いまどき、かじると血が出るようなリンゴはあるのだろうか。
リンゴをかじると歯ぐきから血が出ませんか?
というダイレクトなコマーシャルがかつてあったけれど、いまどきのリンゴは、本当に柔らかくて血なんか出ないだろうと思う。皮をむこうとすると、一瞬、皮が剥がれるような印象を持つことすらあるくらい。
昔のリンゴはもっと硬めで、かじるとシャクっと音がして、確かにそのまんまかじると、時には歯ぐきから血が出るようなことがあった。だけど、いまのリンゴじゃ血なんか出ない。
いつから、リンゴはこんなに柔らかくなったのだろう。いつから、真っ赤なタラコはスーパーから姿を消したのだろう。いつから、アンディ・ウォーホールは、アンディ・ウォーホルと表記されるようになったのだろう。ついでに言えば、マーティン・スコセッシだって、最初はマーティン・スコシージって言われたのに、いつの間にかスコセッシになってしまって、エドバーグはエドベリになったのだった。
そう言えば、町のラーメン屋で、「ラーメンひとつ」と頼むとカウンターの向こうで、「食券お願いします」なんて言われるのもいつまで経っても慣れるもんじゃない。客ひとり、店員ひとり。食券なんてわざわざ買わなくったってと思うけれども、そうもいかないのだろう。事情もわからんではないけれども、この後客もこないんだから、適当にラーメン作って、後で勝手に帳簿付けるわけにはいかんのか。いかないんだろうな。うん。アルバイトみたいだし、そのあたり勝手にするわけにはいかんのだろう。なるほど、すまん。
客が山ほど来るから食券を先に買ってもらう。または、店員がアルバイトばかりで慣れないんで、食券買ってもらって間違いがないようにする。だけど、食券制にすることで、いつまで経ってもアルバイトはアルバイトのままで、接客のプロにならないままでアルバイトを卒業して世の中に巣立っていく。それじゃ本当はアルバイトの意味はない気がするんだけども、まあ、お金を稼げるという意味では立派なアルバイトなんだろうな。うん。そうだな、なるほど、すまん。
だんだん、リンゴの話からは逸れてるけれども、ホントいつの間にこうなったんだろう、という事が多くて混乱する。
仕事にしたって、いつの間にかひとり一人に知識や技術を詰め込むことをやめて、みんなで仕事をやり遂げられればいいや、という感覚になっているのです。と、急に「いるのです」と柔らかい言い回しを使って、反感を買わないようにと言う工夫をしてみたりするのです。
能力は低いけれども、自分に与えられたミッションだけは確実にこなせるという人材をかき集めて、一つの仕事をみんなで寄ってたかって完成させるというやり方がいつの間にか主流になってきた。人が増えた分、無駄な話し合いや無駄なコミュニケーションも増えたけれども、文句を言っちゃいけない。なにしろ、ストレス耐性に強い、というのがいまの世の中を生き抜く最大の武器だと言えるのだから。
しかし、こうなるとストレス耐性だけが強くて、ひとり一人のポテンシャルは低いままで、みんなで高度な仕事をこなせてしまう、という恐ろしい現実が目の前で繰り広げられるようになる。
いやもう、知らない間に、リンゴを食べて血が出ないかと心配している間に、世の中は恐ろしく変化しているんだぞ、なんて憂いていると長生きできないな。いや、逆に鍛えられて最後は笑えるのか。う〜ん、どうなんだ。どっちなんだ。笑えるのか、笑えないのか。歯ぐきから血が出るのか、出ないのか。
とりあえず、明日歯ぐきから血が出ようとも、君は今日リンゴの木を植える、ということで。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
http://www.isana-ad.com/maron/pc/
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
kokomo
この前しっかりとした固めのプリンを求めて市内を走り回りましたが
見つかりませんでした。プリンも「ゆるとろ」が優勢で、いつの間に
こんなことに…と唖然としました。
誰かが「プリンは全て『ゆるとろ』にせよ」と指示しているのでしょうか?
いつの間にか、というのが浦島太郎のようで恐ろしいです。
uematsu Post author
kokomoさん
そうなんです、誰かが指示を出しているんです。
お好み焼きもふわとろにせよ、とか、
人間関係もゆるゆるにせよ、とか。
これは何かの陰謀です。
計略です。
サヴァラン
「固いプリン」に反応。
横からすみません。
KOKOMOさま
わたしも、「固いプリン」を探しています!!
あの、昭和の、
プリン型の「角」がくっきりとした
できれば「ちゃんと苦味のある」カラメルの
あの「プリン」!!!
uematsuさま
やはりこれは誰かの陰謀でしょうか。
りんごも
プリンも
ラーメンも
お寿司も
なんなら
ベネディクト・カンバーバッチも
ひとむかし前の流行だったはずの「安近短」方面へ
知らないうちに片付けられていきそうな予感がします。
そして、人類から「セキツイ」を奪い去った
その陰の仕掛人が、
長い謀略のあとで一人、せせら笑う映像が
見えてしまう気がします。。。
nao
子どもの頃にはラーメンは中華そばでした(笑)
いつの間にやら国鉄はJRとなり、電電公社はNTTになったのです。
そして職場は否応なくパソコンを使わざるを得なくなり
しかも覚えた頃には使用がかわるので
2,30代の方達に何度聞いても覚えられない悲しい50代となりました。
この頃膝を痛めてちょっとネガティブ、すみません(笑)
はしーば
エラが張ってる顔立ちの人、とんとお見かけしません。
「噛まないと脳が退化する」と脅され、硬い牛蒡や煮干しの出汁ガラを食べさせられた昭和の食育文化はどうなっちゃったんでしょうか。
硬いものをせっせと食べなくても、脳の発達との関連性が証明されないとか、何とかでウヤムヤにされてしまったんですかね。
私が一番違和感を感じるのは、カロチン⇨カロテンと表記されるようになったことです。
uematsu Post author
サヴァランさん
僕が一番びっくりしたのは、大阪のお好み焼き屋に行ったときのこと。
そこそこ流行っているお好み焼き屋のチェーンに入ったのですが、
イチオシのメニューが「ふわとろ焼き」みたいな名称の柔らかいお好み焼き。
一度食べたんですが、「なんだこのフニャフニャは!」となってしまいました。
で、普通のお好みはないのか!と探したら、メニューの最後のほうに、
「昔懐かしいお好み焼き」という名前でポツンと記述されているのでした。
ああ、大阪も「セキツイ」抜かれましたね。
uematsu Post author
naoさん
仕事で「じゃあ、職場の仕事風景を撮影させてください」と現場に乗り込むと、
どんな分野のどんな仕事でも、ほとんどがパソコンの画面を見つめていて、
まったく絵にならなくなりました(泣)。
僕も新しいことは一切覚えられません(笑)
uematsu Post author
はしーばさん
そう言えば、最近の子どもはあごが小さくて
歯がちゃんと生えてこなかったりするらしいですね。
そうですか、カロチンはいつのまにか、カロテンですか。
プーチンもプーテンと呼ばれたり、
逆に、フーテンはフーチンになったりするのかもしれません。