Posted on 2014年7月30日 by uematsu
万年筆のジレンマ。
万年筆を使い始めて三十年ほどになる。
中学生の頃に、父親にもらった万年筆を何度か使ってみたことがあるのだが、すぐに詰まるし、インクは詰め替えなくてはならないし、ということですぐに使うのをやめてしまった。
ちゃんと使い始めたのは、ここ十年ほどだろうか。
とにかく万年筆は楽しい。インクを詰める楽しさがあるし、インクの出が悪くなればメンテナンスをしなければいけない。そう、中学生の頃に鬱陶しかったことが逆に全部面白いのである。
しかし、万年筆を使っていて困ることがひとつだけある。誰かの前で万年筆を使っていると、必ず「あ、いい万年筆ですね」という話になる。これはいい。困るのはその後だ。
「ちょっと貸して下さい」
これが怖い。なにしろ、万年筆は、何年も使い続けることによって、自分の書きぐせがペン先に移るのである。書けば書くほど、自分の書きぐせに馴染んでいく。つまりは、書きやすくなる。
ところがこれを他人に貸してしまうと、ペン先に他人の書きぐせが移ることがあるのである。もちろん、柔らかく、力を入れずに紙の上に這わすくらいなら大丈夫。が、ほとんどの人がペン先に力を入れてしまうので、下手をするとガリガリとマンガ家が画を描くときのような音をさせてしまう。こうなると、ペン先が傷んでしまう。
僕はこれまで、自分が大事にしている万年筆を「貸して下さい」と言われて貸したことは二、三度しかない。そのいずれもが、ああ、この人なら大丈夫、という人ばかり。そうでない場合は「書きぐせが移るので」と正直に言って断っている。
自分が使っている万年筆の書き心地の良さは自慢したい。それを知ってもらうには、使ってもらうのが一番。しかし、下手に使われるとペン先が傷んだり妙なくせが付いたりしてしまう。
これが僕にとってはけっこうなジレンマだったのである。最近でこそ、人前でも万年筆を使えるようになったのだけれど、それは、もういい年になって「貸して」と言われても、「ダメです」と言えるようになったからだ。ついこないだまでは、人に隠れて万年筆を使っていたのである。
それはそれで、禁じられた遊びのようで、楽しかったのだけれど。
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
















































































ぶんぶん8
万年筆愛好家です(^^)
分かります(^^)
そういう話を知ってるからか、私が
『いいから、書いてみて』
と気軽に言うと、皆さん驚かれます。
でも、一度だけモンブランのクラシックを貸して後悔したことも^^;
それから現行品に限ってお貸しするようになりました(^^)
皆さん、実際に書くと感激されます。
そしてまた一人、万年筆の虜に(*^o^*)
皆で一緒にペンとインクの沼にはまりましょう(≧∇≦)
nao
こんばんは!
中学の入学祝いって万年筆でした。
確か、「中1時代」か「中1コース」の付録にもあったような気がします。
でも字が下手なので使いこなせなかったなー
uematsuさんの自筆が見たいです。
字の上手な方はうらやましい!!
uematsu Post author
ぶんぶん8さん
心が広いですねえ。
いやもう、万年筆愛好家の鑑です。
少しでもぶんぶん8さんに近づけるように精進します。
uematsu Post author
naoさん
僕はビックリするくらいの悪筆です。
ヨメが大笑いします。
でも、うちのヨメが一度、星新一の直筆原稿を見て驚いてました。
僕の字と星新一の字がホントに同じような字だったそうです。
nao
思わず、「星新一、自筆」でググって画像検索してしまいました。
そっかー、これがuematsuさんそっくりの字なんだw
懐かしい鳥のマークも出てきました。
uematsu Post author
naoさん
お恥ずかしい