青蓮の「マサラをちょいと~人生にもスパイスを効かせて~ VOL.4」
公式なんてない、そこにはただ愛がある
インドに住んでるって言うと、昔は「ねぇ、土壁の家に住んでるの?」とか「食事作るのに牛糞燃料使ってるの?」とか「毎日カレーなの?」って聞かれたもんです。
それというのも、日本のメディアが紹介するのがヴァラナシ(ベナレス)の牛と人とがようやっと行き交う狭い路地の風景とか、ガンジス河で沐浴する人とか、路上生活する人々のポートレイトとかに偏っていたせい。それに風穴を開けてくれたのが「インドの衝撃」というテレビ番組だったんじゃないかなぁと思います。そして、なんと今期は一気にボリウッド映画(ムンバイで制作される映画)が日本で4本まとめて封切りとなりましたね。ようやくインドに正しい注目が集まって来たか~!待ってたぜぇ~!と、ちょっと嬉しい今日この頃。
前述の質問にお答えしておくと、都会では土壁の家には住んでません!食事は都市ガスで作ってます!ま、でも多種多様なことがらが共存共栄しているのがインドですから、土壁の家に住んでる人もいれば牛糞燃料でご飯作ってる人もいます。「インドはこうだ!」って断言できないのもインド。
で、三つ目の質問「毎日カレーなの?」についてですが、そもそも日本のようなカレールーを使った画一的カレーはありません。ただ、季節の野菜をふんだんに取り入れたサブズィー(おかず=カレーの一種)の組み合わせは無限にあるのです。それもドライ系だったり、スープ系だったり。食事のたびに2~3種類のサブズィーを出しますから、まぁ「カレー三昧」だと言えないこともありませんね。
(手前から時計回りにカボチャカレー、フェヌグリークの葉っぱとジャガイモのカレー、
トマトと胡瓜のサラダ、チキンカレー)↓↓
インドに住んでいると、野菜の旬が本当によくわかります。
あぁ、人参って冬の野菜だったんだなぁ(夏になるとぱったり姿を消します)とか、ニガウリが
出てきたから、瓜系の野菜が美味しい季節になったなぁ とか。そして、それぞれの野菜が
相性のよい香辛料とともに、美味しいおかずカレーになるのです。そのおかずにも土地柄が
あり、小麦で作るチャパーティー (インドの薄焼きパン) が主食の北インドでは、パンに
乗せやすいこってり系のものが多く、米が主食の南インドでは米と混ぜやすい汁物系が多く、魚が捕れる地方では魚料理が多い・・・といった具合。
今、市場に行くと夏野菜や葉物がいっぱい。それらの旬の野菜には夏バテを防止する効き目のあるものや、血流を促すものなどが多いのです。たとえばカレーラー(にがうり)の
ドライカレーは、薄切りにして塩をふったものをしっかり絞って、素揚げして、マサーラ(香辛料)を加え、最後に山ほどのみじん切り玉ねぎを投入。
苦味のあるおかずですが、チャパーティーとの相性ばっちり。しかも血流が良くなるとあっては、夏場に汗をかいて血液ドロドロなときには積極的にとりたいメニューですよね。下ごしらえに手間はかかるけど、美味しさにはかえられない。
(手前からニガウリカレー、チャパーティー、瓜のスープカレー、自家製タンドゥリチキン)
↓↓
野菜にばっちり合う香辛料がある、ってことはつまり、その昔からの組み合わせが消化にも
良いってことなんです。ガスを発生させる野菜(芋類など)には、駆風作用のある香辛料の
アジュワイン(セロリ科の野菜の種)を使うとか、消化の遅い野菜には消化剤作用のある
コリアンダーの種(ダニア)を使うとか。(下の写真はお腹にガスを発生させないように、
アジュワインを使ったサトイモカレーです。)
そうなんです、インド料理ってまさに「薬膳」なんですね。しかも料理本とかウェブでレシピが
出てくるとかがない時代から、母から娘へと伝えられていった秘伝の組み合わせ、みたいな
部分も多々あり。
毎朝のチャーイだって、基本は生姜とカルダモンなんだけど、香り付けにシナモンをプラスしたり、喉の調子が悪いときにはムラッティ(リコリス)を入れたり、痰を切りたいときには胡椒を足したり、風邪気味の人がいるときには生姜の量を増やしたり・・・・と家族の体調にあわせて変幻自在。
だから、インドの家庭料理には公式なんてないんです。おいしく食べて、身体にもよい。
そこには作り手の「愛」が不可欠。
・・・・あれ、なんだか猛烈にカレーが食べたくなりましたか?
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
「インドの衝撃」が描いたインド、青蓮さんの教えてくれるインド。その奥深さは、すごいなあ。
次週は、インド伝承医学のアーユルヴェーダについて。楽しみ。(カリーナ)
★デリーは、これから酷暑期に入るそうです。
私たちも夏バテ防止の秘策、を学んでおきませんか。
★「土曜日に物乞いが多い理由」や青蓮さんの暮らしがわかりますよー♪
⇒青蓮さんのブログ「Blue Lotus」
★青蓮さんへのコメントも、どうぞ。この機会に興味のあることを聞いてみてくださいね♪
★3月まで連載されていた「YUKKEの今日のラテンステップで」を読む方は、こちらをどうぞ。メキシコの女性たちが生き生きと描かれていますよー。
★前回の青蓮さんの記事は、こちらから。
サヴァラン
青蓮さん こんばんは。
「インド料理はまさに薬膳」、すご~くすご~く納得しました。
わたしは「駆風作用」という言葉を知らなかったんですが、
日本ではウイキョウ(あ、セロリに似てる!)なんかが
その薬効を持っているみたいですね。
インド料理の香辛料は
いたずらに刺激や複雑さを求めているわけじゃないんですね♪
家庭料理に算数のような「公式」はなくていい。
不可欠なのは…
これまたと~っても納得です~。
青蓮 Post author
サヴァランさ~~ん、コメントありがとうございます。
インド料理に使う香辛料、他にも「駆風作用」あり・・・
ってのが結構あって、なんでそんなにお腹にガスが
たまるかな~?って思ってたんですが、豆類の
摂取量が多いからっていうのもあるのかも知れません。
菜食主義者の貴重なたんぱく源が豆類ですもんね~
家庭料理、おふくろの味 って世界各国「目分量」
でやってるのが多いですよね。ガチガチにこうでなきゃ!って
分量を決めてないからこそ、気候とか食べる人の
体調とかも相まって美味しいのかもなぁと、最近
悟りを開きました。笑