11月22日はカレー記念日

カレー記念日

落ちてゆく 枯葉のごとし 抜け毛かな

11月22日はカレー記念日

Jane

投稿はこちら

カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
五七五七七形式で、下の句は「○月○日はカレー記念日」なので
上の句の五七五だけ送ってね!

日付は掲載日に変えさせていただきます。

みんなのカレー短歌 一覧 >>

50代、男のメガネは

新宿のコーヒーショップで、小さな嘘を聞く。

いつだったか、新宿に用事があり、歩き疲れた僕はコーヒーショップに入った。ルノアールだったかなんだったか、店内は広かったのだが、それなりに混んでいて、両隣を人に挟まれた二人席に通された。

 

右隣は黙々とパソコンのキーを叩くおじさんで、画面を見るとエクセルの書類が開かれている。左隣は手帳を見ながら電話をかけ続けるおばさんで、その電話は終わる気配がない。

 

これはまた落ち着かない席に案内されたものだと、最初から諦めムードで僕はアイスコーヒーを頼んだ。冬場だったはずだが、店内が暖かいのと、手早くアイスコーヒーを飲んでとっとと出て行こうと思ったのだった。

 

スマホの画面を眺めて、メールをチェックして、予定表を確かめているうちにアイスコーヒーはやってきて、僕はそれをあっと言うまに飲み干してしまう。

 

その間も、右側からはカチカチというキーボードの音。左側からはおばさんの電話の声が響いている。滞在時間、わずか10分ほどで席を立とうとしたその時、隣のおばさんが言ったのだ。

 

「いま?いま赤坂なのよ」

 

いや、違う。ここは新宿だ。おばさん、間違ってるよ。と思ったのだが、おばさんはこう続けたのだった。

 

「そうなの。新宿にはこのあと寄るんだけど、その時間にはあなたもういないでしょ?」

 

うん?ということは、いま電話をしている相手と会いたくなくて嘘を言っているわけだね、と私は思う。

 

「あなた、いま新宿のどこにいるの?西武線の新宿駅の近くなの」

 

おばさん、やばいよ。この店のすぐ近くにいるよ。

 

「で、これからどちらへ行かれるの?」

 

おばさん、電話相手がどこに行くか聞いて、鉢合わせしないように用心しているんだな。

 

「はい、じゃあ。そういうことで。お元気で」

 

とても上品に電話を切ったおばさんは、残っていたコーヒーを飲み干して、席を立った。僕の座っていた席からは見えないのだが、きっとおばさんは電話で聞き出した電話相手の居場所やルートを絶妙に外す方向に歩いて行ったのだろう。

 

そして、おばさんがそこまでして鉢合わせしたくない相手とはどんな相手だろうと想像してみた。もちろん、僕にもなるべくなら会いたくない相手はいる。いるけれど、相手を避けて避けて歩くほどに、その相手と鉢合わせしてしまう気がして怖い。おばさんと同じシチュエーションで電話をしていたとしたら、途中で怖じけずいて、相手が何も言っていないのに、「ごめんなさい。いま本当は新宿にいるんです。しかも、西部新宿線の新宿駅からすぐ近くのルノアールにいます」と勝手に白状してしてしまったに違いない。

 

この間、うちの事務所のデザイナーのヤブウチさんと話していて、「どうせばれるかもしれない嘘を吐く人ってどういう人なんだろう」という話題になったことを思い出した。その時の結論は「子どもの頃に、嘘を吐いたとき、徹底的に怒られなかった人じゃないだろうか?」だった。

 

僕は思うのだけれど、子どもの頃、いろんなことで親や近所の人に怒られた覚えがあるのだけれど、いたずらや口答えはそれほどでもなかった気がする。いちばん怒られたのは、嘘を吐くことだった。

 

うちの場合は嘘を吐くと、どんな小さな嘘でも必ず見破られ、最後に平手でぶたれた。ひどいときには足蹴にされたりもした。いまはそこまでされるのだろうか。でも、そうされたおかげで、どうせ嘘はばれる、という気持ちが強く心の中に残っているのだと思う。

 

三つ子の魂百までというけれど、恐ろしいもんだ。子どもの頃、嘘を吐いたことであれだけ怒られた、という気持ちがあるだけで、いまだに嘘を吐くことができない。いやまあ、小さな嘘は吐くかもしれないけどさ。

 

