島民フィルターで世界を見ると
まだつきあってまもないころ、ザビ男がこんなことを言っていたことがあります。
「よく東の人は西日本のことがわからないとか、西の人は東北の地図がわからないとか言うだろう? 要は自分の立っている場所から世界を眺めているので、関西の人にとっては東北がはるか彼方、雲のむこうにかすんで見えるわけだよね。でもシマ島はどこからも離れているし、どこにも属してない。だから島の人間は、日本全体を見るしかないんだ」
……やだなにそのカッコイイ感じの発言?
やれ西の人間はこうだ、東の人間がああだ、九州男児と薩摩隼人はどっちが面倒か、なんてな話ばかりしていたローカル人間としては「離れた場所から日本ぜんぶを見る」というものの見方があるのかと、大変新鮮な思いがいたしました。そしてわたし自身がシマ島の住民となったいま、なるほど確かに島の人は視野が広いといいますか、俯瞰で物事を見ているんだなと感じることが多くなりました。ミクロであってマクロであり、マクロであってミクロであり、島民目線ってなんか不思議。
そんなシマ島生活をようやくスタートした途端、まさかの本土送りになってしまったわたくし、へなちょこ島民じじょうくみこでございます( ; ; )
移住するからには、しばらく島で腰を据えて暮らそうと思っていたのですが、よもやこんなに早く送り返されることになるとは…。いやはや離島暮らしは何が起こるかわかりません。(上京するハメになった経緯はこちら→☆)
もちろん健康は何より大切ですから、Dr.コトーに「上京して検査を受けなさい」と言われれば「はいそうします」と言うしかないわけですが、すでに東京に家がない身で上京するということは、つまり交通費はもちろん宿泊費、食費などのお金を費やすことを意味します。今回はさらに通院目的ですから、医療費も上乗せされます。(出産、手術、闘病なんてことになったら…ああ頭がくらくらする…)
それなのに病院の先生ったらねえ、「1週間後に結果を聞きにきてください」とかサラッと言っちゃうんですよねええ〜。「離島在住なので、電話や郵送でどうにかなりませんか」と泣きついてみたんですが「できませんね」と一蹴されました。まあそりゃそうですね、ですけどううう(泣)
こうなると結果を聞くためだけに1週間滞在するか、いったん島に帰って再度上京するか、非常に判断に迷うところです。さらに運悪く海が荒れてしまうと、うっかり帰島日が欠航になって滞在費がかさむ、なんてことにもなりかねません。天気はいつ動くか。どのタイミングでどう移動するか。判断ひとつが命運(金運?)を分けます。今回も本土にきてから急に天気が荒れてしまい、ザビ男と天気図を見ながら
「あさって荒れる予報だけど、海は明日からやばい?」
「そうだな、船は五分五分かも」
「空か」
「空だ」
「らじゃ」
先生の話では大きな問題はなさそうだったので、検査結果は後日聞きに行くことにして、急遽予定を早めてそのまま空港へ。残り1席の飛行機に滑り込んで、ばびゅーんと帰島したのですが、案の定その日の午後から数日間船が欠航。あと一歩判断が遅れていたら、しばらく島に帰れなくなってたな…と冷や汗でございました。
一事が万事この調子で、海が荒れたらスーパーから生鮮食品が消えるので早めに買っとこう、とか、船が出るか出ないかわからないから念のため郵便物をスキャンしてメールしておこう、とか、「なるほど自然と共に暮らすってこういうことだったのか」と実感する日々。シマ島に来たらのんびり島時間〜❤︎とか思ってましたが、とんでもなかったです。島に来てからこっち、わたくし五感フル稼働でございます。
そんなこんなでヘナチョコなりに島民フィルターが育ってきたかしら、なんてな感じのわたくしですが、ちなみに今回、長年暮らしていた東京に島民として初めて乗り込んで思ったこと。
やだ、新橋って若い人がいっぱい〜〜〜❤︎
注:新橋とは東京を代表する「オッさんの聖地」です。
高齢者が大多数を占めるシマ島にいると、40、50のオジさんサラリーマンが若者に見えてしまうと知った、東京の夜でありました…。
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
※10月1日(木曜)はお休みをいただきます。次回更新は10月3日(土曜)です。