シルバー世代にきいた、山の不思議
以前、お年寄りに生番組の中で電話をつなぎ、お話を伺うコーナーを担当していた。お若いころの思い出や体験を語って頂き、今とは違う時代の物語に耳を傾けよう、という企画だった。
その中でとても印象に残っているお話がある。昭和のはじめ、今から約80年前のことだ。
その女性は子どもの頃、親や兄弟と一緒に、山の9合目に住んでいた。山城があったと伝えられる山で、8合目には神護石という石垣が山頂を取り囲むように築かれている。そして神護石から上は聖域とされ、普通の人が入ることを禁じられていたという。女性の家は昔から9合目に位置していたそうで、つまり“神様に近い家系”ということになるようだ。
女性は毎日、山から学校に通った。通学路には神社や奇岩、遺跡や小川があった。春には花が咲き乱れ、秋には山全体が紅葉する。山菜や木の実採りにも夢中になった。とても幸せな子供時代を過ごしたとおっしゃる。
・・・ある時、友達と2人で帰りよったんよ。山じゃから風がそよそよする音がするじゃろ?でもね、その日は何の音も聞こえん。すごい静かじゃったんよ・・・
・・・途中まで帰って、いつも腰かけて休むところがあるからそこに座って、友達と
「今日は、なんでこんなに静かなんかね」
って言いよったら、お宮の方で、人が、大勢の人が、下駄で歩く音が聞こえてきてね。下駄の足音が、ガタガタッ、ガタっ、ていうんよ。
「あれ?今日は何があるんじゃろうか、人がいっぱい集まっとるね」
いうて、足音がする方に行ってみた。そしたら誰もおらんの・・・
・・・で、しばらくしたら、今度は仁王門の方で足音がするわけ。子供じゃけえね、山にいっぱい人がおるのが珍しいじゃあ!門の方に走って行ったら、また誰もおらんの・・・
・・・ほいで最後は神社の方で、音がしてね。それがもう、一人とか二人とかじゃないんよ!百人くらいおるような足音なんよ!
「こりゃあ~、もしかしてキツネに騙されとるんかもしれん」
いうて、帰ろういうことになって・・・
・・・ほいでね、夜、家で父親に話したら、
「そうかあ、今日は山の神様が大勢来られたんじゃのう。ええ日に巡り合ったのう」
いうたね・・・
県内の70歳以上の方に電話インタビューするこのラジオ企画は、2002年の4月から2011年の3月まで、9年間続けた。狙いは「ラジオで時代をつなぐ」こと。昔の祭りや風習、暮らしの知恵、郷土料理、恋の話、そして戦争体験。人生の先輩方の言葉、少しずつご紹介したいと思う。
はらぷ
がっちゃんさん、こんにちは。
ものすごく遅いコメントですが、このお話、大好きですーーーー。。。
言葉も、音になって聞こえてくるようです。
9合目の家、神様に近い家。
そのおうちには、どんな歴史や記憶があるのでしょう。
ところで、神様は下駄はいてるのかあ(笑)
お宮でなんの話をされていたのでしょうか。
山は、神様が一ヶ所に集まっていたから静かだったのか、山のみんなが神様のじじゃまをしないようにひっそりと息をひそめていたのか、どちらでしょうね。
これからも、楽しみにしています!
がっちゃん Post author
はらぶさん、こんにちは。
お話、気にいって下さって、ありがとうございます。
山の神々の会合、祝祭、どんな感じなんでしょうね。
お酒やご馳走もあるのかな?
こちらの女性は、山で入道や火の玉にも遭遇したことがあるそうですよ。
神様ならいいですけど、火の玉は遠慮したいですね。ぶるっ。