バイシクルレース、また自転車後奏曲。
最近、というか何年か前から自転車のマナーがひどくないですか? いや駐輪じゃなくて、走るときのマナー。もしかしたら、歩行者の間をすり抜けたりとか、車道を急に横切ったりとか、そういうことをする人の数は確実に増えている気がするし、あと確実にスピードが速くなってますよね。
特にひどいのは小さな子どもを乗せられるようになっている電動アシスト自転車に乗ったママさんたち。子どもを乗せている時はそうでもないんですが子どもを乗せていないときは、ビュンビュン走っていて、どう考えても間、抜けられないだろう、というところでも、グイグイ入っていく。
あれはやっぱり、スピードを手に入れてワクワクしちゃってるってことですか? もちろん、自分勝手はやめて、人に迷惑を掛けないように生きなさい、という教育が滞っているのが原因かもしれない。しれないけれど、それにしたって、歩道を歩いていてこんなに「危ないなあ」と思うことが増えたのは、具体的な武器を手に入れたからだとわたしゃ読んでいるんですがね。
だとすると、やっぱり子どもを乗せられる電動アシスト自転車。もともと、自転車なんて乗らなかった、または乗ったとしても電動アシストなんて高いからいらないわ!なんて言っていたのに、子どもを乗せられる電動アシスト自転車が出た、となると黙っちゃいられない。そして、実際に乗ってみるとやっぱり楽だ!ということで段々慣れてくる。子どもを乗せてても楽なんだから、一人で幼稚園に送ったあと走っていると、まるで新次元の体験のようにゆるい坂路なら軽々上がれちゃう。
ということで、子どものための、そして、お母さんに負担をかけないための電動アシスト自転車は、見事に走る凶器になったのである。
なんで、こんなことを書いているのかというと、ついこないだ、後ろから電動アシスト自転車に突っ込まれたのである。歩道の端を歩いていたのに。前から人が歩いてきて、僕とその人との間はかなり狭かった。そこに、子どもを乗せた自転車が入り込もうとして、結局僕の腕にあたり、そのままグイグイ前に押し出す感じになったのである。
いやいや、痛いよ、さすがに。そんで、自転車止めて降りろよ。なんで、そのまま人の腕押しながらすり抜けようとしてるんだよ!と思いつつ、(まだ、言葉は発していない)僕はその自転車を横目で眺めていたのである。お母さんはおそらく「やばい」と思ったのでしょう。だって、片手にスマホ持ってたからなあ。たぶん、スマホも操作しながら突っ込んできたものと思われ、こっちも段々腹が経ってきたのでありますが、ここで自転車のお母さんの前のチャイルドシートに乗せられていた女の子が先に声を発したのである。
「ママ!あやまって!」
どうも、母親の狼藉を見かね、まだ幼稚園児くらいの娘がぶつかった相手に謝れと言っているようなのだ。母親はとっさにブレーキをかけ、娘を一瞬だけ見る。娘はめちゃくちゃ怖い顔をして母親を振り返ってにらんでいる。でも、母親も娘に言われたからって急には謝れない。まだ、足で自転車を前進させて少しずつ逃げようとする。
なんだか娘が可愛そうになって、僕は車道側に片足を出して、自転車が通れるようにしてから、「どっちにしても、いったん自転車おりなさいよ。あぶないから。そのまま行っていいから」というと、母親は無言で自転車を降り、そのまま頭を下げるわけでもなく、言葉を発するわけでもなく、そのまま通り過ぎ、またすぐに自転車に乗り、グイッとペダルを踏んで走り去ったのである。
若い頃の僕なら、「ちょっと待て、子どもの前で恥ずかしいことするな」くらいのことを言ったような気がするけれど、いまはもうただただ他人の娘のことを思って悲しくなるのです。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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