第62.5回 浦沢直樹の漫勉neo~安彦良和~
こんにちは!暖かくなりましたね。3月も第5週!うちの周辺でも桜が開花しはじめましたよ!
さて。
「浦沢直樹の漫勉neo」(Eテレ)という番組をご存知ですか。ひとりの漫画家の仕事場にいくつか定点カメラを設置し、数日間執筆の様子を撮影させてもらい、その映像をMCである漫画家の浦沢直樹がご本人と見ながら、創作についてのお話を聞く番組です。漫画家は毎回変わります。パイロット版を経て、2015年から「漫勉」が4シーズン、2020年から「漫勉neo」が始まりました。
そして「浦沢直樹の漫勉neo~安彦良和~」が、さきごろ第25回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門の大賞に選出されたのです。この回をご覧になった方はおられるでしょうか。2021年6月9日放送回です。30分ほどの番組が「大賞」って、すごい!
安彦良和の画についてはこのコーナーでも「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」(第36回)で絶賛しているので、当時私は、わーい♪やったー♪とミーハー気分で放送を心待ちにしていました。番組が始まると、その描き方に瞠目しました。ポカンと口も開きました。
この記事のために見直しましたが、その唯一無二の描き方には何度でも目をみはります。
安彦さんは白紙を前にしばらく熟考し、コマ割りを決めたら鉛筆で下絵を描き始めるのですが、もうそれが(浦沢さんの言葉を借りると)決め打ちなのです。線を何本も書いて最適なラインを探ることが一切ない。
あるコマでは、スッスと数本線を入れ、木造家屋の梁の上からみた俯瞰の構図を描いたかとおもうと、まず手前の人物の後頭部から描き始める。最終的にそのコマには4人の人物が配置されるのですが、セリフの吹き出しや人物のおおよその配置などを描いたネーム(設計図)は一切無し。顔から描き始めて、すべてがコマにバランスよくおさまっている!(絵を描かない方、漫画の描き方をまったくご存知ない方にはイメージしにくくてすみません。)
安彦さんの漫画は(清書は)すべて筆からうまれています。知らなかった…。筆だからか!あの生きた線は!しかも「~THE ORIGIN」では、モビルスーツやコロニーなどメカ的なものも筆で描いていらっしゃるとは!
清書が始まると、ベタもススっと塗ってしまって、あっという間にメリハリのあるページになりました。ご自身に合った道具でご自身が楽な描き方をしておられるのでしょうけれど、漫画というより漫画の体裁を得た水墨画のよう!
今年6月に安彦良和監督の映画「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」が公開予定です。それにからめてこの「漫勉neo~安彦良和~」の再放送予定があれば、お知らせします。常識を軽々と超えるわざをぜひ見ていただきたいです。
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安彦さんの全仕事についてのロングインタビューをまとめた「安彦良和 マイ・バック・ページズ」(太田出版)が、とても面白かったです。正直で謙虚な方だと思いました。
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3月28日からNetflixで「テルマエ・ロマエ ノヴァエ」が始まりましたね!映画は何度見ても面白いし、今回はアニメオリジナルエピソードもあるので、楽しみですね!
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つまみ
SHOJIさん、こんにちは。
その番組、知りませんでしたが、SHOJIさんの的確な描写で、まるで見てるような気分に。
筆で描いていることとあわせて、水墨画に譬える感じも、非常に説得力があります。
再放送があったら見たいです。
それで思い出したのですが、同じEテレで「オトナの一休さん」の絵を描いていた(書籍化された『となりの一休さん』も面白いです)伊野孝行さんと一度だけお会いしたことがあるのですが、そのとき、一緒に関わった雑誌のPOPを伊野さんが描くのを間近で見ました。
急な依頼を快く引き受けた伊野さんは、POPの紙をじいっと見たかと思うと、おもむろに胸の前でペンを持ったままの手をひらひらさせ、そのあと一気に、雑誌のその回の特集テーマである「土俵際」にまつわるイラストを、イメージとしては一瞬で描きました。
それまでも、なにかにつけ、うまい=早い ってよくあることだなと思っていましたが、味わいのある伊野ワールドが瞬時(あくまでもイメージ)に完成するのを目の前で見て、とても驚き、ちょっと感動しました。
あ、まさに瞠目。
子どもの頃は漫画家にあこがれたものです。なりたいというよりあこがれ。
でも槇村さとるやくらもちふさこを知って、完全に別世界に住む人なのだと思った記憶があります。
こないだ録画したアメトーークの絵心ない芸人を見たら、違う意味で別世界の住人もいるのだと。
要するに、自分は凡人界?
