第97回 屋根裏のラジャー/クロース(原題「Klaus」)
今回は2作品のご紹介。
まずはクリスマス向けに「クロース」(2019)
Netflixオリジナル作品で、第47回アニー賞では、作品賞を含む7部門で最優秀賞を受賞。第92回アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされています。
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ジェスパーは、郵便局長の息子です。裕福な境遇にあり、郵便配達人になるための学校でも堂々とサボっています。なんの不自由もなくゆるゆると生きてきたし、ずっとそうしていたい。その姿に業を煮やした父親が、最後の手段とばかりに、ジェスパーを遠く離れた町スミレンスブルクに送り込みます。
そこはとても荒んだ町で、新しい郵便配達人の話など誰一人まともに取り合ってくれません。途方にくれたジェスパーは地図の端っこ、森の奥にある一軒家を訪ね、そこで大きく寡黙な男クロースに出会うのですが…。
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赤い服を着て、トナカイのひくそりにたくさんのプレゼントを載せ…というサンタ像がどのように出来上がったのか。言わばサンタクロースのエピソード0(ゼロ)。クリスマスらしく心温まる物語で、バディものとしても秀逸です。
残念ながらNetflix以外では見ることができませんが、予告編と海外の情報チャンネル掲載のメイキング映像がYouTubeにありますので、ご興味があればぜひご覧ください。2Dのキャラクターらに影やハイライトが施され、3DCGのような立体感(陰影)と奥行が与えられ、大きくデフォルメされた登場人物が生き生きと見えます。
*不要な広告が出ないようリンクを外していますので、コピペでお使いください
Klaus | Official Trailer | Netflix (youtube.com)
How Netflix’s ‘Klaus’ Made 2D Animation Look 3D | Movies Insider (youtube.com)
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2本目は「屋根裏のラジャー The IMAGINARY」。先週末に劇場公開されました。
監督は百瀬義行。アニメーション制作は以前このコーナーでもご紹介したスタジオポノック。原作はイギリスのA.F. ハロルド著「The Imaginary」(ポプラ社よりこだまともこ訳「ぼくが消えないうちに」が出ています。)

スタジオポノックさんは紹介用のキービジュアルを提供してくださっています。
子どもの想像上の友人イマジナリ(フレンド)が主人公のこの作品、冒頭でイマジナリであるラジャーが生みの親であるアマンダとともに想像の世界へ乗り出します。
その世界のなんとまあ広々として綺麗なことよ!見よ、これが日本の手描きアニメだ!うん?でも、なんか影が違う。明暗の境目がはっきりしたアニメ塗りじゃない。このシームレスな陰影の変化は3DCGなの?百瀬監督が、スタジオポノックが、手描きじゃないの?手描きだったらすんごい手間じゃないの? なんて見ている間も気になって。でも、子どもらしい肉感に合ってふんわり見えるし、背景の明るさによって変わる影の暗さも自然で良いですねえ!
鑑賞後手にしたアニメ絵本さながらのパンフレットに、上記「クロース」で触れた技術について書かれてありました。日本の長編アニメーションで同じ技術が使用されたのは本作が初めてだそうです。スタッフ一覧によれば、フランスのLes Films du Poisson Rougeというスタジオが手がけているようです。
原作未読なのでどんな描写がなされているか分からないのですが、(当然のことながら)背景が美しく様々な外国の街を歩いているようで、目に楽しい。それから、凄惨なゴア表現がなくても巧みなアニメーションで恐怖感が引き出されるのだなと、怖がりながら感心するシーンもありました。
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本作にはイマジナリ、人間ともに様々なキャラクターが出てきますが、なかでも現実と想像の間にいるようなミスター・バンティング(声:イッセー尾形)が、いろんな意味で怖い!その一部を例えると、視界の端を横切った人が気になってふと横を見るとあきらめ顔の冷たい表情の人物がいてぎょっとする。さらにそれがガラスに映った自分だと分かってぎょっとする。そんな感じ。でも、安心してください。手厳しいだけで終わるわけはありません。こどもには違うものが見えるはずですし。
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45分のドキュメンタリー番組「そして、屋根裏のラジャーは生まれた。~スタジオポノック、その喪失と創造~」が、12月22日からHuluにて独占配信されるそうです。ラジャーのメイキング映像もあればいいなあ。ナレーションはラジャー本編にも参加している寺尾聡。お試し利用で見てみよう。
アニメーション制作の現場には興味津々。先日放送された宮崎駿監督に密着した「プロフェッショナル仕事の流儀」、皆さんご覧になりました?
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今年はこれが最後の更新となります。最後までおつきあいくださりありがとうございました。
皆さまの穏やかな年越しを願っております。