2017年、私のベスト本はこれです!
お寒うございます。こちらではお久しぶりのつまみです。
年も明け、すでに1月が終わろうとしておりますが、それにしても、の寒波襲来!
インフルエンザも蔓延しているとのこと。みなさま、大丈夫でしょうか。
お待たせしました!
毎年(または半期)恒例の『ベスト本』を発表します。
遅くなって申し訳ありませんでした。
旧年中に早々と原稿を提出してくれた人も何人かいたのに、わたしはダラダラしてました。
いやもう、面目ござらん(都合が悪いと口調を変える姑息作戦)。
それはさておき、この企画、何年も開催しておりますが、今回も今まで同様、参加者全員がそれぞれ違う方を向いている「ひとり一派閥」っぷりが顕著で、麗しいったらありゃしません。
どうぞ、お手すきのときにごゆるりとご覧ください。
そして、もしよろしければ、コメント欄でベスト本を教えてくださいませ。
今年も「どうする?over40」をよろしくお願いいたします。
※50音順 敬称略
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では、ずずずいと一気に公開します!
□□青豆□□□□□□□□□□□□
『ぬるい毒』 本谷 有希子/著
□□uematsu□□□□□□□□□□□□
『埴原一亟 古本小説集』
埴原一亟(はにはらいちじょう)は戦前に三度芥川賞にノミネートされながら、現代では忘れ去られた作家だ。夏葉社から出版されなければ僕もきっと読むことはなかった。ここには古本屋を四苦八苦しながら営み、それでも小説を書き綴る埴原の姿がある。しかもそれは、ほんの半歩ほど私小説から先を歩こうとしていて心地よい。傑作選ではないが愛おしい、ああ、知ってよかったと思える小説集だった。
□□カリーナ□□□□□□□□□□□□
『だから、居場所が欲しかった。
~バンコク、コールセンターで働く日本人~』 水谷 竹秀/著
バンコクで日本企業のコールセンターで日本語で働く日本人を取材したノンフィクション。
大使館職員を頂点とした在タイ日本人のピラミッドのほぼ最下層に位置するらしい、コールセンターで働く人々がどんな経緯で何を求めてタイにやってきたかが語られます。
決して希望があるとはいえないものの、どうせ希望がないなら息苦しい日本にいるよりいいのではないか…と思える「居場所そのものがハケン」のような生き方。
水谷氏が取材対象に似たところのある生き方のため、彼らを断罪しない、否定しない、むやみに共感もしない筆致がよかったです。
□□Comet□□□□□□□□□□□□
『ワンダー』 R.J.パラシオ/著
顔に重度な障害を持って生まれたオーガストは、10歳にして初めて小学校に通い始める。好奇の目に晒される少年、彼を見つめる姉、そして学校の友達。それぞれが抱く葛藤が一章ごとに一人称で語られ、そのすべての立場に共感できる。「自分と違う」相手は怖いのだ。怖くて当たり前なのだと認めることが、障害や差別を考える第一歩なのだな。
世界的ベストセラーの児童書だと友達に教えてもらって読んだ。この本を読んで育った子が作る未来は明るいと思った。
*ジュリア・ロバーツ主演で2017年11月に映画化されて、2018年には日本でも公開されるようです。
□□権太□□□□□□□□□□□□
『3月のライオン』 羽海野チカ/著
□□爽子□□□□□□□□□□□□
『もうレシピ本はいらない』人生を救う最強の食卓 稲垣えみ子/著
□□つまみ□□□□□□□□□□□□
『野良猫を尊敬した日』 穂村弘/著
2017年の前半に読んだのですが、理由は忘れたものの、落ち込んでいるときに手にとりました。そして一気に読んで、読み終わったときは「いい大人で、こんな情けないことをいちいち掘り下げて書いているほむほむでも立派に(実際に二度ほどトークライブに行きましたが、都会的でスマートな紳士然としていらっしゃいました)生きているのだから、私も大丈夫だ」と思いました。
□□はらぷ□□□□□□□□□□□□
『ペーパーボーイ』ヴィンス・ヴォーター/著
じつは、4月に職場の図書館で児童担当に異動して以来、仕事の児童書(主に新刊)ばかり読んでいて、自由な読書をほとんどしていない…。
