訪問者
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7日、7都道府県に緊急事態宣言が出されると、私が働いている図書館も、ついに完全閉館になってしまった。ホッとする気持ちと、学校も閉まって、こんなときこそ図書館の出番なのに…と思う気持ちの両方がある。
閉館が決定し、実際に閉まるまでの2日間、図書館は最後のチャンスとばかりに予約した本を借りに来る人たちでけっこう混んだ。
ふだん無言で本を借りていく人たちも、みんな何か言っていく。「しょうがないよね」「いつまで続くのかねえ」「図書館閉まるとこまるわー」
そして、ねぎらいの言葉をかけてくれる。「今まで開けてくれててありがとね。」「気を付けてね。」みんな優しい。
常連さんと、「たっしゃでなー」と手を振り合う。
「Hさんとまた会うために生きのびるわー」お、おう。おたがいがんばろう。
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不特定多数の利用者さんと接する図書館は、働くものにとっては感染リスクのわりと高い職場だといえるだろう。図書館では私語をしないから…という意見もあったが、カウンターにいると、どっこい常に誰かとしゃべっている。常連のじいさんや、常連のじいさんや、常連のじいさんと…。
でも、仕事をしているときは、うつったらこわい、と不思議と思うことがない。同僚でも利用者さんでも、目の前ににんげんがいると、ついついこわさがふっとんでしまう。
冷静には、働く人の安全をちゃんと確保してほしい、などと言っているのに。
目の前のふつうが続いていってしまう。
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閉館後、ついに私たちも交代勤務や自宅待機になるのかな、と話していたら、「このまま通常勤務です。この機会にやれる仕事をやってください。」みたいな感じになって、働かざるもの食うべからず、ということらしい。さすがにそれはない…とみんなで言い合う。
たしかに、感染症なんかが理由でなければ、閉まってる間にやりたいことは山ほどある。毎日出勤したっていいくらいだ。
でも、休業要請って、利用者さんを感染させないためだけじゃなく、通勤する人もできるだけ減らして、人の移動で増える感染者を抑えることが目的なんじゃないのかね…。
と、職場も騒然となり、もう仕方がないから有給使って自衛しましょう…となったところで、今日(4/15)突然、事態が動きそうな知らせである。これが更新されるころには、何らかの対策が決まっているかもしれない。(自宅待機だが無給、なんてことになりませんように…。)
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コロナの前に、人類は皆無力で平等…かというとそうでもなく、実際は、多くの非正規雇用の人々が、窓口やレジや福祉や流通や、その他テレワークなど望むべくもない現場で、感染のリスクをかかえ、低賃金で働いている。ウィルスでさえ、格差社会を免れない。
今世界中でロックダウンや休業要請が出ている中、私たちがいつものようにスーパーに行ったり、ネットで買い物したり、必要なら電車に乗ったりできているのは、彼らが働いてくれているからだ。
今この瞬間も、最前線で働いている医療従事者、保健所の職員たち(その多くが非常勤)、インフラを支える人達に、どうか危険手当と、慰労金と、十分な休暇を、と願わずにいられない。
(4/16 11:57加筆)
いちばんいちばん、いちばん大事なことを書きもらしていました!
今最前線で働いている人すべてに今、いちばん大事なことは、彼らの命を守るための、科学的根拠に基づいた安全対策と、必要な物の供給です。
読み返していて気が付き、ここで加筆させていただきます。
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人間界の不穏さなどどこ吹く風で、今年も春はあらあらしくやってきた。
冬に陽の当たらない我が家の庭は、球根か低木、地下茎で冬越しする植物のみが春を迎えることができる。クロッカス、花韮、水仙、チューリップ、草木瓜、山吹、シャガ、小手毬。
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うちは、いわゆる旗地のうえに、横も前も隣家に囲まれていて、道路からは庭があることがまったくわからない。
春、2階のベランダから見下ろすと、いかにも秘密の庭めいていてよい。
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ところが最近、この庭の存在をかぎつけるものが現れた。
前の家の子どもが最近大きくなってきて、家まわりで遊ぶようになったのだ。2軒隣同士でならんでいて、両方に同じくらいの年格好の子どもがいる。ふたりが昼間何をしているかというと、家の外構をぐるぐる回りながら、きゃあきゃあとかくれんぼをしている。「もういいーかい」「まあーだだよ」と、誰かが教えたのか、はたまた土地のDNAか、おなじみの節が口をついてでるらしいのが、本当に不思議だ。
彼らが、家の裏手に接しているうちの庭を、ときどきねこのように覗き込んでいるのを私は知っている。
子どもの目にこの庭はどのように映っているのだろう。そのうち、こっそり塀(低い)をのりこえて入ってくるのではないか、そしたらラプンゼルのおばあさんみたいに、魔女が住んでいると思わせたい…。
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そして、庭の常連である2匹の猫(正真正銘の猫)のうち、ここのところシロちゃん(もう一匹の猫トラちゃんと比べ、白い部分が多いから)との距離に微妙な変化を感じている。
警戒心がひどく強く、そのわりにほとんど毎日来るという猫の中の猫の女シロちゃんなのだが、先だっては、嵐の夜だというのにやってきて、室外機にすわって窓越しに家の中をじっと見ている。外は寒い。
