第82回 THE FIRST SLAM DUNK
新作が次々公開される中「THE FIRST SLAM DUNK」を見ました。山王戦と知っただけで泣けてくる原作ファンもいるようですが、運動部でもなくスラダン世代でもない私には特に思い入れはありません。ひねくれものなので人気作だからこそスルーしていた節も…。
でも思い切って映画館に行って良かった。物語を考えて考えて考えぬき、画を描いて描いて描きぬいてきた作家と、次々と新しい技術を取り入れ使いこなし技とセンスを磨いてきたアニメの職人たちの最高のコラボレーションでした。おおげさでなく私は、この名作に日本の漫画とアニメーションの真骨頂を見ました。
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主に映画をまだご覧になっていない方に向けて…。
湘北バスケ部員である宮城リョータの生い立ちと、山王工業高校対湘北高校の試合とが交互に出てきます。ナレーションや説明的セリフは一切なし。
リョータパートは寡黙な登場人物の少ないセリフで進んでいきます。子どもから大人まで出てくる静かでエモーショナルな話なので、見る年齢層を選びません。
試合パートは原作の名シーンや名台詞が出てきますが、私の様によく知らない者が置いてきぼりになることはなく、ドラマティックな激しい試合を美しいアニメーションで魅せてくれます。
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原作・脚本・監督を務める井上雄彦の画力にはすさまじいものがあります。達人です。紙面から一歩踏みだしてこちらに出てきそうな絵。ご存知ない方は「バガボンド」の画像検索してみてください。表紙イラストだけで殺気や荒漠感に気圧されるでしょう。
本作は原作漫画が連載された頃の絵ではなく、彼の今の絵でキャラクターが描きなおされたものです。高校生なので殺気は無いけれど気迫があります。リアルな頭身のしなやかな肉体は重量のある存在感を持ち、熱気と威圧感を放ちます。
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詳しい技術については、公式サイトの座談会やインタビューを是非読んでいただきたいのですが、プレイヤーのモーションキャプチャを撮り、たくさんのカメラで40分のゲームまるごと撮影し、膨大な量のデータから使う部分を取り出しているそうです。
3DCGを2Dに近づけるセルルックという処理で、井上氏の肉感のあるハイクオリティーな漫画が動いている様に見えます。10年ほど前に2Dに見える3DCG映画「APPLE SEED」が発表されました。SFという題材の違いを考慮に入れても、比べて見ると質感の違いがわかります。
ユニフォームを着たガタイの良い高校生がスクリーンに現れ、右に左に前に後ろに素早く動き、緩急の切り替えは激しくも滑らかです。ちょっと偉そうな言い方になりますが、彼らが自然にコートを駆け跳躍する姿は、長年にわたるアニメーション技術・研究が成熟した証です。
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見る者の心拍数をコントロールするかのような音・音楽の演出が、本作の特徴のひとつです。ボールがバウンドする映像とシンクロする音。試合の流れが変わるときのボリューム。それらでバスケの楽しさ、試合の面白さを生理的に感得するようになっています。全編を通してドリブルの音が聞こえ、登場人物の記憶が自分の記憶のように思えてくるから不思議です。そしてラスト。圧巻の音使い!これをぜひ映画館で体験してほしいです。
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「語りかける絵」・「絵が動く」・「絵に音がつく」これらがピタリと合った快感は、リピートしたくなる気持ちも分かります。
井上監督、スタッフの皆さん、木暮君のSLAM DUNKも見たいです!
「THE FIRST SLAM DUNK」公式サイトURLはこちら↓
https://slamdunk-movie.jp
スタッフ・キャストのインタビューが掲載されているページ、COURT SIDEは必読!
ゆみる
SHOJIさん
いま映画館に観に行きたい映画とアニメが3つあって、
そのうちの1つが「THE FIRST SLAM DUNK」なのです。
このTHE FIRST SLAM DUNK、
周りのあちこちから観に行ってと言われていて、
でも「金の。水の」を優先してしまい
その上今ちょっと強烈に時間がなく、なのに今回SHOJIさんも推してるし。
どうぞこの山を越すまで上映していてと願うばかりです。
ちなみに私も原作は読んでいません^^
SHOJI Post author
ゆみるさん
ゆみるさんが見たいのはたぶん「BLUE GIANT」となんでしょう?ニノか竹之内さん?
「金・水」は優先して正解!新作に押し出され上映回数激減してますから。
スラムダンクは24日から新しい入場者特典出しますよ~ってニュースを見たので、少なくとも来週は大丈夫です。
「THE FIRST SLAM DUNK」はシンプルでナチュラル。そのナチュラルなところが凄い。
絵が動いて音がつくアニメーション映画そもそもの映像体験を最高に磨き上げた感じです。
井上監督の絵とセンスに拠るところが大きいのでしょうけれど、こういう情感豊かなセルルックの作品は日本にしか作れないと思います。
めっちゃ煽りましたが(笑)語りポイントが多いので、ネタバレにならないようこの辺で止めときますね。
お時間ができることを願ってます!