淡路島で笑う。
僕がまだ子どもの頃、父が「うちの祖先は淡路島にいた」と話すことがあった。「淡路島で広大な土地を持っていた」という話題がそこに続き、最後には黙り込む、というのがパターンだった。
僕自身は高校生になった頃から父と折り合いが悪く、ほとんど話さなくなったのだが、うちのヨメさんは父と飲み仲間のような存在になり、どうやら父のルーツについての話も、ヨメには詳しく話していたらしい。
そして、父が亡くなったときに必要に迫られて原戸籍を取り寄せると、なかなかに複雑な様相を呈してきたのだった。どうやら、ヨメが父に聞いていたことと、そこにも出てこなかったような事実が、原戸籍から見え隠れしているらしい。
もともと、僕の父は「天涯孤独な身の上」というのが口癖で、実際は兄弟はたくさんいたのだが、自分以外は実父が再婚した際の連れ子だったり再婚後の子どもだったりする。つまり、元々の実の父母の子どもは自分以外、全員若くして亡くなったのだ、と言うことだった。しかも、それが姉ばかりで、男兄弟というものがいない。そのせいか、僕の父は人一倍、普通の家庭に憧れていたような気がする。だからこそ、僕が家に寄りつかなくなったことを子育ての失敗だと思い、亡くなる直前、自分の弟に「お前のとこは子育てに成功したけど、うちは失敗した」と伝えたのだと思う。
この数年の間に、父の妹が亡くなり、その旦那が亡くなり、父の弟が病にかかり、状況が大きく変わりつつある。こんな時にこそ、父のルーツを調べられるなら調べたい、と思うようになったのだった。以前からヨメには「いろいろ調べないと」と言われていたのだが、あまり気乗りがしなかった。というよりも、調べたところでわからないのではないか、という思いの方が強かったのだ。
しかし、せめて、祖先の墓でも見つけられればと、昨日、レンタカーを借りてヨメと二人で淡路島に行ったのだった。子どもの頃、なんども連れて行かれた淡路島。あの頃は、釣りのために行っていたのだけれど、すっかり淡路島は様変わりしていた。大きな橋がかかり、フェリーでなくても渡れるようになり、派手な看板を掲げたホテルや商業施設もたくさんできた。そんな淡路島の中で、僕の祖先たちは今も生活しているのだろうか。
結果的にはなにもわからなかった。わからなかったけれど、おそらく大きな財産を持ったままという状況ではないだろう、ということは何軒か尋ねたお寺の住職さんのお話からわかってきた。どうやら、うちの祖先はそこそこ財産を持っていたが故に、穏やかには暮らしていなかったようだ。細かなことはわからないのだけれど、なんとなく人間らしい一族の人となりの片鱗を知るだけで、僕は話を聞きながらマスクの下で口元を緩めてしまっていたのだった。
まだまだ、もう少し調べたいことがあるので、今日の淡路島調査が、これからどう展開していくのかはわからないが、決して無駄になることはないだろう。しかし、具体的な祖先との繋がりはまだまだわからないのだけれど、言葉だけは次々と繋がっていくのは不思議だ。ゆかりがあるかもと思われる神社で祀られている神さまの名前と、僕がかつて経営していた会社の社名がとても似ていたり、土地の名前が似通っていたり、原戸籍に現れる名前に、現在の生活で繋がりのある人と同じ名前が出てきたり。偶然と言ってしまえば、それで終わってしまうのだけれど、いや、決して偶然じゃない、と思えるだけの人と人とのつながり、というものの強さを日々感じるようになってきたのは確かだ。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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Jane
大地真央さんとご先祖様が繋がっていませんか?私は昔から大ファンなんですけれども。淡路島の浜辺で歌うビデオも買ったものです….。