食券を買うむなしさ。
食券を買う店ってありますよね。ラーメン屋さんとか、牛丼屋さんとか。ま、いろんな店がありますが、食券を買うというだけで店に入るのを止めてしまう。
もちろん、食券買わせるくらいなら、店員が注文聞けよ、という気持ちはある。でも、店員が注文を聞いてくれない、というだけで食券を毛嫌いしているわけではない。
一番の原因は、食券を買うのが苦手だということだ。
たとえば、なかなかに評判のいいラーメン屋があったとする。店構えもいいし、いい香りもする。こりゃいいぞとウキウキしながら店に入る。「いしゃっしゃいませ」という威勢のいいかけ声が聞こえてくる。よし、今日はうまいラーメンが食えそうだ!と思った瞬間に、食券の券売機が視界に入って、僕はうなだれるのである。
しょ、しょ、食券か…。としばらくの間、券売機の立ち姿をぼんやりと見つめて立ち尽くすのである。
でも、仕方がない。ここで食券を買わなければ、ラーメンにありつけないのだ。いかにも慣れているふうで、財布を取り出し、千円札を滑り込ませる。たくさん並んだボタンの中から自分が好きなラーメンを選ぼうと思うのだが、どれが自分の好きなラーメンなのかなかなかわからない。その時、たくさんのボタンの一つに、小さな吹き出しのような張り紙がしてあり、「おすすめ!」とか書いてある。よし、これか、と思い、ボタンを押そうとすると、その横に、これまた「おすすめ!」という張り紙を見つけて、そっちの方がうまいのか、と迷ってしまう。迷っていると、そのさらに横に「セットがお得」とセットメニューが紹介されている。そして、紹介されているセットに、自分が選ぼうと思っていたラーメンが組み込まれている。ああ、それなら、セットにするか、と思うのだが、白飯はいらないんだよなあ。とあれこれ逡巡する。
そんなときに、次の客が来るのだ。そして、そんな時の客は必ずと言っていいほど、慣れているのだ。もう何を買うのかはっきりとしている。いや、何を買うのかはわからないが、何を買うのかはっきりしているような面をしていやがる。そんな常連感を漂わせた客が後ろで待っていたら、落ち着いて選んでいられない。いつも僕はここで慌てふためいて、目につく「おすすめ!」の中から適当に一つを選んで押してしまうのだ。
正直に告白するけれど、僕はこの手の食券の店で満足に自分の好きなものを注文できたためしがない。
時々、迷っていると、奥からおばさんが「迷ってるなら、醤油ラーメンセットがいいと思うよ」なんて言ってくれるお店がたまにある。たまにあるけど、ほとんどない。ほとんどないから、僕はいつも迷いに迷ったあげく、適当におすすめを選んでしまう。そして、どうせ選んでしまうなら、券売機に書かれた「おすすめ!」という文字よりも、おばさんの「いいと思うよ」という言葉で選びたいと思うのである。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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爽子
こんにちは~。
告知をしてすぐにうかがいました。
食券の券売機、むずかしいですよね。
後ろに人の行列なんかがあれば、冷や汗ものです。
買うメニューを決めていても、千円札を何度入れても「ペロリ」と吐き出されてしまって、泣きそうになりました。
年末の「ひらパー」の食堂で。です。
5000円札も使えず。券売機の前に鞄を置いたまま、横の窓口のおばさんに
両替をお願いしました。
両替した1000円札は認識しました。
まさか、偽札でもあるまいし。
後ろの人に頭下げまくったのは言うまでもありません。
uematsu Post author
爽子さん
千円札が入らない、というのもありますね。
別にしめっているわけでも、くしゃくしゃなわけでもないのに、
なぜか、不機嫌そうに吐き出しやがる。
でも、あれですよね。
店のおばさんも両替してくれるくらいなら、
直接、注文を聞いてくれればいいのに、という気もします。
まあ、それはそれで、売上の管理とかがむずかしくなるのか、
なんて考え出すと、またまたややこしくなるんですよね。