりになって作業しているので「扇風機持ってきましょうか?」と声をかけると
「大丈夫、いりません。汗かくの、ぼく大好きなんです」
と涼しい顔。そういいながら翌日にはランニングに短パン、ビーサンというラフな格好で颯爽とご出勤されました。

しかも恰好はラフでも、頭だけはがっつりツンツンのキューピーヘア。おまけに、短パンがバルーンスカートみたいに横にふくらんでいて、
「夏は作業着を膝下から切って使っているんですよ」
なるほどなるほど、ニッカポッカを膝のところでカットしたからバルーン感あるのねと納得ですが、ピンクのニッカポッカだからキューピー感増すの巻。まったくどこまでも期待を裏切らないハイパーバルーン棟梁なのでありました。

そうこうするうちに時は流れ、「ビッグマウスか真の匠か、ただのビッグマウスだったらやばいね」などとザビ男とかたずをのんで見守っていた工事も、キッチン、風呂、トイレと水回り設備がセッティングされたあたりでようやく全貌が見えてまいりました。
予算の関係で小ぶりなものしか買えなかったキッチンやお風呂も、壁を白と淡いブルーで統一することで思いのほか広く感じます。これまた予算の関係で2部屋のうち和室はリフォームを断念したのですが、「ぼくなら和室と洋室を違和感ないようにできるので」壁紙と畳を刷新。古い柱も「日本に2人しかできない」匠の技で、ほどよい風合いのナチュラル感に仕上がっていました。
そして小さな縁側は「この空間だけエスニックな感じにしたくて」ここだけダークブラウンの壁紙と、網代風の天井に。

ひとことで言えば、めちゃステキな感じに仕上がってきたのでありました。
「予算はないけど、棟梁の好きにしてくれていいから」というザビ男のムチャぶりに「乗っかっちゃった船なんでねえ、やりますよ~」と笑っていたバルーン棟梁。あなたは本物だった。ビッグマウスとかいってごめん。
ちなみにザビ男が凝りもせず、「ねえねえ棟梁、母屋の柱が腐っているので取り換えようと思うんだけど、どう思う?」と話しかけていたのですが、
「いいんじゃないですかね(ニコ)」
はい終了~~~~。
そんなわけで、わが家の長い長いリフォームもどうにか終わりそうな気配です。先の見えない居候生活に泣きわめいたりもしましたが、いざ終わりが見えてくると寂しい気もしてくるから人間ってわがまま。
いつもいつも崖っぷちで潮風にあたっているわたくしですが、たまにはこんな風に快適な家で過ごせたっていいわよね、アタイがんばったよねご褒美だよね、とワクワクが止まらなくなっていたのですが、離れの工事を毎日じっと見つめていたザビママが、とつぜん言いました。
「ワイが離れで暮らしたい」

なぬーーーーー!!
あまりの急展開に腰が抜けそうな、じじょうくみこでありました…。
それではみなさま、また9月にお会いしましょう。それまでいつもの崖のところでお待ちしています。じじょうくみこでした。
text by じじょうくみこ
illustrated by カピバラ舎
*「崖のところで待ってます。」は毎月第1土曜日更新です。
じじょくみnote始めました。→★
爽子
こんばんは~。
素敵にリフォームできたじゃないですか~~~。
ほっとしました。
お義母さ~ん。。。自由すぎる。
正直やけど、それ、あかんわ。
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
ごめんなさい〜〜〜、コメントのお返事すっぽ抜けました(汗)
今更ですが、コメントありがとうございます❤︎
あのあともちょこちょこ直してもらって、昨日ようやく全ての工事が終わりました!
長かったわ〜〜〜
後日談は改めて書こうと思いますが、まだまだいろいろあります(笑)