この本も、中・高生向けのおすすめ本リストにのせるために本を選んでいて出会ったのですが、これが大当たりで、私にとって大事な一冊になりました。
舞台は、1950年代終わりのアメリカ・メンフィス。主人公は吃音症を持つ12歳の男の子で、夏のあいだ、田舎にでかける友だちの代わりに新聞配達(ペーパーボーイ)のアルバイトをすることになります。
彼が新聞を配達する先で出会う、さまざまな人々、かいまみる大人の世界、退廃の香りをまとったほのかな初恋、そして、当時の南部の根強い黒人差別を背景に起こったある事件、家族の秘密…。
彼をとりまく大人たちがまたそれぞれに魅力的なのですが、とりわけ、配達先のひとつである、自由な精神を持つスピロさんとの出会いがすごくいい。子ども(12歳をそうよんでいいのかわからないけど)には、親じゃない、自分をひとりの個人として扱ってくれる無責任な大人の存在が必要だ、ってあらためて思った本でした。あとさ、この20世紀中期のアメリカ独特の夏の光…この眩しさはいったいなんなんだろう。
原田勝の訳がまた見事です。『弟の戦争』(ロバート・ウエストール/著)を訳した人ですが、この人の手がけた翻訳ものをもっと読んでみたいな。
□□ハラミ□□□□□□□□□□□□
『最果てアーケード』 小川洋子/著
義眼屋、ドアノブ専門店、勲章店、遺髪レース…、古いアーケードにあるさまざまな店でのエピソードが短編風に構成されています。静け
さと微かな哀しみが全体的に漂い、実際には無さそうなお店が小川さんの表現力にかかると現実にありそうに思えてきます。読んだ方がいらしたらラストの解釈を聞きたいなぁと思います。
現役の地方競馬厩務員さんが描いた実話競馬コミックです。
競馬と聞くと遠い世界のようだけど、競走馬のお世話係である厩務員さんの日常を見て
いると、やっぱり生き物と関わるって、楽しくて大変で、可愛くて切ないものなんだな
ぁと、共感する点が盛りだくさんでした。そして、競馬だからこその問い「競走馬の幸
せとは何か?」は、生き物と共に暮らす一人として、とても考えさせられました。
□□プリ子□□□□□□□□□□□□
『笹まくら』 丸谷才一/著
米原万里が「うちのめされた」と評して有名なので、今更かもしれませんが、本当にうちのめされました。
1960年代、40代の大学職員の男性の日常。の中に突然、一行アケすら無く、全くシームレスに、しかもランダムに「過去」があらわれます。
バラバラ の時系列と格調高い文体に幻惑されながら見えてくるのは、戦時中、徴兵を忌避し、別人になりすまして全国を逃げ回っていた事実。
逃亡にハラハラし、刹那的な恋愛に悶え、それが現在にリンクしていくことに驚き。
ファンサイトを作ろうと思ったぐらいはまりました。
□□まゆぽ□□□□□□□□□□□□
『ポーランドのボクサー』 エドゥアルド・ハルファン/著 松本健二/訳
主人公はアメリカ在住のユダヤ系グアテマラ人。そのおじいちゃんはアウシュビッツを生き延びたユダヤ系ポーランド人。ふらふらと旅をするのは南米だったり、東欧だったり。ここのところ世界中で大きな問いかけとなっている「国って何?」「人種、国籍、民族ってどういう分類なの?」などの疑問について、やっぱりいろいろと考えたり感じたりさせられる連作短編集でした。表紙の絵も好き。
あともう一個!
『マチネの終わりに』 平野啓一郎 著
アラフォーの恋愛小説です。スノビッシュと言われたら、その通り。東京に住む有名なクラシックギター奏者と、超有名映画監督を父に持つパリ在住の美人ジャーナリストが一目で恋に落ち、なかなか会えない長距離恋愛を育み、そして突然起きる理不尽な事件。そして数年の後…、という余韻たっぷりのラストシーンへ。あまりに真っ当な恋愛で、60歳を過ぎていろいろと汚れをまとってしまった心にちょっと眩しい小説でした。
□□ミカス□□□□□□□□□□□□
『数え方の辞典』 飯田朝子/著 町田健/監修
皆さん、かっこいい小説とか、難しそうなフィクションを挙げるのだろうなぁ…と思
いつつも、
敢えてこの1冊を
タイトル通り、色々な物の数え方=単位の辞典なのですが、
調べ物のの時だけに使うにはもったいないくらい面白い!
例えば「鬼」。
鬼の数え方なんて考えたことありますか?
