長所と短所を言いなさい、と先生は言う。
長所と短所を言いなさい、と先生は言う。
小学生の頃、こんな質問がよくあった。たとえば、学校の作文のお題として、「私の短所」みたいなのがあった。先生としては、こんな作文が狙いなのだろう。
ぼくの短所は、気が短いことです。
この間も、○○くんとケンカになってしまいました。
原因はぼくが短気だったからだと思います。
これからは、短気をなおして、みんなと仲良くしたいと思います。
だいたい、落としどころが最初から見えやすい課題というのは、生徒は取っつきやすい。いま学校で教えたりすることもあって、余計にそう思うのだけれど、本当は何もないところから自分自身で思いつかないと、まったく何の意味もないことを先生たちは知っているのである。知っているのではあるが、集中力と根気のない生徒の前で、そんな理想や事実はなんの役にも立たないのである。
誰もが一瞬にして、課題の解決策を見つけ出し、誰もが一瞬にして、オーソドックスな道筋を提示できる課題が一番いい。生徒もラクだし、なによりも先生がラクだ。そして、みんなが充実感に包まれる。
果たして、そんな充実感になにか意味があるのかと聞かれれば、あると答える。どんな?と聞かれたら、大きな声で、「だって、そのほうが楽しいんだもん!」と答えることだってできる。
だけども、楽しいんだけれども、つまんないのさ。たぶん、楽しいと書いて、ラクと読む、というくらいに、その手の楽しさは、すぐにつまんなくなるのさ。
だって、予定調和ほど、つまんないものはないもの。そこに気付いたもん勝ちなんだけどなあ、と思う。思うんだけど、気付いたらそれはそれで地獄の始まりなのさ、と。時々、若い奴らをみていると、本能的に「このまま行くと地獄が待っている」と察してるんじゃないのか、と思うことすらある。
いや、そりゃないなあ。たぶん。
どっちに転んでも、気合い入れないと生きていけないんだよなあ、と小さくため息を吐くのである。
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。
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