第31回 Ratatouille
『Ratatouille』は、ピクサー・アニメーション・スタジオ制作の映画です。2007年日本公開で、第80回アカデミー賞長編アニメーション映画賞受賞作品。邦題は『レミーのおいしいレストラン』。おいしそうなお料理が出てくる映画として有名なのでご覧になった方も多いでしょう。
ネズミのレミーが、パリのレストラン「グストー」で、パートナーとなるリングイニや同僚コレットとともに、シェフになる夢を叶えるお話です。詳細な筋は他の作品紹介にゆずります。
さて、アニメが実写に勝るとも劣らない表現力を持っていることには疑いの余地はないと考える私ですが、実写を越えるのは難しいと思うものがひとつあります。それは食べ物/料理そのものの描写です。(おいしそうに食べている描写ではありません。)ですが、唯一『Ratatouille』では、CGによる美味しそうな食べ物に出会えます(あくまでも私見です)。
フランスパンのかけらのテクスチュア。パンケーキの焼き目。厨房のハーブの数々。レストラン「グストー」で供されるお料理の数々。ややもったりと重なったのは、セリフを待たずともホタテだと分かる。そして、オーブンから出したラタトゥイユの色合い!ちょっと検索すれば、その美しさに感激した再現レシピが、わんさか出てきますね。(ちなみにレミー一族が食べるまずそうな食べ物の描写も秀逸です。)
それから、動きや表情のアニメーションの素晴らしいこと! 人間の言葉は分かるけれど、しゃべれないレミーの振る舞いや表情。謙遜するネズミってみたことあります?(笑)イライラしたコレットや厨房の仲間たちの様子。意図せぬリングイニの動きなどなど。
監督のブラッド・バードは、ウォルト・ディズニー・スタジオのナイン・オールドメン(伝説的なアニメーターたち)の1人であるミルト・カールの指導を受けていたという。ディズニーに始まるアニメーションの文化、ピクサーのCG技術/技法、そしてアニメーターの感性が、この豊かなコミュニケーション表現を生み出したのでしょう。何度も見ているのですが、十分に英語を聞き取れないのを幸いに、今回は吹替えなし字幕なしで、超絶技巧を堪能しました。
エンドロールによると、本作の有名なラタトゥイユは、米国のスターシェフThomas Keller がデザインしたもの。メニュー監修には Michael Hung の名もあります。米国はナパバレーにあるKeller のレストラン「The French Laundry」、フランスの「Taillevent」、「Guy Savoy」といったグルメレストランが協力しています。星つきレストランにはご縁はありませんが、それぞれの公式サイトや、シェフらのツイッター/インスタグラムを訪れて、グルメ気分を味わってます(笑)
それにしても、美味しいものって素晴らしい。異なるバックボーンと考えを持った者たちの間に、美味しいものが調和をもたらすお話。料理評論家イーゴの最後の評論が、ささります。
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*アイキャッチ画像と動画は、当該作品の公式HPおよび配信予告より