Posted on 2018年1月25日 by つまみ

ゾロメ日記　NO.81　雪の降る街で思ったこと

◆１月某日　ワタシ タシカニ イタンダ

中学の同級生ミサキと会う。
彼女とわたしは中２中３と同じクラスだった。ミサキは大人っぽい雰囲気の、見るからに利発な中学生だったが、わたしはほっぺたが赤くこどもっぽい、地味な中学生だった。わたしの唯一の取り柄は「そこそこ」お勉強が得意なことだったが、それ以外は概ね「こそこそ」していた。そして、堂々と楽しげに中学生活を送っている（ように見える）人たちに羨望のまなざしを向けていた。

当時、わたしの家はどよんとしていた。父が銀行を辞め事業を起こしたのだが、上手く行かず、専業主婦だった母がパートに出、疲れた顔ばかり見せるようになった。

中二ぐらいになると、母は、わたしの中学卒業を待って、会津の実家に戻るつもりであることを折に触れほのめかすようになった（なのに、正式に「離婚する」と表明したとき、わたしが驚かないことにショックを受けていた。…めんどくさっと思った）。

父はほとんど家に居なかったので、わたしには母についていく選択肢しかなさそうだった。そうなると、自分の高校受験はどうなるのだろうと心配になった。

今はどうか知らないが、当時は、卒業した中学の学区外の公立高校受験はできなかった。どんな事情があっても…たとえ卒業後すぐに引っ越すことが決まっていても。わたしは、福島市の高校を受けて転校するしかないようだった。

受けようと思っていた高校は進学校だったが、行かないとわかっている高校を受けることに虚しさを感じた。いったんそう思うと、一気にいろいろなことが虚しくなった。でも、家のことは友達には話さなかった。

同情されたり心配をかけることがイヤ、というのもあったが、話すことで、「虚しい気持ち」が「虚しい現実」に変わるのがイヤだった。ギリギリまで「ないこと」にしていたかった。

結局、志望校は変えなかった。「ないこと」にしているうちにタイムリミットになってしまったのだった。わたしは、福島市の女子高（今は共学）を受験し、合格し、入学式を待たずに、母の実家の近くの共学に転校した。

ランク的には下の高校（書き方が不遜だが便宜上）に転校したのに、高校時代のわたしの成績は鳴かず飛ばずだった。高校の友人KKが短大で、わたしと同じ中学の人と知り合い、わたしの名前が出て「お勉強ができる人だよね」と言われたらしいが、KKは一瞬、その人は自分の知る月亭つまみとは別人だと思ったらしい。…とほほ。

中学時代までの友人とは今、年賀状以外ほとんど連絡を取っていない。十代までは引越しばかりしていたので、幼なじみはいないし、両親も長兄も亡くなってしまったこともあって、あの頃の自分はもう自分の中にしか存在しないような気になっていた。

だから今日、ミサキに突然「つまみはあの頃、本当におもしろかったよね。発想が豊かで、なんでそんなことを考えつくんだろうとよく思った」と言われたとき、虚を突かれてしばらく固まってしまった。不意に、自分の知らない自分がひょっこり登場して面くらった。

あの頃の自分が、自分の中以外にもいたことに、バカみたいに驚いた。しかもその自分は、自分の中にいるおなじみの自分とかなり違う。モノクロと総天然色（死語？）ぐらい違う。そうなの？ミサキにはそう映ってたの？やだっ！それならそうと、もっと早く言ってよ！？と思った。

初めて、中学時代の自分の存在を肯定された気がした。「ワタシ タシカニ イタンダ」と思った。最新の自分は、それまでの自分の集大成だと思って暮らしてきた。だから、この年齢になっての心強い要素というか構成員（自分だが）の参戦がうれしい。

◆１月某日　プレミアムが付いた人

CSの『昨夜のカレー、明日のパン』一挙放送を録画。動画では見ていたが、パソコンではなくテレビの画面で見ると全然違う。こんなに違うものなのかと驚いている。

小説も良かったが、ドラマの味わい深さ、たまらない。苦手な鹿賀丈史さえ、このドラマではいい。（←ナニサマっ！）

ただ、ネットの感想を見ると、感情移入する方向が「星野源がステキ。源ちゃんが（「一樹」だってば！）死んじゃったら、そりゃ前に進めないわ」方面に偏ってて、イヤイヤイヤ、確かに星野源はいいけど、そこだけフィーチャーされちゃうのはちょっと…と思う。

このドラマがNHK BSプレミアムで放送されたのは2014年。Before逃げ恥だ。After逃げ恥だったらキャスティングされなかったのではないか。スケジュールとかじゃなく、世間のアツい気持ちが付与され過ぎて。星野源、「ブレイクすごいプレミアム付」になったってことで、BSプレミアムかも！？…くだらない。

by月亭つまみ

【木曜日のこの枠のラインナップ】
 第１木曜日　まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第２木曜日　つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲　月刊 切実本屋】
第３木曜日　はらぷさんの【なんかすごい。】
第４、５木曜日　つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲　ゾロメ日記】

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