「最高の離婚」ファントーク
<対談「最高の離婚」2回>人間関係の「時差」が繊細に描かれていて好き。
★「最高の離婚」の登場人物や、この対談の経緯は、対談第1回をご覧ください。
「受け入れがたい他人」を受け入れる話だから、グッとくる。
小関: 結婚すると、家庭に光生がふたりになっちゃうからダメなんですかね 。
カリーナ: です。私の伴侶は結夏さんでないとダメなのかも。私は、あんなに生活面には細かくないけど、でも、根っこが光生なのかも・・・。
小関: こだわりがなくて、おおらかで、自意識が過剰でない人のほうが一緒にいて楽ですもんね…。
カリーナ:そうですよね。この話は、「受け入れがたい他人」を受け入れる話だから、すごくグッとくるのかもしれません。
小関: ああ、そうですね!<受け入れがたい他人を受け入れる話。そもそも、※光生と結夏のなれそめが、東日本大震災の時の帰宅難民体験だったっていうあたり、うまいなあって思います。なんであなたたちつきあってるの? 結婚したの?っていう組み合わせの話を聞くのは、実生活でも面白いですし。
※東日本大震災の日、帰宅困難となって徒歩で家路についた光生は、取引会社の受付であいさつ程度しか言葉を交わしたことがなかった結夏と出会い、声をかける。「歩くしかなくて、ひたすら。あ、甲州街道だったんですけど、そしたら前に何か見覚えある顔が見えて。誰だっけ。あ、得意先の受付の子だって。ま、いっても顔を知っているだけだから名前知らなかったし、ふだんなら声かけないんだけど、そのときは、なんか、あれして・・・」。二人は鳥のことや富士山のことや、馬のことなどを話し、どちらからともなく結夏の部屋にあがって古い湿気たお菓子を食べながら、手をつないだりして・・・「そんな感じで朝になって、一緒に住むことになって結婚したんです」)
カリーナ: ああ、あの話、いいですよね~。震災がからんでいるから、すごく繊細に扱わなくてはいけなかったと思うんですが、出発点にリアリティがありました。あの二人は、ああいう瞬間、お互いの心がある意味で解放されているときには、すごくうまくいくんですよねえ。日常のストレスやスケジュールがないときには。
小関: ああいう時じゃないと、コミュニケーションをとることもなかったふたりですもんね。
カリーナ: そうですよね。非常時のカップルとして生まれているから、常時には衝突するんですよね、きっと。
人と関わりを築くのに時差があるのかな。
小関: でも、ポイントポイントでは「この人じゃないとダメだ」ってなる。3話で、結夏が合コンで知り合ったサラリーマンと映画デートにいく話があって、遅刻するんですよね。で、サラリーマン氏は怒って帰っちゃう。※光生も、結夏と映画にいったときに遅刻されたって愚痴ってましたけど、ちゃんと一緒に見ているんですよ。
(※第1回の冒頭で光生は歯科衛生士に 「待ち合わせして映画行くじゃないですか。たいがい、遅刻してきます。当然、映画はじまってますよね。見る、って言うんです。10分しか経ってないでしょ。何か、ちょっと起こっただけでしょうって。あの人にとって10分って時間はあってもなくても同じなんです。主人公の生い立ちが語られていようが、作者のテーマが込められていようが、何かちょっと起こっただけなんです。そんな人と映画見れますか?」とグチる。)
カリーナ: ああ、細かいなあ。光生という存在が魅力的なのは、根っこが「包容力」の人だからですよね。諒も受け入れるし、みんなのお世話をするし。しかし、※結夏と待ち合わせしていたあのサラリーマン、EXILEの人なんですね!こんなところにも出ていたのか、EXILE(笑)。話は戻りますけど、あの金魚カフェで餃子を作りながら、諒と話すじゃないですか。いろいろ※光生が不遇をかこったうえで「なんでそんなにモテるんですか」って聞くんですけど、あの素直さというか、無防備さというか。一度も人の上に立たないから、すごく見ていて幸せです。マッチョの対極で。
※EXILEのKEIJIさんでした。
※光生「たぶん、あなたが飲み会であんまりしゃべんないのねって言われるのと僕が飲み会で無言なのとは種類が違います」諒「うん?」光生「どうしたらそんなにモテるんですか」
小関: 光生は優しいんですよね。たしかに、一度も「男なら」とか「女のくせに」みたいなことは言わないですね。女性性がつよい男性なんだなあ。
カリーナ: そうなんです。いっぱい、いっぱいこだわりを口にするんだけど、それは、頑なさとは違うんですよね。なんだろう。相手を受け入れるまでの葛藤を実況中継するみたいな。その実況中継が詳細だから、すったもんだの後に本質的なことを話すとき、すごい胸に迫る。今回、灯里さんにジュディマリの一件で「死ねばいいと思った」と言われて、※ひとり傷ついて「僕、死んだらいいですかね」「僕、みんなに大縄に入れって言われて入ったら、自分で縄がひっかかるんです」というのも、しめっぽくなくて悲しい。相手に「いいのよ、それでいいのよ」と言ってもらおうと思っていない。承認欲求を満たそうとするときにベタっとはりついてくる厚かましさがないんです。
※実際のせりふは、「大縄跳びみたいな…。ぐるぐる回ってる。みんなはその中で跳んでて、入れっていう。入ってみると、縄が僕の脚に引っかかって、止まってしまうんです。何をどうしたらいいのかは分からない。何をどう言えばいいのかは分からない。ちゃんとできないんです。いろんな事が。ちゃんとできないんです。」
小関: 人と関わりを築くのに時差があるのかな。そういうタイプの主人公って、これまでのドラマにはあまりいなかったように思います。男らしさみたいなものに縛られていない。そこも、「最高の離婚」を面白いと思う人がいっぱいいた理由なんじゃないかと思います。
カリーナ: 時差、そう、時差です!そして、見ているこちらが光生にも結夏にもなれる。「ああ、こんなイケメンと恋愛したい」と自分を女性の場所においたまま恋愛や人間関係を見るんじゃなくて、両方を行き来して見られた。だから、心が解放されるんですよね。
小関: そうか…! 女性の側の視点だけじゃなく、男性の側の視点、もっといえば、性別問わずいろんな人たちのいろんな視点に身を置けるから、豊かな感じがしたのか。なるほど!
