第33回 ロラックスおじさんの秘密の種
『ロラックスおじさんの秘密の種』は、2012年公開の3Dアニメーション映画です。『ミニオンズ』や『グリンチ』でおなじみのイルミネーション・エンターティンメントが共同製作に加わっています。Dr. Seussの児童書『The Lorax』(1971)が原作。主要キャラクターであるロラックスの吹き替えを、故志村けんさんが担当しています。
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テッドはプラスチックでできた街に住んでいる。人々はボトル入りの新鮮な空気を買って暮らしている。街を牛耳るのは、空気を売るオヘア。
ある日、思いを寄せるオードリーが本物の木を見てみたいというのを聞いたテッドは、なんとかできないものかと家族に木のことを尋ねる。すると、おばあちゃんが街の外に住むワンスラー(吹替え:トータス松本)の名を口にする。彼こそが一本残らず木を切ってしまった張本人で、今はそれを悔いる毎日なのだった。
自分の街とワンスラーの家を何度も行き来し、木の秘密を知ったテッドは、おばあちゃんの応援で、ワンスラーからもらった最後の木の種を街の真ん中に植えようとするが、そこにオヘアが立ちはだかる…。
ワンスラーが語る秘密の中で、ロラックスは自分を「森の番人」で「木の代表者」だと言う。“I speaks for the trees.” 性急な若者の言動を、ひょいひょいとかわしながらも共存しようとするロラックス。 森のことを心から心配し、欲に支配されたワンスラーに詰め寄るロラックス。訣別の時、自分のお尻をひょいとつまんで宙に浮き去っていく姿が、可笑しくて、悲しい。
楽しいミュージカル仕立てのアドベンチャー映画だが、産業・経済と環境問題へのメッセージが色濃い。最後を締めくくるドクター・スースの言葉は、森のことだけではなく、今の現実にも当てはまるかもしれない。“Unless someone like you cares a whole awful lot, nothing is going to get better. It’s not.”
話は前後するが、雷とともに木の幹から現れたロラックスおじさんは、ワンスラーに誰なんだと聞かれ、答える。邦訳はシムラへの当て書きだろうか。
「わたしはロラックスおじさんです。」
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キャッチ画像と動画は当該作品の公式HPより