さて、あのおばさん、子どもの頃、嘘を吐いて怒られることなんて、なかったんだろうか。というか、あのおばさんが吐いた位の嘘はたいしたもんじゃないのだろうか。僕が「いやまあ、小さな嘘は」という程度のもんだったんだろうか。それは人それぞれだろうから、判断は難しいけれど、もし、僕があのおばさんの知り合いだったら、あんな小さな嘘もけっこうショックだったかもしれないなとは思う。

 

というわけで、赤の他人の小さな嘘にも、ほんのわずかに揺れ動く私の心、というお話でした。

 


 

植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→

「ネコのマロン」販売サイト 
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。

そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
http://www.isana-ad.com/maron/pc/

植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。

★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。


50代、男のメガネは 記事一覧へ


コメント、ありがとー!

  • アバター画像

    sasa

    のっけから重い話ですみませんが、「嘘」が引き金になって離婚します。
    離婚自体は長年の色々なものの積み重ねの結果ですが、話し合いの中で許せなかったのが
    二重、三重につかれていた嘘、そして長年に渡って空気を吸うようにつかれ続けてきた嘘です。
    嘘をつかれていたことが何よりもショックだった、少なくとも私は今まで嘘はなかったと言うと、「嘘をつかなくてもすむ人間はいいよな」と言われました。

    嘘をつき続ける人は、子供のころに嘘をついて徹底的に怒られなかった人、というのは当たっているのではないかと思います。人を幸せにするような「嘘」もあるかもしれない。でも、喫茶店にいた方も、主人も、自分が同じように嘘をつかれていたことがわかったらどうなんだろう、と今回の記事を読んで思ってしまいました。

  • アバター画像

    ジャスミン

    以前勤めていた お店の店主(30代男)が嘘つきでしたね。ちなみに店主の奥様が
    彼の姉が「ばれる嘘を平気でつく」と愚痴ってました。

    店主の生い立ちを色々聞いたところによると
    父親が昔ながらの暴力頑固おやじで、母親と子供たちはとにかく
    父親に怒られない様に、小さな嘘を沢山ついて色々と誤魔化して
    育ったようです。

    だから 当たり前の様に面倒なことになるなら嘘を付くって感じでしたが
    すぐばれるような、別にホントの事言えばいいのに的な事も多々あり
    結局、信用できませんでしたね。

    私自身のウソは若い頃はアッシー君とかメッシー君に付いた可愛い嘘かな
    そもそも嘘をつく位なら 余計なことは言わないことですね。

  • アバター画像

    uematsu Post author

    sasaさん
    「三つの真実に勝る、一つのきれいな嘘」という話もあるので、本当にケースバイケースだと思うんですが、
    結局、その根底に思いやりがあるかどうか、愛があるかどうか、ということのような気がします。
    そのあたりを忘れずに生きていきたいですね。

  • アバター画像

    uematsu Post author

    ジャスミンさん
    なんとなく、その場の空気で「うん、知ってるよ」なんて嘘を吐いてしまい、
    そこでその話題が終わると思っていたのに、延々と続き、
    嘘を吐き続けるしかなくなってしまった、という経験があります。
    確か、小学生の頃。あれ以来、無理に嘘をつくと、えらいことになる、
    と学習したような気がします。
    したのかな。したと思う。きっとしたと思いたい(笑)。

  • アバター画像

    nao

    こんばんは

    uematsuさんはルノアールでいろんな人に出会うのですね。
    小さな嘘は私もつきます。
    相手が余計な気を使いそうな時
    絶対ばれないであろう時
    ちょっと面倒くさいなという時
    小さな嘘で楽してしまう。
    自分に対しては「方便」と言い訳します。

    子どもの頃の親の対応は影響するでしょうね。
    4,5歳の時、近所のお店でガムを盗んだ私に
    母は包丁を持って「手を出しなさい」と言いました。
    小さな嘘はつきますが、万引きなどには無縁だったのは
    母のおかげかもしれません(笑)

  • アバター画像

    uematsu Post author

    naoさん
    ルノアールは本当に話題の宝庫です(笑)。
    それにしても、いいお母様ですね。
    僕も子供の頃、嘘をつくと本気で家の中から通りに投げ飛ばされたり、包丁で「お前を殺して、俺も死ぬ」と言われたこともありました。
    あのときは「怖い」思っただけですが、今思うと親も必死だったんだと思います。

