第27回 東京ゴッドファーザーズ/この世界の(さらにいくつもの)片隅に
『東京ゴッドファーザーズ』は、監督 今敏(こん さとし)、アニメーション制作はMADHOUSE、2003年公開のアニメーション映画です。この時期の大人のアニメといえば、これ。
年の瀬の東京、捨てられた赤ちゃんを見つけた三人のホームレス、中年男のギン、元ドラッグクイーンのハナ、家出少女ミユキ。「清子(きよこ)」と名付け、母親を探すのだと言うハナに、他の二人もしぶしぶ手を貸すことに…。江守徹(ギン)、梅垣義明(ハナ)、岡本綾(ミユキ)の声が、ご本人たちの顔が頭に浮かばないほどキャラクターにハマっていて、脚本のおもしろさを増幅しています。
清子を連れて母親の手がかりをたどる道中で、危険な目に遭いながらも、彼ら自身が赦されていく様子に、じんわり心が緩んでいく。ホットワインのような映画。
===
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を見てきました。監督は片渕須直(かたぶち すなお)。原作はこうの史代、アニメーション制作はMAPPA。
160分以上の長尺、トイレ大丈夫かな?(大丈夫でした 笑)前作であら筋は知っているから飽きないかな?と、気になることはありましたが、杞憂でした。遊郭で働くリンとの会話が印象的。そしてやはり、のんのすずさんは「ええねえ。」(広島のイントネーションで)
クラウドファンディングのパトロン名を記したエンドロール。そのエンドアニメーションで出てきたモノが母の嫁入り道具と同じ形だと気づき、母が語っていたB29の飛来を想像できたのは、劇場の大画面だったからでしょう。まだ上映劇場が少ないのですが、前作のように増えていくのでしょうね。
===
『東京ゴッドファーザーズ』と『この世界の片隅に』には、共通点があります。
それは、丸山正雄(まるやま まさお)が「企画」として関わっていることです。虫プロを出たのち、MADHOUSE、その後『ユーリon ICE』のMAPPA、現在『鬼平』のスタジオM2と良作を生みだすアニメ制作会社を次々と設立しています。アニメ『SHIROBAKO』の丸川社長のモデルになっています。
アニメはアニメーターらのものとして、裏方(企画・設定・プロデューサー)であるご自身はあまり表に出ていらっしゃらないのですが、見ごたえのある作品には、ほとんど丸山氏が関わっていると言っても過言ではありません。テレビアニメの初期から現在まで活躍されているアニメ界の重鎮です。第2次マイ・アニメブームはMADHOUSEとともにありましたので、これを機会にお名前を出させていただきました。
===
休暇中のもう1本。動くバンド・デシネ『アヴリルと奇妙な世界』。面白かった!
今年のアニメーション映画は話題作が多かったです。外出する機会が増えて良かったです。
それでは皆さま、良いお年をお迎えください。
===
*アイキャッチ画像と動画は、当該作品の公式HPおよび配信予告より
Jane
東京ゴッドファーザーズ、図書館でたまたま見つけて今日娘と観ました。面白かったです。図書館には何百というレンタルDVDがあれど、誰かのお勧めでもないとどれを借りたらいいのか見当がつかない。もしSHOJIさんの紹介記事を事前に読んでいなかったら借りなかったと思います。ありがとうございます。
SHOJI Post author
Janeさま、コメントありがとうございます!
初めてご覧になって、面白かったと言って頂いて、ほっとしました。
日本のアニメ映画のDVDがあるということは、どなたかの寄付でしょうか?
そちらの図書館の収蔵品事情、興味深いです。
紹介文では、コメディー要素に触れていませんでしたが、笑えますよね。
美男美女は出てこないけれど皆チャーミングで、癖が強いのに温かみを感じるキャラクター造形で。
清子救出の場面は、可笑しいのだけれど、尊い(笑)
今敏監督作品で、お嬢さんと一緒にご覧になれるのは、『千年女優』あたりでしょうか。
他には、年齢制限があって、私も何度も見ようとは思わない作品もあるのです。
とまれ、今敏監督は不世出のクリエイターでした。