いつか、確実に : 牛すじとじゃがいもの煮込み
別の県に暮らす伯母を訪ねました。
母の姉である伯母は85歳。
生涯独身を通したので、当然今も独り暮らしをしています。
以前から電話をかけてきては足腰が弱ってきて大変だと愚痴っていたのですが、
母の介護にかまけてなかなか会いに行くことができずにいました。
ところが、最近伯母の家に行った従妹から「結構大変な状態よ」と連絡が入ったので
一度様子を見に行かねばと、電車を乗り継いで出かけたわけです。
果たして伯母はかなり様子が変わっていました。
驚くほど狭い歩幅で歩き始めの赤子のようによちよちと歩く姿は
常に後ろから手を添えていないと怖いくらいに不安定で、
私は何とも心細い気持ちになりました。
母方の伯母・叔母は、自分の子供だけでなく甥や姪のことも同じように
叱り、可愛がり、育ててくれました。
幼い自分を守ってくれたあの大きかった人が、こんなに小さく脆くなってしまった。
簡単に部屋の片づけをして、
お刺身が食べたいという伯母のためにちらし寿司を作って一緒に食べて、
並んで寝て、たくさん喋って、
「次はとんかつを作ってね」という言葉に、なるべくまめに来なければと
強く思いました。
伯母は
「この年になるとね、死ぬのは怖くないのよ。
ただ、みんなと別れるのが悲しいの」
と言いました。
その言葉に初めて、そう遠くないいつか、必ず別れが来るのだと
初めて実感しました。
あんなに楽しくて心強かった大人たちが少しずつ、でも確実に小さく弱くなっている。
そうか、あの楽しくて心強かった日々は、こうして少しずつでも確実に
いつか私の前から消え去ってしまうんだ。
そしてその先には、私自身の終わりもぼんやりと見え隠れしている。
帰りの電車の中、そして帰って来てからも、ずっとそんなことを考えていました。
胸の奥が少しざわざわするのを感じながら。
考え事をする時は、煮込みの鍋を火にかけて
その火や湯気を眺めながらじっくりと考えると気持ちが少し落ち着きます。
というわけで、今日の1品は『牛すじとじゃがいもの煮込み』です。
牛すじの下茹でに少し手間がかかりますが、
そんな手間も、考え込んでしまった心を切り替えるには悪くないかもしれませんよ。
『牛すじとじゃがいもの煮込み』
- 牛すじをカットします。
煮込むとかなり小さくなるので、「これじゃ大きすぎるかな?」くらいの
大きさに切るのがポイントです。 - じゃがいもは皮をむいて食べやすい大きさに切ります。
- 牛すじの下茹でをします。
カットした牛すじをさっと洗い、水と一緒に鍋に入れて火にかけます。
煮立ってあくが出てきたら茹でこぼし、ざるに取って水で洗います。 - 鍋に、水、スライスした生姜、ねぎの青い部分、2の牛すじを入れ火にかけ、
牛すじが柔らかくなるまで茹でます。
※2で使った鍋を使用する場合は、あくをきれいに洗って使ってください
※ル・クルーゼやストウブのような厚手の鍋を使うと早めに火が通ります - 深めのフライパン(中華鍋など)に油を引き、2のじゃがいもを入れます。
全ての面に軽く焼き色がつくようひっくり返しながら加熱します。 - 5のフライパンに砂糖を加え、じゃがいもに絡ませるように加熱します。
- 6に水、酒、みりんを加えます。
- 4で柔らかくなった牛すじを7のフライパンに加え、醤油を加え、
落し蓋、蓋をして更に煮ます。
※後で味噌を加えるので醤油は控えめに。ここで味を完成させてしまわない。 - じゃがいもが柔らかくなったら味噌を加え、ひと煮立ちさせたら出来上がり。
お好みで柚子の皮をすりおろしたものを加えてください。
※もう少し牛すじに火を通したいけどじゃがいもが煮崩れてきた、という場合は
じゃがいもだけを取り出して煮込みましょう。それにしてもさすがにこのままではまずいだろうと、
いとこたちと連絡を取り合って伯母のこれからのケアについて本格的に
対策を練ることになりました。
担当のケアマネ―ジャーさんと連絡を取って、訪問リハビリやデイケアに通う
ように進めていこうと考えています。
大変なことではありますが、そのおかげで久しぶりにいとこたちが連絡を取り合い、
伯母を囲んだいとこ会をやろうじゃないかという話まで持ち上がっています。
おセンチになってばかりいても仕方ないですものね。ミカスでした。