イージー・ライダーを見る。
若い頃に接した時には、それほど感動もしなかった映画や小説に、そこそこ年を重ねてから再会すると、妙に感動してしまうことがある。
先日、仕事に絡んで『イージー・ライダー』を見る機会があった。初めて見たのは確か高校生の頃。テレビで放送しているのを見た記憶がある。いっぱしの映画ファンを気取っていたので、友人に「今晩、アメリカン・ニューシネマの傑作、『イージー・ライダー』の放送があるらしいぞ」と吹聴していた気がする。
そして、小さな18インチくらいのテレビの前で目を皿のようにして僕は見ていたのだ。アメリカン・ニューシネマの傑作『イージー・ライダー』を。果たして、結果は……わからなかった。いや、ストーリーはなんとなくわかったし、バイクで旅をするロードムービーだということはわかった。わかったけれど、いったいこれのどこが傑作なのかがわからなかった。
唐突にジャック・ニコルソンが殺され、ラストも衝撃的すぎて「えっ」と声を上げてしまったほどだった。でも、それにしても、これのどこが傑作なのだろうと、僕は呆然としていた。以来、40年ほどたった今見ると、わかったのだ。
映画『イージー・ライダー』は改めて見て、よくできた映画だと思った。コカインの密輸で大金を手に入れたデニス・ホッパーとピーター・フォンダが自由を求めてアメリカの大地を走り続ける。行く先々で出会う土地の人たちの敵愾心を丸出しにした表情に出会う旅に、二人の未来に暗澹たる気配がし始める。
その辺りの不穏な空気を醸し出すのがうまい。そして、今見ると、ジャック・ニコルソンが途中二人の旅に合流して、あっと言う間に殺されてしまうまでの短い場面が、この映画の核だということがわかってくる。
「みんながなにを怖れているかわかるかい?」とジャック・ニコルソンが言う。「長髪がそんなに怖いのか」とデニス・ホッパー。「それに象徴されるものが怖いんだ」とニコルソン。「なんだいそれは」とホッパー。「自由さ」とニコルソンはしみじみと言う。「アメリカは、自由のためには人を殺すのさ」と。
この後、ジャック・ニコルソン扮する若い弁護士は、バイクでやってきたよそ者を嫌う土地の人間に撲殺されてしまう。
この場面があるからこそ、『イージー・ライダー』はアメリカン・ニューシネマの傑作として語り継がれているのだと思う。そして、このジャック・ニコルソンの死があって、ラストの二人の死がさらに強いインパクトを放つのだといえる。
歳を重ねてから、かつて見た作品の良さにもう一度触れることができる。これはなかなかいい体験だ。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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