エスカレーターを歩きたくないのだ。
エスカレーターに乗るとき、東京は右に立ち、大阪は左に立つとかいう話はもう過去のものなのだ。何年も前から、「エスカレーターでは立ち止まらないでください」という表示がなされ、場所によってはちゃんと2列で立ち止まって乗ってください、という図解までされている。
結局、2列に並んで立ち止まり黙って運ばれるほうが速いのだそうだ。つまり、輸送量はじっとしているに限る、ということなのだ。にもかかわらず、みんなどちらかを開け、どちらかは歩くのである。なぜなら、ずっと片側をあけて、片側を歩くことが身に染みているからである。誰も乗っていないエスカレーターに乗ろうとしているときに、後ろから誰かがついてきているなら、やっぱりなんとなくその地域のルールに従って、片側をあける。すると、次の人が僕の後ろに並ぶ。で、足早に歩いてきた人があいている側を駆け上がる。ということで、いつのまにかいつもどうりになる。
それなら、ということで、あいている側で立ち止まればいいじゃないか、という気もするのだが、後から来る人に「お前は、2列で整列利用をごり押しする奴か!」と思われるのは嫌なのである。夜中で車も来ないたった2メートルの横断歩道で「交通ルールは守らねば!」と赤信号を守っている人みたいに思われるのは嫌だ。でも、本当はちゃんと「2列に整列した方が速いんだよ」ということは知っているということはアピールしたい。
ということで、編み出したのがちょっとはみ出す、という立ち方。真ん中ではなく、ほんの少しだけはみ出す。こうして立っておいて、後から来る人がその隙間を抜けていこうとしたら、すっと地域ルールに従うのである。これはいい!と一瞬思ったのだが、2回目に試したときに、後ろからきたお兄さんに「チッ!」と舌打ちされたので、あっさり引き下がり辞めてしまったのだった。
きっと、多くのみなさんが、片側あけられるほうが邪魔くさいと思い始めているのではないだろうか。じっと立つ方は渋滞しているし、歩く方に並んでしまうと、疲れているのに歩かなければならない。お年寄りが無理矢理歩いているのを見ると辛くなる。そろそろ、エスカレーターを歩いて登ろうとすると、やたらと恥ずかしい音楽が鳴るようにして、抑止するなどの方法を考えないといけないのかも。えっと、鳴ると恥ずかしい音楽ってなんだろう。えっと、そうだな。「むすんでひらいて」とかだと子どもが喜んで歩きそうだし。えっと、石井明美の『CHA CHA CHA』とか、かな。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。
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ひろっくま
まさに昨日同じことを感じましたよ!
ここ最近は地方の百貨店のエスカレーターくらいしか乗ってなかったんです。
皆さん真ん中1人もしくは2列で乗っていたんですよ。
それにコロナ禍で遠出せず慣れちゃってました。
昨日、地方の駅から新大阪駅や大阪梅田駅に久しぶりに行きました。
もうみんな急ぐ、歩く、走る!
あーこれこれ久しぶり。
私も
「私が真ん中にいたらルールが変わっていくんじゃないか説」
を念頭に真ん中らへんにいたけど
ドワーーってすごい勢いのお兄さんの雰囲気だけで
端っこに寄りました。
植松さん担当水曜日は
「そうそうそう!」って思うこと多くてにんまりします。
uematsu Post author
ひろっくまさん
読んでくれてありがとうございます。
新しいルールを取り入れるときの、
みんなが知っているのになんとなくできない、
というあの感じがものすごくモゾモゾしますね。