映画『ハッピーエンド』を観て。
ミヒャエル・ハネケ監督の新作『ハッピーエンド』はとても面白い。妙に面白い。東京ではまだ今週くらいは上映していると思うので、都合が合う方はぜひ観ていただきたい。
主演は最近、これまた妙に売れっ子なイザベル・ユペール。裕福な家庭なのだけれど、そこに忍び込むそれぞれが持つ秘密、過去、事件、癖…。そんな事情が絡み合う、というのはよくある話。よくある話なのだけれど、ミヒャエル・ハネケのすごいところは、それらが必要以上に関係性を強調されることなく、放置されている点だと思う。
この手のストーリー展開によくある手法だが、最初に、それぞれの事情が語られる。それがやがて人がたくさん集まるパーティ会場で破綻を迎える、ということになるのだが、決して何も解決しないし、片が付くこともない。そんなそれぞれの関係性の希薄さと、それでいて互いの性癖までを知ってしまっているところが、現代的であり、なんとなくSNSに代表されるネット社会の気持ち悪さを象徴している。
この作品でも、SNS、チャット、動画投稿などが効果的に使用されている。されているけれど、いかにも「現代的でしょ?」という押しつけがましさがなく、作品は淡々と進行していくところがとてもいい。
主人公の年老いた父親と、弟が前妻との間にもうけた13歳の姪っ子が作品のキーパーソンとなるのだが、この二人の気持ちの距離感が、作品のダイナミズムとなるのである。
物語の最初に、年老いた父親が13歳の少女に感じる違和感。そして、ラスト近く、今度は少女が老人の存在に、心を揺さぶられる描写。その見事さが、この作品を成立させているのだとおもう。
しかし、巧いと思う。老人と少女という、「死」というものをもっとも身近に感じている二人。しかも、この二人が死というものに対して抱いている感覚は真逆とも言えるほど遠い。にも関わらず、二人は「死」というものを中心に結びついていき、たがいにわかり合おうとかいうことではなく、たがいにその存在を認め合い、映画は終わる。
この作品、確かに死をテーマにしているのだが、作品のトーンとしてはとても明るいし、コミカルである。それに、直接的に死をイメージするような場面もない。にも関わらずというところがミヒャエル・ハネケ監督のすごいところだと思う。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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kokomo
ミヒャエル・ハネケの作品は見終わる度に(というほど見ていませんが)ザワザワして、あまりのザワザワ具合に次は見ない!と思うけれど、必ず見てしまいます。新作のタイトルは「ハッピーエンド」ですか。きっと一筋縄ではいかない「ハッピーエンド」なのでしょうね。
今作も我が家の近辺では上映館はないようです。またDVDが出るまで待つかなー。悩ましいです。
uematsu Post author
kokomoさん
おっしゃるとおり、一筋縄ではいかないハッピーエンドですね(笑)。
でも、見終わったあと「じゃあ、なんとタイトルを付ければよかったんだ」と考えると、
「ハッピーエンド」がいちばんしっくりくるタイトルだったりするから、
ミヒャエル・ハネケは面白いんですよね。
ぜひ、見てください。で、みたら感想を教えてください。