第18回 かぐや姫の物語
『かぐや姫の物語』は2013年公開のアニメーション映画です。スタジオジブリ制作、故高畑勲監督の遺作で、ご覧になった方も多いことでしょう。
ジブリの作品て、こんなに楽に見られるものだっけ?
画調がさらりとして、目に優しい。さらりとしているけれども、特級アニメーターの画力でどのカットも美しく、みずみずしい水彩の、動く絵本を見ているよう。男鹿和雄氏が描く野山の背景から、眼福を得ました。
赤ん坊の寝返りから歩き始めるまでの様子や、鳥獣戯画のようなススっとした手描き線で描かれたキャラクターたちがくるくると動いて、楽しい。大スクリーンで耐えられるか心配なほど色が少なく、筆勢のままかぐや姫が走るシーンは、何度見ても鳥肌が立つ。声優さんの似顔絵?と思わせる求婚者たちの容貌が、笑える。顔の造作は薄いので、かぐや姫の怒りの形相や、嫌悪の表情が、強烈に目に焼き付きます。
「翁ってば…」「かぐや姫、きびしい」「それは無いわ、御門」とつっこみながら、「姫の犯した罪と罰」とは、あれか?これか?と思いめぐらす。画の密度が薄いからか没入感が薄く、いろいろ頭に浮かぶのです。風刺を見つけ(たつもりで)ニヤリとし、いつの世も人は変わらぬものよと悟ったふりをし、後悔の無いように生きねば!と、腹をくくった気になる。何を思ってもOK。何を投影してもOK。
大まかなプロットは知っている。けれど、面白い。突飛なエピソードを取り除けば、現代女性が平安時代にタイムスリップして「この世ならぬ者」になったのか?と思わせる。映画を見た後に原作を読むと、面白さが増します。
クリエイターの意図を丁寧にくみ取ろうとする見方もあるけれど、人は見たいものを見るのです。私が年をとって、ジブリの圧に負けなくなってきただけかな?
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今日から東京国立近代美術館で「高畑勲展」が始まります。音声ガイドナビゲーターは、中川大志。朝ドラ「なつぞら」では、麻子さん、なっちゃん、坂場さん(高畑氏がモデルと思われる・中川大志が演じる)が、20分のショートアニメを作ることになりました。作中アニメで、かぐや姫のプロローグが見られると、良いな。
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*アイキャッチ画像と動画は、当該作品の公式HPより