  • アバター画像

    midori

    私思うにルノアールの人は小さいウソをついて幼い頃から生き延びて来た。uematsuさんはウソをつかない事で、反対に言うとウソをついたら生きれなかった環境で生き延びて来た、という事だと思います。
    uematsuさんが小さなウソでもどうしても許せないのはウソをついたら抹消される⁉︎という思いがあるからじゃないですか?
    ルノアールの人はその反対?大げさ⁇

    ウソをつく事を肯定するつもりはないのですが人それぞれいろんな方法で人生くぐり抜けてると感じた訳です。

  • アバター画像

    uematsu Post author

    midoriさん
    そうですね。嘘をつかないと切り抜けられないことだってあるだろうし、嘘がきっかけで追い詰められることもあるし。みんな、いろんな立場で、いろんな具合に生き延びて来たんだなあ、と思います。
    僕は小さな嘘を許せないというのではなくて、次から次に小さな嘘を繰り出せない程度に、嘘に対する抵抗がある、という感じでしょうか。
    次々と平気で嘘をつける、というか、ついてしまう、という人もいますよね。
    それを羨ましいとも思わないし、嘘をつくな!とも思わないんです。
    人っていろいろだなあ、面白いなあ、と思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。また、コメントは承認制となっています。掲載まで少々お待ちください。


コレも読んでみて!おすすめ記事

昭和乙女研究所

映画の思い出vol.1

カレー記念日 今週のおかわり!

お出かけに 欲しいのお洒落な シルバーカー

60代、男はゆっくりご乱心

ダンドリくん

四十路犬バカ日和

ワンオペ生活の大いなるルーティン化

OIRAKUのアニメ

第110回 ONE PIECE FAN LETTER

今週の「どうする?Over40」

「まとまった形で」「時系列で」「思いきり」だれかに話すという自己救済法。

黒ヤギ通信

来年の干支

山あり谷あり再婚ライフ

介護の日は頑固の日?

ゾロメ女の逆襲

【月刊★切実本屋】VOL.87 かつての竹中直人の芸風の本

ミカスの今日の料理 昨日の料理

ちゃんと楽しそうに:豚なんこつの甘辛煮

かわいいちゃん

大ウサギ

夫亡き日々を生きる

カリーナからゆみるさんへ 2023年5月10日

絵手紙オーライ!

歌を書いてみたくて。。。

母を葬る

(16)一枚の絵

出前チチカカ湖

第201回 最近の宗旨替え

なんかすごい。

両親がきた

いろんな言葉

That’s Dance!文字起こし 第6回(episode16) やっかみかもしれませんが‥番外編も兼ねて

いどばた。

凹むこと最近ありましたか?

じじょうくみこの崖のところで待ってます

はなやぐお盆、わたしは墓へとタックルした。

ただいま閉活中

お守りが無くなったら

50代、男のメガネは

『レジェンド&バタフライ』で絶望の淵に立つ。

おしゃれ会議室 ねえ、どうしてる?

人生は引き算である

日々是LOVE古着

(終)これからも。これからは。

これ、買った!

くっつかないしゃもじをもう一度買った!

ワクワクしたら着てみよう

最近思うことをとりとめもなく書いてみた♡

わたしをライブに連れてって♪

コンサートwithコロナ

これ、入るかしら?

行き当たりばったりで失礼します

KEIKOのでこぼこな日常

巣ごもりしてたらこんな買い物を…

あの頃、アーカイブ

【エピソード37】最終回記念、私たちのクリスマス!

フォルモサで介護

私が負けるわけがない

お悩み相談!出前チチカカ湖

【File No.41】 私って多重人格!?

ラジオブースから愛をこめて

ノベルティグッズ

着まわせ!れこコレ

冬とウェディングと後れ毛と

このマンガがなんかすごい。

第15回(最終回):マンガよ永遠なれ!

夫婦というレッスン

津端英子さんの一筋縄でいかない個性と行動力がすごい著書「キラリと、おしゃれ」

ハレの日・ケの日・キモノの日

暑くじめじめな7月

眉毛に取り組む。

総集編!眉毛ケアグッズ&お手入れ用品のご紹介

さすらいの旅人ゆりの帰国&奮闘日記

グアテマラ。そこで見た不思議な光景と懐かしい味

新春企画 輝く!カレー記念日大賞2017

輝く!カレー記念日大賞2017

≪往復書簡≫SEX and the AGE 

「女性の健康を守り、5歳若くなる抗加齢医療」だって。ボーっとしてたら、すごいことになってるね。

最近、映画見た?