とうとうがまんしきれなくなって、うちの猫らを別室に移し、窓をあけてカリカリの器を家の中に置いてみた。すると、シロちゃんはしばらく逡巡した後、入ってきてカリカリを食べた。
…ど、どうしよう。招き入れておいて、この先のことをまったく考えていなかった。
少し離れたところで立ち尽くす私とオットの前で、シロちゃんは驚くべきことに体ぜんぶを家の中に入れて、しばらく匂いをかぎまわったあと、帰っていった。
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ほっとしたような、がっかりしたような気持ち。しかしじっさい、シロちゃんがあのまま居着いたら、ティーちゃんとスマは容易には許さないだろう。
ある日突然事態が動く。ティーちゃんが私たちについに気を許したあのときと、同じ感じがする。ほんとうに、どうするか考えなくちゃ。
今日もシロちゃんは昼間やってきて、なんと、私の指からチュールを食べました。
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By はらぷ
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※「なんかすごい。」は、毎月第3木曜の更新です。はらぷさんのブログはこちら。
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Jane
自然体ですてきなお庭ですねえ。そこでお茶飲めそう。
うちも昨日庭に訪問者あり。前の芝生をうろうろ歩き回ったり芝生の土を脚で掘ったり。窓辺にいた私と何度も目が合えど、何か合図するでもなく裏庭へ。
猫じゃありません、仏頂面のマスクしてないおじさん二人です。おいおい誰なんだよーと思えど、玄関開けて対面で話す勇気もなし。四方面塀もない庭ですから七面鳥も人間も車まで入り放題。
同じ通りの家々の庭も囲まれていないので、前庭にビーチチェアだして、水着で素足出して寝転んで本を読んでいるおばあさんとか、普段ガーデナー任せの庭掃除をやっているおじさんとか、宅配のものを庭の真ん中に置かせて半日日光消毒するまで触らないお隣さんとか、いろいろ皆さんがこの外出制限中に何やっているか見えます。
でも私は秘密の庭がいいな、風情があって。
はらぷ Post author
Janeさん、こんにちは!
庭を褒めてくれてありがとうございます。
自然体というといい響き…しかし正体は放置です(笑)
この庭はすごく不思議で、庭先10メートル近くあるのに、幅は家より狭い2メートルほど。
つまり、家の前に、隣の家の庭(写真でいうと、黒いシート貼ってある部分)と自分ちの庭がはんぶんこの割合で広がっているのです。なにがどうしてこうなった。
初めて内見でこの庭を見たとき、私たちは狂喜乱舞し、実ははんぶん…という説明を受けてびっくりしました。
このへんてこな庭のおかげで、買い手がつきづらかったと思われました(つまり安かった)
春だけはすごくかわいいのですが、今現在すでにドクダミとヤブガラシが汎図を拡大しつつあります。
そしてこれからまもなく、11月近くまで、ヤブ蚊の天国となっていく…野生の王国。
Janeさんちの訪問者、と、通りがかりのおじさん…?
そして、七面鳥…?
アメリカのおうちの庭も、私にとってはあこがれです。
アベニュー沿いに並んだおうちの前に庭がひろがっていて、ペーパーボーイが新聞投げていくようなの。
ときどき庭先でバザーとかセールとかやってるの。
ベランダにブランコがあったりするの(妄想が止まらない)
「がんばれヘンリーくん」の世界!
ビーチチェアの水着おばあさんなんて、死ぬまでに一度は肉眼で見たいです!
そして職場は予想通り、急転直下で「出勤7割減!」となり、交代勤務となりました。
自宅待機の日もお給料は補償されるとのことで、ほっとしています。
Janeさんも引き続き、お気を付けてお過ごしくださいね。
AЯKO
常連のじいさんや、常連のじいさんや、常連のじいさんと…。ってとこで爆笑しました。うちの図書館とまるで同じ。じいさん達は今何をして過ごしてるのか、人と毎日ちょこっと話す居場所を取り上げてしまって、心身が弱っていないか心配です。
閉館中勤務があった3月は猛烈な勢いで書架の大移動と、寄贈クラッシックCDの受入れをやってました。しかし自宅待機になって、全て途中になっています。いつ開館できるんだろう、、、。
感染リスクの高い職場ですが、手袋着用とカウンターをシートで遮断して、予約本ぐらいは貸出したい気もする。こんな時だから、本を読んだり音楽を聴く慰めがあってもいいのではと思います。
でも病院の状況をこれ以上ひどくしたくないですよね。誰でも検査を速やかに受けられて、軽症者でも必要な医療ケアを受けられるようになったらかなあ。
はらぷ Post author
AЯKOさん
またしてもひと月越しのお返事ほんとうにすみません!
ほんとうに、常連のじいさんたちがどうしているか心配です。
関東ももうすぐ緊急事態宣言が解除されれば開館、となりそうですが、顔を見るまでは安心できませんよ…。
まだまだ自由に閲覧、とまではいかない気がするので、新聞おじいさんたちに会えるのはもう少し先になりそうです。
うちの職場も、これを機に蔵書を見直そうと、除籍や買い替えをすすめていたのですが、勤務日が減ってからというものなかなかできなくなって、ブックトラックにのせたまま放置されています。開館したらもっと忙しくなるし、本当にいつできるのだろう…。
なくなっても直接的に命にかかわるものではないけれど、やはり本を読んだり音楽を聴いたりという楽しみは人間に必要なものだと思うし、それを平等に提供できる図書館を、閉めてしまってよかったのだろうか、と考えてしまいます。
しかし、開館したら予約受け渡しだけといっても、混みそうだなあ。
3密防止対策はかなり難しそうです!
おたがい気を付けよう。