胡散臭さの二人三脚。
今回は、映画について。
森達也監督の『FAKE』を見る。佐村河内守のゴーストライター事件に焦点をあてたドキュメンタリー作品だ。本当に耳は聞こえないのか。作曲はできるのか。佐村河内守に対して世間が持つ疑問を一つ一つ払拭していく。
払拭はしていくのだが、どうしても佐村河内守その人に対する「胡散臭さ」のようなものは消えない。というよりも、ちゃんと答えれば答えるほど、どこか抗えないところで、胡散臭さが立ち上ってくる。それがこのドキュメンタリーのおもしろさの核だと思う。
そして、作者である森達也は言うのだ。「僕は佐村河内さんだけを撮りたかったのではなく、奥さんと2人のところを撮りたかったんだと思う」と。
佐村河内守の妻は、森やメディアの取材に同席して、手話で仲介役を担っている。そして、佐村河内を信じて寄り添う(ように見える)。この妻の存在が、この作品を大きくパワーアップさせている。彼女なしでは成立しないくらいだ。
そのことを森はよくわかっているのだ。そして、佐村河内に寄り添う妻に、今度は森が寄り添って、その胡散臭さの本質に迫ろうとする。
ドキュメンタリーって、結局はこの胡散臭さにすべてがかかっているのではないかと思う。その意味で、この作品はおもしろい。
結局、佐村河内守という人は一人では生きていけない人なんだと思う。新垣氏と二人で曲を作り、妻と二人で暮らし、森と二人で真実はここにあると叫ぶ。そんな弱く胡散臭い佐村河内を楽しみながら、それを楽しんでいる自分をちょっとばかりゾッとしながら振り返る映画なんだと思う。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
kokomo
ドキュメンタリーなのに「FAKE」というところからして、一体真実って何?
と考えさせられるようなタイトルで、この映画は気になっていました。
もっとも森さんご本人は、インタビューで「この映画はドキュメンタリーでは
ない」、とおっしゃっているようですが。
この映画は是非スクリーンで見たい、と思っていたのですが、
在住の県内どころか近隣地域にも公開予定の映画館はないようです。
ああ、シネコンの波が恨めしい...
uematsu Post author
kokomoさん
そのあたり、やっぱり映画を見ていただくしかないですねえ。でも、面白いことには変わりありません。
ぜひ、ご覧になれますように
カリーナ
植松さん
カリーナです。今見てきました。めちゃめちゃ面白かった!
もう、たくさんたくさん話したいです。
豆乳、ケーキ、猫、マンションの意外な端正さ、
テレビ局写真のサラリーマン感、海外メディアの質問の切れ味などなど。。。
もうたくさん!
佐村河内さんと奥さんの間で言語化されているのか否かわからないけど
きっとあるであろう「嘘」と、その上に築かれたおそらくは深い愛情。
・・・と言うようなことを思うと、愛は、うさん臭さの上にあるのでしょうか。
共犯こそが愛??
そして、ドキュメンタリー作家を見るたびに思うのですが、
あえてオーラを消して人の懐に入る、人たらし感。
話が変わりますが、今年に入ってクロードランズマンの三部作を見たんですが、
壮絶なトラウマに迫るドキュメンタリー作家の罪を内包した使命感と創造性。
いやあ、いろいろ考えましたー。
uematsu Post author
カリーナさん
結局、逡巡した後に、まあ、どうでもいいや、となってしまうのですが、その大元は、監督の胡散臭さのせいだと個人的には思います。はい。
プリ子
先週見ました!
一緒に行った夫と感想が全然違って、
植松さんの感想も全然私は思いもしなかったことで、
でもどれもいわれてみれば「そうかー」と思うんです。
いろんなことを語れる映画だなあと思いました。
uematsu Post author
プリ子さん
普通のドキュメンタリーとしても観れるし、2人の策士の映画としても観れる。胡散臭さのショーケースとしての面白さもある。
本来映画って、観客に委ねる部分が多い方が面白くなるはずなので、そういう意味では、オーソドックスな映画なのかもしれませんね。
ただ、対象があの方なのと、撮ってる方があの方なので、妙に振り回されますよね。
中島
見て来ました。平日なのに結構な入りでしたよ。
序盤は退屈で寝てしまいましたが、
覚醒してからは、とにかく奥さんが気になりました。
佐村河内さんに寄り添いながら心は一歩ひいたところにあるみたいな。
ラストにそうくるかと、ぐるぐる考えさせられる映画ですね。
監督の狙いにみごとはめられた感じです。
猫のカットが印象的でもありました。
uematsu Post author
中島さん。
そうなんです、奥さんがキモですね、この映画。
ほんと、すべてが胡散臭い(笑)