「最高の離婚」ファントーク
<対談「最高の離婚」8回>震災のときに思ったのですが人を助けるのも人、瓦礫を片付けるのも人。
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今回は、10話、最終話について話していまーす。
10話:あなたがその子の父親になればいいんじゃない!?
それが、一番丸く収まるんじゃないのかな?
責任っていうかさ、面倒見てあげるべきじゃないの?
11話(最終話):正直つらいです。結婚って、拷問だと思っていましたが、違いました。
結婚は、食物連鎖です。黙って食べられるのを待つだけ。あーつらい。四倍つらい。
カリーナ:少し間があいてしまいました。今回もよろしくお願いします!
小関: はい、実はさっきまで10、11話見ていました。こんなところもあったんだな〜と新鮮な気持ちで見返していましたよ。
カリーナ:毎回、新鮮な気持ちで楽しめますよね!私、実は、この対談で見返す前までは、結夏(尾野真千子)の※AV出演はもっと前の回で登場していたエピソードの気がしていました。こんなに後のほうのお話だったんですね。
※秋葉原の交差点で目が合ったスカウトマンに、女優としてAVの「人妻誘惑温泉」シリーズに出演しないかと勧誘される。
小関:そういわれてみればそうですね、本当に終盤でしたね。関係性が煮詰まってしまって膠着状態のふたりを動かすには、これくらいインパクトのある出来事が必要だったのかなと思います。
カリーナ:それに、やっぱり結夏さんは、自己評価が低いのかなあと改めて思いました。
小関:ですねえ…。結構内面が弱い。寂しいという気持ちが常にベースになっているような気がします。
カリーナ: ほんとです。常に水をやらないといけない・・・という意味では、相手は大変だなあと。あの、光生が※「ココア、飲む?二人分入れるけど、僕も飲むから、もし飲みたければ飲んだらいいから」のあたり、優しくて泣けましたー。
※光生のセリフは、「あったかいココアいれよっか、ね、一応二人分いれるから、飲みたかったら飲むんでいいから、ね」
小関:あそこ、よかったですね。光生っていちいち言葉に表すから、そこがめんどくさいけど、せいいっぱいの気遣いと優しさが見える。押し付けがましくなくて、もうほんとうにこの10、11話は光生のいいところがいっぱい見えました。
カリーナ: いちいち言葉に表すからめんどくさい(笑)、その通りですね。あの…小関さん・・・少し話が「最高の離婚」とずれちゃうんですが、先日、小関さんが、「ポピュラーのよさ」だったかな?そういうことを東日本大震災以来、感じることが増えたと書かれていて、それがとても興味深かったんです。
小関:あ、ツイッターに書いていましたね。よく見てらっしゃる!
カリーナ: はい、見てます(笑)。あの発言は、すごく刺激的だった。確か映画についてでしたよね。
小関:はい、ちょうどその日、テレビで放送していた映画(「XMEN ファーストジェネレーション」)と、その直前まで見ていたコンサート(以前「Folder」というキッズグループで歌っていた三浦大知)の両方から感じたことがあって、書いたのでした。
カリーナ:もう少し詳しく教えてもらえますか。どんなところでどんなことを感じられたのかとか。
小関:私、震災の前は、映画や音楽や文学といった創作物で、大衆的なもの、ポピュラーなものをちょっとバカにしていたんですね。金儲けのためだろうとか、売れ線狙いだろうとか、まあそういうつまらない理由で、避けてたんです。
でも、震災の後、それまで自分が「きっとこれはすばらしいのだろう」と思ってきたいろんなものに、それまでのように圧倒されなくなってしまいました。小難しいことやセンスの良さそうなことを言われても、あの圧倒的な現実の前では何にも感じないというか…。
それよりも、たくさんの人に聞かせたり、見せたりするつもりで作られているポピュラーなもの…それはエンターテイメント色の強い映画だったり、ポップミュージックだったりするんですが…を見聞きしたときに、震災のあれこれをちょっとだけ忘れられることができたんですね。そして「よし、もう少しだけできることをやってみよう」とか「がんばってみよう」と思うことができたんです。
政治的なメッセージを載せた作品もいいけれど、それは横に置いて、圧倒的なスキルや考え抜かれたアイデアで楽しませること。そうして、楽しい気持ちになった人が、また次の日からちょっとでも状況をましにできる、というのがポピュラーなものの強さなんだなと思いました。
カリーナ:小関さんのそのツイートが頭のなかにあって、震災から始まるこのドラマ(「最高の離婚」)をもう一度見たんです。そうすると坂元さん(脚本家)が、震災後の「男女の関係」や「夫婦関係」や「家族」を考えたんだろうなと改めて思ったんです。ある意味、とても常識的で保守的なところに落ち着くコメディなのかもしれませんが、当時よく言われていた「絆」のニュアンスとは違う。そんなに安定した関係じゃない。紆余曲折を経て、どんな関係を築けるのか、とても丁寧に考えられたんだろうなと。
小関:ああ、今、カリーナさんのおっしゃることを聞いて思ったのですが、結局、どうやっても人は人から逃げられないものなんでしょうね。震災のときに思ったのですが、人を助けるのも人、瓦礫を片付けるのも人、原発の現場で復旧作業をするのも人、避難所を運営するのも人、話を聞いてそれをニュースにするのも人。人が関わることは、ぜーんぶ人がやってるんですよね。だから「最高の離婚」では、結婚というわかりやすい形式をとりながら、他者と生きることについて描いたのかもしれませんね。
カリーナ:あああああ、そうですね!「結婚という形式をとりながら」です。愚直に人と人がぶつかりあって、理解しようともがいて、信頼を築くしかないという。自分が、ここまで好きな理由が見えたかもしれません!小関さんっ!
小関:私も、たぶん同じ理由でこのドラマが好きなんだと思います!
次回、最終回です。
小関祥子さんのプロフィール
福島県いわき市出身。女性向け、児童向けの実用ジャンルで
主に仕事をしているイラストレーター。映画好き、料理好き。
小関さんの詳細なプロフィールやお仕事はこちら→kittari-hattari
niko
いつもありがとうございます。
今回も、深いところへと導いてくださいました。
ドラマと同じくらいこの対談も好きです!
koseki
nikoさん、こちらこそ、お読みいただきうれしいです。
ありがとうございます!