島民百景〜幽体クンとラッパーさん
夏休みが終わりましたね。
学生さんも、学生さんの家族も、社会人も家庭人も
残暑のけだるい日常を取り戻すころ。
遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休めるとき、
はるか雲海の上を音もなく流れ去る気流は、
たゆみない宇宙の営みを告げています…
じぇっっっとすとりーーーーいいいいむっっっっ
こんにちは、じょうたつや、に見せかけてじじょうくみこです。
そんな9月の幕開けですので、今週はさくっと
シマ島の島民話などさせていただければと思います。
さて。
我が家は集落のちょっとはずれにあるので、
家のすぐそばを通る道路は
基本的に人の往来が少なめです。
ただし、この道はどうやら小学校の通学路になっているようで
毎朝、毎夕、小学生の声がよく聞こえてきます。
島の子供たちは、とにかく天真爛漫というか
絵に描いたような「元気な田舎っ子」という印象。
家の中からでもその元気っぷりが、手に取るようにわかります。
「そっちのカブト、おまえんちの弟のやつな!」
「えーオレ、こっちのカブトがいいなあ」
とか
「おーい、う○こせいじーん」
「なんだよ、ち○こせいじーん」
とか
ここは昭和30年代なのか? と疑いたくなるような
ほのぼのするような会話が交わされており、
めくるめく「ぼくの夏休み」ワールドが
窓のむこうで展開されているわけですが
なかでもひとり、飛び抜けて元気な男子がいて、
先日などは、その子がアラレちゃんみたいに
キーーーーンと道路を走ったり寝転んだりしながら
「幽体離脱うううう〜〜〜〜!」
とでっかい声で叫んでいました。
シマ島で新しい離脱法が開発されたもようです。
彼らは本家を知っているのだろうか
一方。
この道にはもうひとり、気になる男子がいます。
それは齢80オーバーとおぼしき、おじいさま。
細身で小柄、くしゃおじさんみたいな
味わい深いご尊顔の上に青い帽子をきりりとかぶり、
白いポロシャツに白いスラックス姿で
ちょっと前かがみにふわふわと歩いておられます。
おじいちゃんは毎朝、我が家のすぐ裏に軽トラを停めては
どこかに消え、しばらくするとまた戻ってきて
1日に何度も車をあっちへ停めてはこっちへ動かし
日が暮れるころにどこかへ帰っていかれるのですが、
どうも最近どこからか演歌が聞こえてくるな、と思っていたら
おじいちゃんがラジカセ抱えて
ガンガン演歌かけながら歩いてた
ファンキーな80代とアナーキーな10代のはざまで
どう踊り出るべきか悩む40代であります(勝てる気がしない)。
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「じじょうくみこのオバサマー」は毎週火・木・土曜日更新です。