そこ、「だいたい、鬼を数えることなんてないし」なんて言わない。
この辞典によると
「動物として扱う場合は『匹』、人間的な性格を持つものとして捉える場合は『人』
でも数えます」
(『数え方の辞典』42ページより引用)
動物として扱うのか、人間的な性格を持つものとして扱うのか…
なんて切ない存在なのでしょう、鬼。
『泣いた赤鬼』を彷彿とさせる感慨が湧いてきます。単位なのに。
また、「蒸し器」を数える単位には、台、個、具が挙げられているのですが、
「現代の蒸し器は『台』『個』で数えます。古くは揃いの器具を数える『具』で数え
ました」
(『数え方の辞典』291ページより引用)
とあります。
揃いの器具を『具』で数えていたなんて知りませんでしたが、日本語の奥深さを感じ
ます。
昔、外国人に「長い物を数える時は『本』を使うのに、この長細いグラスを数える時
に『本』を使わないのはなぜ?」
と聞かれたことがあります。
そう聞かれると、日本語ネイティブスピーカーの私もちょっと首を傾げてしまいま
す。
でも、そのちょっとした疑問を突き詰めていけばいくほど日本語ってすごいなと感じ
ます。
実際に使うことはないものがほとんどだとは思いますが、
じっくりと読み進めると日本語の楽しさを実感できます。
□□Mikity□□□□□□□□□□□□
『離陸』 絲山秋子/著
主人公の佐藤弘は、国交省のエリート官僚。
利根川水流矢木沢ダムで水管理の仕事をしている。
世の中から隔絶されたダムでの仕事が嫌いではない。
ある冬、雪で覆われたダムに1人の黒人フランス人が忽然と現れ、「サトーサトー」と声を掛けてくる。
この見知らぬ黒人フランス人が「佐藤弘」のことを全編にわたって「サトーサトー」と呼び続けるのだが、この呼び名を最初に目にしたときに、「あ、この話好き」と思った。
舞台は矢木沢ダムから、フランスへ飛び、最後は日本の九州地方の唐津で終わりになる。
多くの人が登場し、そして死んでいき、タイムスリップや、暗号解読などミステリー色も強く、飽きさせない。
そして最後にタイトルの「離陸」に込められた意味が分かると、「ほぅ」という感想が自然にもれた。
物語にどっぷり浸かりたいときにお勧めの一冊です。
□□YUKKE□□□□□□□□□□□□
「羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季」ジェイムズ ・リーバンクス/著
体中に染みわたるビタミン剤のようなエッセイで、新しい知らない世界を体感するという本来の読書の醍醐味を感じた一冊。
600年以上続くリーバンス家の羊飼いの話。本当に羊飼いの日常が淡々とつづられているだけ。それなのに、読み手をぐんぐん引き付ける魔法のような本で、すっかり翼が生えてあの湖水地方に飛んでいるかのよう。読書の楽しみは、こういうことをいうのだなというのを実感させられました。本国英国でのベストセラー(2015年)、アメリカでの人気、世界中での翻訳、日本ではようやく今年の翻訳出版に。
筆者は、日々の生活をツイッターでも画像をアップしていて、読後にフォローしたら、本にできてくる羊の認証票や、マークの色付け、羊の群れ度とに違う顔や毛並みの様子もよくわかり、面白さが倍増しました。
「60歳からの外国語修行」 青山南/著
今年もおもしろい本にいっぱい出逢えますように!
byつまみ
★藍原さんの立体イラストやキャラクタデザインはこちらから→ユキスタジオ
凜
こちらで皆さんが紹介してくださってる
「ワンダー」「ペーパーボーイ」「笹まくら」「3月のライオン」
読みました!どれも読んでよかったです~
「ワンダー」は「もう一つのワンダー」て続編があるみたいなのでそちらもぜひ読んでみたいです。
「ペーパーボーイ」もそうですが、子供の語り口だとすらすら読めてしまいますね。みずみずしく、でもこどもならではの苦しさもあり、だからこその成長もあり。
でもこどももおとなも基本的な悩みは変わらないなあ・・・とも感じ。
「笹まくら」はじわじわと最後まで怖さが迫ってきますね。これは日を置いてもう一度読もうと思いました。プリ子さんがハマるのわかります!
「3月のライオン」はただいま8巻まで突破!これは全巻買いたいほどヒット!将棋がわからなくても面白いですね!島田さんが好きです(^^♪
不定期でまた「ベスト本」特集よろしくお願いいたします!!私にはひじょうにありがたい特集です(^^)。
つまみ Post author
凛さん、こんばんは。
読んでくださったという反応、いっとううれしいですし、「ありがたい特集」と言っていただき、こちらもありがたくてもう、いっとき花粉症を忘れました(^-^)
わたしも、『ワンダー』と『ペーパーボーイ』、読みました。
どちらも生きづらさを抱えた少年を逃げずに描いていて、ズシンときましたが、周囲に、固定観念で人を見ない、きちんとこどもの気持ちと向き合う大人がいるということが、こどもにとってどんなに大事なことか、と、しみじみ思いました。
悩んで迷って苦しんで、それでも死なずに生き続けることの意味みたいなものは、やっぱり人生の先輩が示さなきゃウソだろ、と思ったり。
ああ、語っちまった(^^;