第104回 ルックバック
藤本タツキ原作、押山清高監督(スタジオドリアン)の劇場アニメ「ルックバック」が6月28日に公開されました。うまい具合に小雨になったので初日に見に行きました。
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藤野は学年新聞(!)に四コマ漫画を連載している小学生。ある時、連載二本のうち一本を、会ったことのない不登校の児童、京本にゆずることになります。京本が描いたのはセリフのない風景ですが、その絵は一目で自分より上手いと認めざるを得ない完成度。その後あることがきっかけで、ふたりはコンビで漫画を描くことになるのですが…。
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前半、初めて藤野と京本が顔を合わせた雨のシーンでぐっとこみ上げ、二人がスキルアップに励み、漫画をひたすら描いている間ずっと堪えていた涙が、後半の衝撃で一瞬引き、その後いっきにあふれます。そして最後には、前向きな諦念のような、覚悟のような気持ちが湧いてくるのです。
生きていく中で挫折したり理不尽な出来事があったりするのは、私のような一般人でも同じこと。原作者の自伝的要素の入ったエンタテインメントの創作者のお話で、いっけん自分とは関係ないように見えますが、胸にせまるものがあります。通路を挟んで隣の席のガタイの良いお兄さんも鼻をすすっていましたから、ずっと涙目だったのは私の感情の抑制機能が低下したからではないはず(漫画関係者かもですが)。
劇場アニメ「ルックバック」 (lookback-anime.com)
涙腺が大いに刺激されたのは、ひとつには、色が付き動いている劇場アニメを先に見たからだと思います。映像は叙情性があり、より入り込みやすいです。セリフは少な目ですが、主演の河合優実(藤野役)・吉田美月喜(京本役)が初めての声優の仕事とは思えないハマり方。ぜひ上記リンクから二人の子ども声を聴いてみてほしい。haruka nakamuraによる静かなテーマ曲は、ずばり好みでした。
「チェンソーマン」に入り込めなくて敬遠していた藤本タツキ作品でしたが、本作を通じて原作にも触れることができて良かったと思いました。ストーリーボード(入場者特典)の時点で出来上がっている素晴らしいストーリー! その後読んだ漫画では、クールに構えた藤野ちゃんの表情がいい!
パンフレットを見ると製作スタッフのリストが1ページにおさまっていて、その少なさに驚きます。
アニメになって良かった、良いものを見たと思える今年前半のマイ ベスト アニメーション映画です。
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先日武田綾乃原作、京都アニメーション制作の「響け!ユーフォニアム」シリーズが最終回を迎えました。この作品は本当におすすめです。Netflix他で配信されていますので、シーズン1から見るのが良いと思います。
kokomo
SHOJIさん、「ルックバック」を初日に見に行かれたのですね。さすがです。
評判が良くて見に行きたい気持ちでウズウズしているのですが、同時に、ウェブで漫画を読んだ時のあの間合いやひそめた息遣いみたいなものがアニメでどのくらい表現されているのか、を考えると見に行くのがなんだか怖いような。
しかし、SHOJIさんが今年前半ベストと言われているくらいだし、なんといっても私は「チェンソーマン」もわくわくしながら見たのできっと楽しめるに違いないと思っています。息子が友達と一足先に見に行く予定なので、その感想を聞いてから見に行くことになりそうです。
「忘却バッテリー」もついに最終回です。SHOJIさんの指摘があってから、千早君がすち子にしか見えなくて、シリアスな場面でも乳首ドリルが頭をよぎるようになってしまったー!!
SHOJI Post author
kokomoさん
その心配分かります。
漫画と映像の「間」問題は、あるあるですよね。
私は劇場アニメが先だったので、原作は確認のように読みましたが。
藤本タツキは虚ろな表情が上手い!(チェンソーマンはそれが怖くて、続かなかったです)
でもとにかく、見てください。
58分、割引なし1700円は惜しくないと思います。