あれあれ、いつの間にやら…
寒い寒いと言っている内に年度末が近付いて参りました。一応、社会人として日々を過ごしている身としては年末よりも年度末の方が気忙しかったり、ドキドキ・バタバタだったりします。そんな季節に本当にばたばたするのが各種の工事。というわけで今回はその工事中のお話です。
東京近辺にお住まいの方、あるいはそうでない方でも、最近有名なのが渋谷駅近辺の工事。一説によると100年に一度の大工事とのこと。東横線は深く深く潜り込むわ、あちらこちらに壁はできるわで、まるで大きな迷路状態です。こうなるとさすがに目の見えている人でも、なるべく渋谷は避けるということになっているらしいです。
ちなみに先日、久々に渋谷に降り立った関西在住の友人は、あまりの変容ぶりに茫然としたとか…。そして、私たち視覚障害者の間では「渋谷バリアがひどくてとても一人じゃ歩けないよね」ともっぱらの評判も…。
そんなわけですので、たまにどうしても渋谷に用事がある際は、たくさん待機されている警備員などなどの方々のお世話になることが多くなりました。
そんなときふと感じることがあるのです。やはり何事も経験が大事だな、と。工事期間が長く、そして複雑化していると、自ずと案内をする回数というのも増えることになります。そのためか、最近だんだんと案内してくださる方の手際がよくなり、ポイントが抑えられているように感じ、なんだか会話まで弾むようになってきた気がするのです。
例えば「この先のエスカレーターは途中で少し平なところがありますが、すぐに続きが始まるので気を付けてください」などと教えてくださったりすると助かるのです。
少々余談になりますが、エスカレーターは見えない人には危ないと思っている方は意外に多く、階段の方へ引っ張って行かれたり、奥まったところのエレベーターに引っ張って行かれることがよくあります。あまり若くはない身としては長い階段よりはエスカレーターに乗りたいものですし、あまり使ったことのないエレベーターでは降りた後で方向がすっかり分からなくなるなんてこともあるのです。
エスカレーターはベルトにちゃんと手を置いていれば、降り際には角度が斜めから平らに変わりますし、つま先をほんの少し浮かしていれば最後のところでつまずくこともありません。それと、全盲の人よりロービジョンの人の方が、とくに下り階段が苦手な人がおおいのも事実。段々の境目を見ようとしても見えにくいので、結構怖いのです。
話を渋谷の案内の方に戻しましょう。ポイントが抑えられているなあと感じた例としてはこんなこともありました。
改札近くで待ち合わせをしていた私。後から出てくる人の邪魔にならないところはどこかしら?と、柱や壁を探していると、近づいてきた方が…。「警備の物ですが何かお手伝いは必要ですか?」「いえ、待ち合わせなので大丈夫です」「それならすぐ後ろが柱ですから」と言って離れて行かれました。そして、おそらくは私がその柱の近くに無事にたどり着いていることも、さりげなく見守ってくださったのではないかと思うとなんだか嬉しくなったものでした。
またあるときなどは「乗り換えがこんなに遠いなんて、乗り換え案内検索には10分と書いてありましたけど着かないですよね、きっと」という私に「僕たちでも10分ではどうか分かりませんよ。東京オリンピックのときにもこの工事は完全には終わらないので困るでしょうね」などと返してくださり、しばしの間、会話が弾んだこともあったのでした。
前にも書いた気がしますが、こういう経験をすると見えないのも悪くはない。面白い経験もできるのだからなどとお気楽に思ってしまう私なのでした。