ああゴムの時代。夢見る頃を過ぎたとしても。
みなさま、大変ごぶさたしております。1年半ぶりの更新です、じじょうくみこです。
いやあ、1年半なにしてたんですかね、わたし。コロナの1年半ですよ。世界が激変している時間ですよ。その時間がすっぽり抜けていて、抜けすぎて「いつまで崖で待ってればいいんですか」とお叱りを受けました。ホントすみません。
ブランクがありすぎるとネタが渋滞して、何を書いたらいいのかわからなくなる負のスパイラルにハマってしまうので、連鎖を断ち切るためにまずは書いてみようと思います。

わたしは相変わらず外洋の離島、シマ島で元気に暮らしております。この1年半、シマ島では本当にいろんなことがあって、コロナが5類になってすっかり元どおりにもならなくて、非接触している間にいつのまにか知っている人が消え、代わりに知らない人が増え、ときどきなんだか違う島に来たような錯覚に襲われる今日このごろでございます。
そんなこんなですが、この6月でザビ男ことズジョウ・ザビエル氏と結婚して丸8年を迎えました。そう、オバフォーのみなさまに盛大にお祝いしていただいたあの日から8年です。ビックリビックリ。
なにがビックリって、全然「あっという間」じゃなかったってことです。それはもう濃厚で激動の8年間でございました。せっかくの節目なので、改めてシマ島に行く前の連載「崖っぷちほどいい天気」と島民になってすぐの「じじょうくみこのオバサマー」をちろっと読み返したんですが、なんか若かったなあ、必死だったなあ。

独身時代に「結婚って大変よおー!」とさんざん聞かされて、なにがどう大変なのか皆目わからなかったその中身を「なるほど確かにこれは大変だ」と腹落ちしている、そんな8年。
通りで知らない住民に突然話しかけられるたびオドオドしていたのに、今や知らない人に話しかけては「なんで私のこと知ってるんですか」と不審がられる、そんな8年。
毎日のように行っていた大好きな銭湯、今ではおばちゃんたちにつかまるのが面倒くさすぎて行かなくなった、そんな8年。
スーパーに行くと知り合いに会いすぎて、レジまで30分以上かかる、そんな8年。
嵐で船が止まり島から物資が消えても「ああ、風吹いてるもんね」ってくらいでなんとも思わなくなった、そんな8年。
五十路も半ばをすぎて、すっかりどっしり、立派な島のオバちゃんになりました。

なかでも変わったなあと思うのは、天気が読めるようになったことです。読めるというのは言い過ぎですね、天気アプリと天気図を駆使して空の動きをなんとなく判断できるようになった、というレベルです。
シマ島に来始めたときは、天気予報を見て「雨降らないな、島に行けるな」と旅の計画をたてていました。ところがザビ男から「この日は船が来ないからやめておけ」と反対されたり、太陽ピカピカ陽気のシマ島を楽しんでいたら「今すぐ船を予約しろ、これから海が荒れて帰れなくなる」とザビ男に脅されて肝を冷やすこともしょっちゅうでした。
こんなにいい天気なのに、なぜ?とそのときは戸惑うのですが、予測は嘘みたいに的中して「あの船に乗り換えてなかったら1週間島から出れなかった」とゾッとしたことも一度や二度ではありません。世間の天気予報とは全く異なる天気の読み方に「なにそれ島民の超能力なん??」と不思議でしょうがありませんでした。
あれから8年。ついに世界の謎を解き明かしました。
今ではキャッキャ遊んでいる旅行者に「絶対帰りたいなら午後の船に乗ったほうがいいですよ~」と言える人間になりました。8年ってすごい。もうすぐ天気の子ならぬ天気の初老として空に吸い上げられるかもしれません。

そんなこんなで8年という月日は、新参者だったわたしをそれなりの地元民に仕立ててくれるようですが、ちなみにシマ島に来たころなにかとからんできたザビ男の同級生のヨメ2人、ミナミさんとリョウコさん。彼女たちがシマ島ではかなりの要注意人物であることがわかり、わたしは島に来てからずっと
ハブとマングース