「怒りの瞬発力がない!」と嘆く友人を思い出したり。
カリーナ: そうなんです。だから見ている時間が幸せでした。嫁のままじゃなかった、妻のままじゃなかった。解放されました。すごく、自分が。さっきの時差の話ですけど、私の友人に「私は怒りの瞬発力がない」と嘆く人がいるんです。相手に何か言われたとき、その場ですぐに怒れなくて、後になって怒りがわくんだけど、そのときにはもう相手はいないって。怒りの理由を言葉にできるときは、いつも手遅れなんだと。それってつまり、感情とその表出の時差ですよね。いま、小関さんがおっしゃったように人間関係には時差がつきもので、それを、光生が正直に実況中継してくれる。そして、いつも光生の理解は遅れる。そこに、すごく共感するんです。
小関: その場その場で、すぐに正しくわかるものじゃないですもんね、感情って。ドラマでそういうのをやるって、難しいでしょうに…。
カリーナ: そうですよね。なんか、その「遅れ」や「時差」が大事なものに触れさせてくれた気がしました。
小関: 人間関係の機微というか、繊細さというか。そういうものを、キャッチーに、楽しく、でも乱暴でなく見せていましたよね。登場人物たちに深みがあったのも、そういう作りだったからでしょうねえ。
カリーナ: みんなにリアリティがありましたよね。あとね、今回見て思ったんですけど、灯里の夢の話とか、歌手になりたいという。あれも、昔と今を上手に行き来させてくれました。
小関: 真木よう子さんの見た目でYUKIちゃんになりたかったって言われるの、すごく違和感があったんですけど、その違和感がかえって「叶わなかった夢」の切なさを強く伝えてるなあと思いました。
カリーナ: 真木よう子さんって、見ているだけで違和感ありますよね(笑)。違和感の力っていうか。だから、こう、「死ねばいいのに」なんかの破壊力がバツグンなんですけど。違和感力がすごい。
小関: お人形さんみたいな見た目だからかなあ。欧米の映画に出たら中和されてちょうどよくなるかもしれませんよ(笑) エンディングで四人がダンスするけど、尾野さんと真木さんが並ぶとスタイルの異常な良さが際立って怖いくらいです。
カリーナ: うんうん、ほんとほんと(笑)
小関: 灯里と諒の夫婦は、ちょっと浮世離れしてるように見えます。灯里は思うことがあってもそれを出さずにその場をやりすごそうとする。真木さんの、あの整い過ぎている見た目がさらに「外見だけ取り繕う感じ」を強めてました。
カリーナ: そうですね。※でも、お風呂(?)では、もんのすごい達観したババアみたいなことを言うじゃないですか。一筋縄でいかない感じがよく出ていましたねえ。
※灯里「夫婦って、だって今だけじゃないでしょ。将来の約束?してなるもんだし。極端な話だけど、最終的には旦那の葬式の喪主になれればいいんじゃないかな、妻って…」とちょっとやさぐれた感じで言いながら、サウナみたいなところに入っている。
小関: 灯里さんがダラダラもらす本音っぽいことも面白いですよね。意外と俗っぽい。
次回は、第4回~6回までを語ります!
小関祥子さんのプロフィール
福島県いわき市出身。女性向け、児童向けの実用ジャンルで主に仕事をしているイラストレーター。映画好き、料理好き。
小関さんの詳細なプロフィールやお仕事はこちら→kittari-hattari
じじょうくみこ
いやね、最高の離婚のタイトルってね、
これから結婚を目指そうとする身にとっては
嫌悪感ばかりがつのってしまうんですよ、
離婚なんて口にもしたくない乙女心なわけですよ!
だからリアルタイムではどんなにキャストが気になっても
たとえ綾野剛が出ていても!
完全無視を決め込んでいたのですが…
ああ…ダメだ、もうダメだ
お2人の会話に完全にやられちまってます。
今夜から見るっ!!!
中島
お二人の考察の深い事!!
そうそう!とうなずくばかりです。
私は、ラストソングのダンスが大好きでした。
毎回ちょっとづづ違うんですよね。
特に瑛太の表現力がピカ1で目が離せなくなってましたし
桑田さんのちょっとエッチな歌詞も最高だったなー