SHOJI Post author
つまみさん コメントありがとうございます!
うまい=早い は、ありますねー。
もう白紙に絵が見えてるんでしょうね。
で、それを描き出す腕がある!
私の手元の「となりの一休さん」によれば(持ってますよん♪)、伊野さんは、一休ゆかりの大徳寺真珠庵(京都市)で、一休さんを題材にした襖絵を実質1日半で描き上げたとか?
プロのイラストレーターさんがお描きになるのを目撃したつまみさんなら同意してくださると思うのですが、絵が出来上がるプロセスは、まさにエンタテインメントですよね。
漫画文化で育った人間なら一度は憧れるだろう漫画家。
安彦さんも子供の頃から漫画家になりたかったとおっしゃっています。
「大人の一休さん」はまさにOIRAKUのアニメだと思いますが、禅宗だとか歴史だとか一休禅師ご本人だとかについて私の咀嚼力が足りないので、紹介記事を書けないでいます。スマン。
いまねえ
SHOJIさん、こんにちは。
浦沢直樹さんのこの漫勉シリーズ、大好きで録画しています。
漫画にすっかり疎くなっている私ですが作画の進捗が楽しめて
浦沢さんと漫画家さんとが映像見ながら解説するのを見るのも聞くのも面白い。
アナログでペンで製作する人、デジタルでPCやタブレットで製作する人、
ツールは違えどもその手先から緻密な線が形になっていくのを間近に見られるのは
とってもわくわくします。
安彦さんの回も録画してあるので見直してみます。
SHOJI Post author
いまねえさん コメントありがとうございます!
いまねえさんもこの番組お好きですか!
安彦さん回、ぜひぜひ見直してください!
神回と言われているらしいです。
安彦良和が神業を見せてくれた回という意味だと思います(笑)
漫画周りのお宝エピソードがきけるのもうれしいですよね。
蛇足ですが、イタリアで、娘が漫画をよむのを快く思っていなかったお父さんが「チェーザレ」は認めた!という惣領冬美さんの回も好きです。
ちまたま
SHOJIさん
この番組私もかなり好きで録画で見ています。
脚本も演出できて絵がうまいなんて
漫画家ってすごい才能ですよね。
この番組の困ったところは
いつの間にかシリーズが始まって
いつの間にか終わっているので
きづかずにシリーズを完全に見れないところ。
オンデマンドでも全部は配信していないんですよね。
ちまたま。
SHOJI Post author
ちまたまさん コメントありがとうございます!
ちまたまさんもこの番組のファンなのですね!
百人百様の描き方があって、興味は尽きないです。(百人も出演されてないけど)
おっしゃるとおり、漫画家は才能のかたまりですね。
キャラクターとストーリーが練られていて、人気漫画がどんどんアニメ化されるのも納得です。
(絵柄については好みがあるので…)
そうそう、漫勉は不定期で、ふと気づいたら再放送も終わってた、なんてことも。
黒田あゆみさんMCのプレミアムカフェ(BSプレミアム)で、一挙振り返り放送をやってくれないものでしょうか。
なんといっても貴重な記録=お宝映像ですから、見たい人はたくさんおられるはず。
爽子
SHOJIさん、漫勉neoになってから、ほとんど見てると思います。
「神回」はまさに固唾をのんだ回でした。
4回くらい録画を見てしまいました。
気に入りの道具、わたしもあるにはあるのですが、絵はうまくなりません。
SHOJI Post author
爽子さん コメントありがとうございます!
この番組、人気有りますねえ。
「神回」は本当に神回でした。
お習字の筆ほどの筆先で、爪より小さな顔を描けるなんて!
今カラーインクの筆ペンでイラストを描くのが流行ってます?そんな番組をみたことがあります。
私は道具ばかり集めて棚に飾ったままです。積読ならぬ積どうぐ(笑)