に挟まれていたことが判明したわけなのですが、島民になって4年くらいたったころでしょうか、ある日とつぜんリョウコさんに無視されるようになったのです。どこかでバッタリ遭遇しても、スルーされます。リョウコさん、と声をかけても視線すら合いません。そのさまがあまりにナチュラルで「あれ、そういえばわたし透明人間だったっけ」と考えるくらいの存在感のなさなのです。
突然のことに戸惑っていると、隣にいたミナミさんに「くみちゃん、おめでとー」と、これまた突然に褒められました。
「リョウコはいつもああなんだよ。島にきた移住者って、彼女にとってはキラキラした新しいおもちゃなの。新入りには先輩として優位にたてるし、住民には“みんなが知らない人と仲良くしてるアタシすごいでしょ!”ってアピールできるでしょ。それで、相手が島になじんで自分以外の人間関係を作り始めると、ポイって捨てて新しいおもちゃに飛びつくわけ。
つまり、くみちゃんはもうキラキラしてないってことだね」

喜んでいいのかよくわからない、そんな8年です。
せめてなにかキラキラめでたいことないかしらと思い、調べてみることにしました。ほらアレですよ、金婚式とか銀婚式とか、結婚記念を祝う感じのやつ。結婚生活8年はどう呼ばれるかというと
ゴム婚式

なにかのまちがいかもしれないので、念のため確認しましょう。
結婚4年は花婚式。
結婚5年は木婚式。
結婚6年は鉄婚式。
結婚7年は銅婚式。
いっこ飛ばして結婚9年が陶器婚式。
そして、
結婚8年はゴム婚式。

「多少のことでは揺るがない夫婦の絆の強さをゴムに例えた」ということですが、もっとこう、絆の強さを例えられるアイテムがほかにあったのではなかろうか。
別案はないのかと思って調べてみました。
家電器具婚式

「結婚したときに買った家電の買い替え時期だから」という業務連絡すぎるネーミング。世の中には知らないほうが幸せということもあるんだなと思う今日このごろです。
なにはともあれお正月に家の最後のリフォームが終了し、シマ島に来て以来ひたすら島内を転々としてきた借りぐらしも、ついにフィナーレを迎えました。崖っぷち生活、半世紀。わたくしじじょうくみこ、ついに安住の地にたどりついたのではなかろうか??
と思っていたのですが、先日初めて仕事をした雑誌から原稿料が支払われず編集部に問い合わせたところ
「コロナ中に編集長が仏教にのめりこんでしまい、
伝票を残して出家しました」
という連絡が来て、ああ世の中は相変わらず愛おしいほどにとち狂っていて、崖はどこにでもあるのだなと悟りました。

と答えました
五十路の島民じじょうくみこ、相変わらずよくわからない人生を送っておりますので、ぼちぼち復活できるようにがんばります。
それではみなさま、また崖のところでお待ちしています。
ext by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖のところで待ってます。」は不定期更新です。
じじょくみnote(帳面)もぼちぼちやってます→★
あまから
「ゴム婚式て、そんなバカな!」と思って調べたら本当でした。途中の片平なぎささんで死ぬほど笑いました。That’s Dance!に出られた時「なんだかわからないけど、とんでもない人な気がする」と思って、記事を遡って読みまくったのですが、本当に嘘みたいにとんでもなくて、そして今もそうなのが、田舎の地味なオバサン=自分からすると、マジで凄いし面白すぎる!というのが素直な感想です笑。更新気長に待ってます!
じじょうくみこ Post author
>>あまからさま
コメントありがとうございます!調べてくださってうれしいです(^▽^)/
That’s Danceも聴いてくださったとは。お恥ずかしい限りです(汗)
なんですかねー、普通に生活しているのですが、
どうやら巻き込まれ体質のようで、最近はちょっとあきらめてきました。
もう少し更新頻度上げていきたいなーと思っておりますので
またのぞいていただけると嬉しいです♪