私のカズオさん
今年も、ノーベル文学賞が発表された翌朝のラジオ番組を、担当した。
去年はボブ・ディランが受賞したので、番組には多くの反響や、ボブ・ディランの曲のリクエストが寄せられた。(昨年の記事はこちら→★ )
もし今年、村上春樹氏が受章したら、大ファンの私は平静でいられるだろうか。リスナーさんからのメールやFAXを正しくさばけるだろうか。村上文学に好意的なメッセージと批判的なメッセージを等しく扱えるだろうか。だいたい、村上春樹氏を仕事で扱うのは気がむかない。受章の翌日は休みをとって、一人部屋にこもり、インターネットで各国の賞賛記事を読みふけりたい。
・・・そんな思いで文学賞発表の速報を待った。
そして夜の8時すぎ、「カズオ・イシグロ氏にノーベル文学賞!」のニュースが駆け巡った。
私の反応は、「おおぉぉぉぉぉぉ!・・・やった!ハルキさんも好きだけど、カズオさんも好き!!」
ここ数年、カズオ・イシグロ氏の小説を何冊か読み、彼に興味を持っていたので、私にとってはグッドニュースだった。
でも翌朝のラジオ番組に、ノーベル文学賞についてメールは、一通も来なかった。海外の小説って、あんまり読まれていないのかな・・・。ちょっと寂しかった。
2年前、長編小説「忘れられた巨人」の刊行を記念して、イシグロ氏が来日した。そして東京で講演会を行った。私はその講演会に行きたくて、参加申し込みをしたものの、定員オーバーで抽選にもれてしまった。(ホテルも飛行機も予約して、行く気満々だったのに・・・)
悔しかったので、Eテレで放送された「カズオ・イシグロ文学白熱教室」を録画して、何度も見た。(おかげで、カズオさんの英語がききとれるようになった)
さらに後日、東京に行き、その番組が収録されたカフェに足を運んだ。(表参道のRainy Day Bookstore & Caféです。出版社のビルに入っています。素敵なお店です)
幼い頃の日本の記憶を自分の中に留めておきたい、そんな思いから小説を書き始めたというカズオさん。“記憶”をテーマに、様々な作風でファンを魅了する。
カズオさんは音楽とも関わりが深い。若い頃はロックを演奏していたそうだ。(ロン毛の写真が「白熱教室」で公開されていた。ドン引き!!)
作詞家としても活動中。女性ジャズシンガーのステイシー・ケントにいくつも楽曲を提供している。(おすすめです)
・・・そんなわけで、一人でひっそりとフィーバーした今年の文学賞。近所の書店に行くと、カズオ・イシグロの本はすべて売り切れ。「ただ今、予約受付中!」なのだそうだ。
そうかあ、私は貴重な本を持っているんだなあ。人に貸してあげたいけど、ごめんなさい、私の本、付箋だらけなんですよ~ん。