第12回 「海よりもまだ深く」

Over40からの専門学校 略して「オバ専」

【オバ専インタビュー】今まで知らなかった「責任感」も含めて、人生が大きく変わりました。

じじょうくみこのオバサマー

四十九歳の春だから。

華麗なるヅカトーク

第8回 型、色、数! 嫌なことがあったら、また観に来る!

サヴァランのやさぐれ中すday ♪

in her SHOES ~ おばばは何を考えて? #8

器屋さんのふだん器

ふだん器-38  飛びかんな

2016 みんなのこれ欲しい!

サヴァランの「これ、欲しい!」。

2015 みんなのこれ買った!

【じじょうくみこ】低反発リクライニングソファ、買った!

ブログの言葉

「別冊 どうする・・・」はこんなことを大事にします。(過去記事より転載)

今日のこていれ

「今日のこていれ」最終回。1年間のご愛読に感謝を込めて。

崖っぷちほどいい天気

崖っぷちより愛をこめて〜最終回はカピバラとともに。

アラフ ォー疑惑女子

「もったいないお化け」の世代間連鎖

とみちっちの単身ベトナム&中国

ベトナムって、ハノイって、どう?

晴れ、時々やさぐれ日記

ああ、感謝。巳年と午年のあいだ。

中島のおとぼけ七五調

中島。の気ままに更新「おとぼけ七五調」12

ムーチョの人生相談「ほぐしてハッケン!」

【主夫ムーチョの相談】娘がご飯を食べません・・・。

ミラノまんま見~や!

連載最終回!「駐妻のここだけの話」にしようかと思ったが…災難に遭う!

ウェブデザイナーとの対談

大きな旗は振れないけど、小旗はパタパタと振れるだけ振っていこうと思ってます。

「最高の離婚」ファントーク

<対談「最高の離婚」最終回>ホームから電車に乗ってしまってキスして・・・ロマンチックでしたね。

スパコレ

美味しい缶詰を教えて!

2014 新春企画

どうする?Over 40 新春企画「物欲俗欲福笑い」♪( メンバー編 )

フォルモサ(台湾)の女

あずみの台湾レポート「やっぱり紅が好き!フォルモサの女たち」(13)〜不景気顔卒業します

ゾロメ女の図書館小説

帰って来たゾロメ女の逆襲 場外乱闘編 連載図書館ゴロ合わせ小説  『ライ麦&博 完結編』 後編

青蓮の「マサラをちょいと」

青蓮の「マサラをちょいと~人生にもスパイスを効かせて~ VOL.12」

Tomi*さんの最適解

「Tomi*さんの最適解。 ・・・白髪とコムデギャルソンとヤフオクと」  マインド編②

YUKKEの「今日もラテンステップで♪」

YUKKEの今日もラテンステップで ~VOL.13

11月22日はカレー記念日

カレー記念日

落ちてゆく 枯葉のごとし 抜け毛かな

11月22日はカレー記念日

Jane

投稿はこちら

カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
五七五七七形式で、下の句は「○月○日はカレー記念日」なので
上の句の五七五だけ送ってね!

日付は掲載日に変えさせていただきます。

みんなのカレー短歌 一覧 >>

よもじ猫

臭気平気

猫No.72  by つまみ

猫大表示&投稿詳細はこちら!

臭気平気

猫No.72  by つまみ

よもじ猫とは…

全世界初!?四文字熟語と猫のコラボ!

「よんもじ」と猫がペアになって、ランダムに登場します。
ふだん着の猫の一瞬を楽しむもよし、よんもじをおみくじ代わりに心に刻むもよし。
猫が好きな人も、そーでもない人も、よもじ猫の掛け軸からタイム&ライフトリップして、ときどき世界を猫目線で眺めてみませんか。

みなさんの猫画像の投稿をお待ちしています。

投稿はこちらからどうぞ

カイゴ・デトックス 特設ページができました

Member's Twitter


  • カリーナのBILOGはこちら!「ともに生きる。

  • ZOOMでプライベートレッスン、リモート英会話AQUA
  • BLOG版 ウチの失語くん
  • 植松 眞人さんの本がでました♪「いまからでも楽しい数学―先生と数学嫌いの生徒、35年後の補習授業」
  • 「出前チチカカ湖」連載中 まゆぽさんの会社「シリトリア」

Page up