7月26日はカレー記念日

カレー記念日

いつかわかると 思っていたけど このままか

7月26日はカレー記念日

Comet

投稿はこちら

カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
五七五七七形式で、下の句は「○月○日はカレー記念日」なので
上の句の五七五だけ送ってね!

日付は掲載日に変えさせていただきます。

みんなのカレー短歌 一覧 >>

母を葬る

(11)一族の誇り

母が転院して少し余裕ができてきたが、それなりに電話がかかってくる。

母からの頼み事だ。母が病床でメモしたものを看護師さんが読み上げる形で伝えられる。「手紙を書くので机の上にある住所録を送ってほしい」とか、「何か読むものを送ってほしい」とか。「家を相続して住んでほしい」というのもあった。「お前のような出来の悪い娘には相続させない」とあんなに言っていたのに(苦笑)。大丈夫、住まねーよ。

電話は数日に一度はかかってくるので、どうやら看護師さんも困っているらしい。「ナースコール押しまくりでお元気なんですよー(苦笑)」とのこと。大変ですね。。。「今日はお姉さんと弟さんのお話を伺いましたよ。有名人だとか(苦笑)」。うん、「苦笑」ですよね。。。

おばもおじも有名人なんてことは全くない。必死になって検索したら、その業界の人の回想録とかに名前が一瞬出てくる程度。それでも母は自慢せずにはいられないのだろう。自分や夫や娘のことは自慢できないから。誰かに「すごいですね」と言ってもらいたいから。そう言ってもらえないと存在してはいけないと思っているから。

母がよく自慢していたのは、一族の男性がみな東大卒だということだった。どこまでが「一族」なのか、本当に全員がそうなのかはわからないが、母はそう思っていた。

たとえば、私の夫の両親と何回目かに会ったとき(私と夫はその場にいなかった)、定番のその自慢をし、大げんかになったらしい。なぜなら、夫の父親は働きながら夜間高校を出ているからである。そのことを母は「ご苦労されて」「なんてご立派なことで」と繰り返して褒め、その舌の根も乾かないうちに「私の一族は男性はみんな東大卒なんですのよ」と言う。あたおかですよね? 

夫の父親も暴力野郎なので(これはまた別の話)、まるで蛇とマングースの戦いのようであった、と、あとで夫の母親から聞いてからは、この事件は私と夫の間での爆笑ネタとなっている。

何より恐ろしいのは、母の妹の息子(私のいとこ)が、東大に入れなくて若くして死んでしまったこと、そして母がそれを勘定に入れていないことだ。

学部で東大に入れず、大学院で東大に入ろうとしたがうまくいかず、早春の寒い日に公園で雨に打たれて、結果、亡くなってしまった。ある意味、自殺だ。いや、どう考えても自殺だ。そのとき母は「かわいそうに」と泣いていた。泣いていたのに、それ以降もずっと「一族の男子はみんな東大」自慢をしているのである…!

「学歴差別をしてはいけない」と言いつつ、「東大」を自慢し、「娘さんを専門学校に進学させてはどうか」と言われて半狂乱になる。自分が学歴差別していることに気づかない。

私がマニキュアを塗っていると、「パンパンみたいだ、はしたない」と怒る。その一方で、従軍慰安婦の支援団体に寄付をしている。同じ戦争の被害者である女性なのに、なぜ差を付けるのか。

母は「平等」や「人権」を口にしながら、誰かと誰か、ひいては自分と誰かの間に差を付けずにはいられない。

その欺瞞は、娘のためだと口では言いながら、実際は娘を自己実現の道具にしていたこととイコールだ。

私は、母が救急搬送されて以降、マニキュアを次々買っては塗るを繰り返していて、母への反発とストレス解消でそんな散財をしていることは明らかなのだった。

母は4人兄弟で、姉はみんなのリーダー、弟は長男として特別扱い、妹は末っ子として可愛がられ、しかし次女の自分には何もアドバンテージがない、という不利な立場だった。

祖父は官僚で、とても厳しい人だったという(私が2歳のときに死んだので私は覚えていない)。祖父との葛藤は母からよく聞かされた。活動写真を見に行くと怒られ、一方で、ピアノのお稽古は全員にやらせていて、要するにハイカルチャーしか認めなかったわけだ。その教育方針は母にも受け継がれた。

しかし、むしろ戦犯は祖母なのではないか。明治末生まれの、京都の商家の末娘。これからの時代は商人ではなく役人だ、と帝大(つまり東大)出の理想の夫を探すために何回も見合いを繰り返したという。「ふぞろいの林檎たち」の時任三郎の両親が、いい大学、いい会社に固執して時任三郎を苦しめるくだりがあるが、母の発想とそっくり同じで、なんと彼らも昔ながらの京都人なのである。

祖母と同じ頃に生まれた、ある評論家の自伝を読んだら、冒頭に祖先や親戚の著名人の話が延々と続いていた。昔の人は血縁ごとの分かりやすいステータスを求めるものなのかもしれない。ましてや「伝統」を誇りにしてきた100年以上前の京都の商家なら、なおさらだろう。

