大人の、と書いてある。
スターバックスに行くと、「大人のフラペチーノはじまる」と書いてあった。コンビニに行くと「大人のプリン」と書いてあったり、こないだなんてガリガリ君にまで「大人なガリガリ君」とちょっとした違いはあるけれど書いてあって、つまりは大人が流行の様相なのである。
ここでいう大人ってなんだ、と思うのだけれど、まあ、これはつまり、本来誰もが食せるはずのフラペチーノやプリンやガリガリ君を大人扱いすることで、甘いものが大好きだと元々言われている若い女子や子どもたちではない層まで取り込もうということだ。いわば、広告的な戦略である。
そして、実際に味としては「甘いだけじゃないのよ」とか「苦みがあるのよ」的なアプローチが施され、ちょっとエスプレッソが多い、とか、果実が多いとか、生乳が多いという贅沢さが加味されている。
贅沢で苦み走った感覚。それが大人なのさ、ということである。
もちろん、そんな「大人!」と大書きされた破廉恥なものを「みて、これ、やばくないっ!」と喜んで食するのは主に貪欲な若年層だったりするのだけれど、普段、フラペチーノやガリガリ君に興味のなかった大人たちのなかにも、一定層、「大人」ものに手を出す人たちはいる。
いったいそれはどんな奴らだ…。それは僕である。僕はこの手のものに、まさしく手を出してしまう。「なにが大人だ」と言いつつ、現にいまも「大人のフラペチーノ」と喧伝されている「エスプレッソアフォガード・フラペチーノ」を飲むというか食べている。確かにうまい。いつものフラペチーノよりもちょっと苦み走っている。人で言うなら、高倉健だったりするのかと一瞬思ったが、高倉健ほど渋すぎる味ではない。甘いのには間違いないのだ。煙草をくゆらせるほど、苦いだけじゃなく、昔のインスタントコーヒーに粉ミルクと砂糖をたっぷり入れたような味をしている。
つまり、それが今の大人なのだ。おっさんが二人集まって、コーヒー飲むときだって「おい、あのスイーツうまそうだぜ」なんて言いながら、顔をつきあわせてケーキなんて食べたりする。スーツ姿のサラリーマンがプレミアムなソフトクリームをなめなめしながらオフィス街を歩いていたりする。甘くて苦い。そんな大人がいっぱいのいまの日本で、「大人の」と大書きされた商品群は、中途半端な贅沢さと、中途半端な苦さと、中途半端な甘さを併せ持つことで、なんとなく様になっている。
この様になっている感じが、とても心地よく思えたり、危うく思えたりする。やっぱり大人たる者、大人と大書きされた物品に手を出してはいけないのだ。きっと。昔話のつづらはやっぱり小さい方を選ばなければいけないし、自分からおにぎりを転がしてはいけないのだ。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
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クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
つまみ
uematsuさん!
ややや。
あ、この場合は、いや~ん!でしょうか。
Twitterの公式アカウントの告知を見てすっ飛んできました。
わたし、今月の「やっかみかもしれませんが…」は、まさにこの「大人の」問題(?)について書こうとひそかに思っていたのですよ。
先、越された(^O^)
最初に「大人の」で、商売上手!と思ったのは、永谷園の「おとなのふりかけ」でした。
それまでは、おとなが大手を振ってかけられるふりかけのイメージは、ごま塩とゆかり、ぐらいだった気がします。
そして、昨今、この枕詞で、消費者の心をくすぐるものが頻出し、特になんとも思ってこなかったのですが、女性ファッション業界に、「大人のおしゃれ」的文言がしょっちゅう登場するようになり、女性誌『大人のおしゃれ手帖』を見て、いつのまにか「大人」は「中高年」の言い換えになったのだなあとしみじみしていたところだったのでした。
中年のフラペチーノ、オジサンオバサンのプリン、初老のおしゃれ手帖…ジョウトウじゃないっ!?
uematsu Post author
つまみさん
それはすみません。
なんか温めるわけでもなく、なんとなく書き始めてしまったので、
きっとつまみさんが書いた方が面白いと思うので、ぜひ書いてください。
でもあれですね「大人の」はまだ広告的な戦略として、
受けいれやすい感じがします。
ほら、一時大流行した「俺の」がホントに苦手で。
「俺のフレンチ」とか言われると、「じゃあ、僕のフレンチはないのか」と言いたくなるし。
あ、関係ないか(笑)
ミカス
横から申し訳ありません。
昔、そこそこのイタリアンでコースを頼んだら、『彼の胃袋ナントカソースを添えて』って肉料理が出てきました。
多分トリッパだったと思うのですが。
友人と「一体誰の胃袋だよ?!」って言いながら恐る恐る食べました。
「大人の」「俺の」で思い出しちゃったので脇から入り込みんじゃいました。それだけです。
ご勘弁を。
uematsu Post author
ミカスさん
「彼の」はすごいですね。
しかも、臓器!
「彼」というのは「牛」という単語が男性名詞で、
現地の言葉を直訳するとそうなるとか、
そういうことなんですかね。
それにしても、インパクト強っ!