祖母は時代に合わせて、家柄ではなく学歴、職歴を重視するよう自分をアップデートした。しかし、ステータスに固執するという点では何ら変わるところはなかったのではないか。

母はレーニンの「学び、学び、そして学べ」を座右の銘としていた(それもまたすごいが)。しかし、やってることは、ロシア革命が目指した農奴解放や貴族階級の打倒といった平等の考え方とは真逆なのだ。母にとって、レーニンの言葉は「学び、学び、学んで、いい学校、会社に入ってステータスを得る」に変換されてしまっている。

気の毒と言えば気の毒なのかもしれない。母の世代は戦後教育を受けて平等や人権という考え方を学ぶ一方で、親からはステータスを求められ続けていたということになるからだ。

しかし、それならそれで反発すればよかろうに、葛藤を自覚せず、口先では平等をうたい、内心では他人を見下し、多重人格のようなその矛盾を、娘である私に垂れ流した。

看護師さんの電話からは、母がとにかく「かまってちゃん」になっていることがありありとわかった。挙句に「さみしがっておられるので、電話で話してあげてもらえませんか」とまで言われる。「病室のほかの方はお話できない方が多いので、さみしいんだと思います」。そうか、療養型病院というのはそういうところなのだ。

いやいや、だからといって私は母とかかわりあいたくない、そこは絶対に変えられない。大体、話すことなど何もない。コロナでなかったら面会を求められてしまうところだろう。普通は「面会したいのにできない」と嘆くだろうに、私は「コロナで良かった」と思う。

看護師さんの負担を減らすべきだとはわかっているが、「ごめんなさい、無理です!」と答えて電話を切った。


母を葬る 記事一覧へ


コメント、ありがとー!

  • アバター画像

    とらこ

    母を葬る、という題名に心を鷲掴みにされて、ずっと読んでいます。
    葬ることができたんだ、いいなぁ、というのが率直な気持ちでした。
    次をいつも心待ちにしていましたが、その私が先月母を葬りました。

    やっと。
    ホッとしたのが事実です。
    様々な気持ちが交錯ふるなか、プリ子さんの文章にとても支えられました。

  • アバター画像

    プリ子 Post author

    とらこさん、ありがとうございます! そんなふうに言っていただけて、書いて良かったですーーー(不快感を持つ方も多いかなと思っていたので)
    そして、葬ったんですね…! お疲れ様でした!! ゆっくりなさってください。
    私はこの連載を書きながら、自分の中の母を少しずつ葬っている感じです。もう少し続きますので、よろしくお願いします^^

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。また、コメントは承認制となっています。掲載まで少々お待ちください。


コレも読んでみて!おすすめ記事

昭和乙女研究所

気になっていたおもちゃ『ピープルハウス』

カレー記念日 今週のおかわり!

デイサービス 見極めたいのよ 自分のために

ゾロメ女の逆襲

◆◇やっかみかもしれませんが…◆◇ 第67回 前に書いたかもしれない話

60代、男はゆっくりご乱心

カフェ小景・スイミング同好会

ミカスの今日の料理 昨日の料理

棲家クエスト2: にんじんの胡麻和え

かわいいちゃん

痒くて不調

今週の「どうする?Over40」

「ちょい大きめの笑顔」が幸せを運んでくれるという、あたりまえだけど忘れていた教訓。

母を葬る

(13)負の循環

山あり谷あり再婚ライフ

ちぐはぐな思い

なんかすごい。

晶子の生きた道

四十路犬バカ日和

ヘルニア疑惑で病院へ駆け込む

OIRAKUのアニメ

第105回 T・P ぼん(タイムパトロールぼん)

黒ヤギ通信

777

夫亡き日々を生きる

カリーナからゆみるさんへ 2023年3月15日

絵手紙オーライ!

風邪のトンネル

出前チチカカ湖

第198回 最近 張った見栄の話。

いろんな言葉

That’s Dance!文字起こし 第6回(episode16) やっかみかもしれませんが‥番外編も兼ねて

いどばた。

凹むこと最近ありましたか?

じじょうくみこの崖のところで待ってます

はなやぐお盆、わたしは墓へとタックルした。

ただいま閉活中

お守りが無くなったら

50代、男のメガネは

『レジェンド&バタフライ』で絶望の淵に立つ。

おしゃれ会議室 ねえ、どうしてる?

人生は引き算である

日々是LOVE古着

(終)これからも。これからは。

これ、買った!

くっつかないしゃもじをもう一度買った!

ワクワクしたら着てみよう

最近思うことをとりとめもなく書いてみた♡

わたしをライブに連れてって♪

コンサートwithコロナ

これ、入るかしら?

行き当たりばったりで失礼します

KEIKOのでこぼこな日常

巣ごもりしてたらこんな買い物を…

あの頃、アーカイブ

【エピソード37】最終回記念、私たちのクリスマス!

フォルモサで介護

私が負けるわけがない

お悩み相談!出前チチカカ湖

【File No.41】 私って多重人格!?

ラジオブースから愛をこめて

ノベルティグッズ

着まわせ!れこコレ

冬とウェディングと後れ毛と

このマンガがなんかすごい。

第15回(最終回):マンガよ永遠なれ!

夫婦というレッスン

津端英子さんの一筋縄でいかない個性と行動力がすごい著書「キラリと、おしゃれ」

ハレの日・ケの日・キモノの日

暑くじめじめな7月

眉毛に取り組む。

総集編!眉毛ケアグッズ&お手入れ用品のご紹介

さすらいの旅人ゆりの帰国&奮闘日記

グアテマラ。そこで見た不思議な光景と懐かしい味

新春企画 輝く!カレー記念日大賞2017

輝く!カレー記念日大賞2017

≪往復書簡≫SEX and the AGE 

「女性の健康を守り、5歳若くなる抗加齢医療」だって。ボーっとしてたら、すごいことになってるね。

最近、映画見た?

第12回 「海よりもまだ深く」

Over40からの専門学校 略して「オバ専」

【オバ専インタビュー】今まで知らなかった「責任感」も含めて、人生が大きく変わりました。

じじょうくみこのオバサマー

四十九歳の春だから。

華麗なるヅカトーク

第8回 型、色、数! 嫌なことがあったら、また観に来る!

サヴァランのやさぐれ中すday ♪

in her SHOES ~ おばばは何を考えて? #8

器屋さんのふだん器

ふだん器-38  飛びかんな

2016 みんなのこれ欲しい!

サヴァランの「これ、欲しい!」。

2015 みんなのこれ買った!

【じじょうくみこ】低反発リクライニングソファ、買った!

ブログの言葉

「別冊 どうする・・・」はこんなことを大事にします。(過去記事より転載)

今日のこていれ

「今日のこていれ」最終回。1年間のご愛読に感謝を込めて。

崖っぷちほどいい天気

崖っぷちより愛をこめて〜最終回はカピバラとともに。

アラフ ォー疑惑女子

「もったいないお化け」の世代間連鎖

とみちっちの単身ベトナム&中国

ベトナムって、ハノイって、どう?

晴れ、時々やさぐれ日記

ああ、感謝。巳年と午年のあいだ。

中島のおとぼけ七五調

中島。の気ままに更新「おとぼけ七五調」12

ムーチョの人生相談「ほぐしてハッケン!」

【主夫ムーチョの相談】娘がご飯を食べません・・・。

ミラノまんま見~や!

連載最終回!「駐妻のここだけの話」にしようかと思ったが…災難に遭う!

ウェブデザイナーとの対談

大きな旗は振れないけど、小旗はパタパタと振れるだけ振っていこうと思ってます。

「最高の離婚」ファントーク

<対談「最高の離婚」最終回>ホームから電車に乗ってしまってキスして・・・ロマンチックでしたね。

スパコレ

美味しい缶詰を教えて!

2014 新春企画

どうする?Over 40 新春企画「物欲俗欲福笑い」♪( メンバー編 )

フォルモサ(台湾)の女

あずみの台湾レポート「やっぱり紅が好き!フォルモサの女たち」(13)〜不景気顔卒業します

ゾロメ女の図書館小説

帰って来たゾロメ女の逆襲 場外乱闘編 連載図書館ゴロ合わせ小説  『ライ麦&博 完結編』 後編

青蓮の「マサラをちょいと」

青蓮の「マサラをちょいと~人生にもスパイスを効かせて~ VOL.12」

Tomi*さんの最適解

「Tomi*さんの最適解。 ・・・白髪とコムデギャルソンとヤフオクと」  マインド編②

YUKKEの「今日もラテンステップで♪」

YUKKEの今日もラテンステップで ~VOL.13

7月26日はカレー記念日

カレー記念日

いつかわかると 思っていたけど このままか

7月26日はカレー記念日

Comet

投稿はこちら

カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
五七五七七形式で、下の句は「○月○日はカレー記念日」なので
上の句の五七五だけ送ってね!

日付は掲載日に変えさせていただきます。

みんなのカレー短歌 一覧 >>

よもじ猫

阿鼻叫喚

猫No.6  by ミカス

猫大表示&投稿詳細はこちら!

阿鼻叫喚

猫No.6  by ミカス

よもじ猫とは…

全世界初!?四文字熟語と猫のコラボ!

「よんもじ」と猫がペアになって、ランダムに登場します。
ふだん着の猫の一瞬を楽しむもよし、よんもじをおみくじ代わりに心に刻むもよし。
猫が好きな人も、そーでもない人も、よもじ猫の掛け軸からタイム&ライフトリップして、ときどき世界を猫目線で眺めてみませんか。

みなさんの猫画像の投稿をお待ちしています。

投稿はこちらからどうぞ

カイゴ・デトックス 特設ページができました

Member's Twitter


  • カリーナのBILOGはこちら!「ともに生きる。

  • ZOOMでプライベートレッスン、リモート英会話AQUA
  • BLOG版 ウチの失語くん
  • 植松 眞人さんの本がでました♪「いまからでも楽しい数学―先生と数学嫌いの生徒、35年後の補習授業」
  • 「出前チチカカ湖」連載中 まゆぽさんの会社「シリトリア」

Page up